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姉が過去からやってきた。  作者: ゴリヴォーグ
南雲学級あれこれ
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みつどもえ~Times square~

 さて、南雲家の食卓には三人の美少女と一人の教師がいる。ハーレム展開じゃねえかリア充爆ぜろ! と思った方、ハーレム展開に沈黙は付き物ですか?

「……」

「……?」

「……」

 約一名違う気がするが、楽しいはずの団欒は亭主がリストラされた後の最後の晩餐のように静まり返っている。実に気まずい。しかしその原因が八割ぐらい僕にあるだろうから余計に始末が悪い。黙り込んだ三人を見回してみる。


 僕から見て正面に座ってるの白衣とエプロンが良く似合う少女は南雲美桜。とあるしょうもない理由でわざわざ過去からやって来たトンデモ科学っ娘。料理の腕は店に出しても恥ずかしくないレベルであり、家事全般もそつなくこなすが、残念ながらブラコンだ。時と場所を選ばず抱き着いて来るわ、朝起きると隣で寝ているわ……。羨ましいと思うなかれ、彼女は姉だ。本日のホストなんだろうが、何故皆ダンマリを決め込んだのか理解できていないようだ。


 右手にいるのが、世界にその名を轟かせる日本経済のドン麻生伝助の孫娘、麻生伊織。天文部部長にして現時点では唯一の部員。普段は自らを『私』と称する深窓の令嬢だが、僕と姉さんの前では『僕』と自称する僕っ娘だ。どちらが本当の彼女なのか分からないが、その両方を知っている僕は自慢していいと思う。お嬢様の中のお嬢様だが、気さくで親しみやすい性格で家事も万能と意外と庶民的でもある。


 左に座ってるのが、嵐を起こす転校生、香取理名だ。「カトリーナ」と呼ばれるように、周りを巻き込んでいく様はまさに台風と呼ぶに相応しい。今では御崎原最強最悪の問題児と呼ばれているが、実は昔はこんな活発な性格ではなく、むしろオドオドして自分に自信を持てずにいた。逆上がりを教えていた時の彼女がこうなるとは予想もしなかったが、いきなりキスをしてきたあたり、昔から台風少女の素質はあったのかもしれない。


「……」

「……」

「……?」

 うう……、沈黙が辛いです……、僕を見ないで下さい……。

「あ、あのさっ、ご飯食おうぜ! 冷めたらせっかくの味が半減しちゃうよ」


「「「……いただきます(!)」」」

 姉さんだけは気まずい空気なんて何のそのっていった感じだ。というより、

「何故理名ちゃんがいるわけ?」

 理名ちゃんが来るなんて聞いて無かったぞ

「あら、こう先生、いちゃ悪かったかしら?」

「いやそういうつもりじゃないんだけど……」

「なら良いじゃない! 可愛い教え子が遊びに来るのに理由なんかいらないわよ!」

「いや絶対理由あるだろ!?」

 でもなきゃわざわざ来ないだろうに。

「南雲美桜に偶然会ったのよ。しかもこっちに来るやいなや、いきなり決闘を取りやめにしたいだなんてぬかすのよ」

 決闘ねえ……。昨日姉さんから申し込まれた決闘を思い出す。

「それでどういうことか聞こうとしたら、ここに拉致られたワケ。こう先生は聞いてはいたけど麻生伊織まで来るとはねぇ……。しかしホントにこう先生の姪っ子なのね。姉って人にクリソツだわ」

 は? どういうこと?

「あ~、南雲美桜が料理作っている間暇だったから、色々物色……、じゃなくて探索してたら写真とかが出て来たわけ」

 今物色って言ったよね!!

「写真に写ってるこの人姉なんでしょ? え~と名前は……」

南雲桜子(なぐもさくらこ)だよ」

 姉さんがアドリブで答える。美桜の親だから桜子か。違和感ないな。

「桜子さんね。ホントに似てるわね……。本人みたいだわ」

 だってそれは本人ですからね。って言っても信じないわな。

「美桜さん、私をここに呼んだ理由はなんでしょうか? お食事会ってだけじゃなさそうですが……」

「そうね。役者も揃ったことだし始めましょうか」

 演技がかった言い方で宣言する。いったい何が始まるというのだ?

「ねえこう君、私、香取さん、伊織ちゃんの三人の共通点は言われなくても分かるよね? 分からないなんて答えは無しだからね」

 分かっているさ。三人の気持ちなんて。

「まあ、いつも言ってるから聞き飽きたかもしれないけど、私はこう君が好き。正直な話、それが姉としてなのか、それとも一人の女として好きなのか最近分からなくなってきているけど。でも二人も同じ気持ちなはずよ?」

 自分の気持ちすら分からない自分を嘲笑うかのように言う。


「……こう先生は私の希望よ。こう先生がいたから今の私がいる。貴方に褒められたい、愛されたい、その一心でここまで来たわ。全く、10年間も一人の男性を一途に思い続けるなんて我ながら馬鹿な女ね。恋心なんて憧れが見せる幻想なのかもしれないのにね」

 自信に満ち溢れた彼女が見せるにしては弱弱しい笑顔。10年前の理名ちゃんが喚起される。


「口に出してハッキリ言うのは初めてかもしれませんね。南雲先生、僕は貴方が好きです。ずっと貴方を守ってきたわけじゃないし、10年どころか出会って一年チョイしか思い出がありませんしね。でも好きなんです。こればっかりはしょうがないんです」

 初めて口に出す本気の恋心。それは例えどんな令嬢でも価値をつける事の出来ない尊いもの。


「ほらね。こう君幸せ者だねぇ、三人の美少女に告白されるなんて。よっ! この色男!! さて、皆の気持ちも分かったことだし、今日は飲むわよー!!」

 そういうと姉さんは冷蔵庫から缶チューハイを取り出し、

「ってあんたら未成年だろうがああああああ!!!」

 今度からお酒は見つからないとこに保管しよう。うん。



――



「で、三人から好意を一気に向けられてどうしようという訳か。流石ロリコン教師は一味違うな、俺たちに出来ないことを平然とやってのける。そこに痺れる憧れる」

 淡々と言わないでください。

「もういっそのことハーレムエンドを目指したらいいじゃないか。まあ私はアンチハーレムだからあまりお勧めはしないが。恋愛というのはワンツーマンで互いに向き合うからいいのに、それを何人も囲むなんて不愉快極まりない。しかも鈍感とくる。その点君は女心の何たるかを一応理解しているから、安心して見れたが」 

 人をギャルゲーの主人公みたいに評価しないでください。

「で、返事したのか?」

「いや、その前に姉さんと香取がチューハイを飲みだしたから流れてしまったというか……」

「君の本命は麻生嬢だろ? 別にいいんじゃないのか?」

「そりゃそうなんだけどね……」


『答えはもう少し後で聞かせて下さいね? ここで抜け駆けしちゃずるい女ですから』


「まあ、もちっと保留ってことですな」

「それでいいのか優柔不断……」

 今はまだこの四つ巴の関係も悪く……ないかな?

 

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