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姉が過去からやってきた。  作者: ゴリヴォーグ
南雲学級あれこれ
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クラシック音楽同好会の誘い~KAGURA cantabile~

 一部の生徒の暴走のお陰で自己紹介が思った以上に時間を食ってしまったため、クラス委員決めはまた次のHRにすることにする。果してこのクラスをまとめあげる手腕こ持ち主はいるのだろうか。僕は非常に心配だ。

 1時間目の終了を告げるチャイムがなると同時に、我が城に来訪者が訪れる。

「失礼しま~す! 茅原和音さんいますか~? って南雲先生じゃん。どったの?」

 それは僕が聞きたい。

「このクラスの担任なんだよ。それより神楽も何の用なんだ? 茅原さんが御所望みたいだが、あ、HR終わり! クラス委員は次の時間決めるから!」

 突然のビジターのお陰で解散するタイミングを見失ってしまった。

「へ~、相変わらず担任やってんだ。それより茅原さん呼んでもらえる? 私ちょっとばかり用があんだけど」

「担任の件はどうでもいいんですね、お~い茅原さん、君に客人だよ」

 クラスメイトと談笑するでもなく、一人机に座っている彼女を呼ぶ。しかしヘッドフォンを付けているからか、こちらの声は届かない。仕方ない、呼びに行くか。

「外部の音をシャットして音楽の世界に没頭しているところ悪いが、君に客人が来ている、ヘッドフォンを外してくれないか」

 机を叩かれようやくこちらの存在に気付く。音楽の時間を邪魔されたからか明らかに不機嫌そうだ。

「邪魔して悪いわね。 私は2年6組の神楽凛子(かぐらりんこ)、去年の南雲先生のクラスの生徒よ。先輩とか余り使われるのむずかゆいから、神楽さんって呼んでちょうだい」

 自己紹介をした神楽凛子は笑いながら、

「ちょっと体育館裏まで来いや」

 後輩を恫喝しました。

「私神楽先輩に何かしましたっけ? 入学早々因縁をつけられるなんてマネをした覚え有りませんが」

 極めて冷ややかに対応する茅原嬢。冗談で言ったのに真顔で返されてしまう。

「先輩はやめてって言ったじゃない!! 神楽さん、もしくは凛子さんって呼びなさいよ!」

「分かりました。先輩」

「先生ぇー! この子私をいじめるぅ! サディストがおるぅ!」「知るか先輩」

「あんたの方がリアルに先輩だろうが!! ってこんな吉本チックなやり取りをしに来たんじゃないんだよ! あ~、時間もほとんどないじゃないの!」

 ゴメン、どの辺が吉本?

「見ないで見ないで見ないで見ないで見ないで……」

 まだ偽善者に自己啓発本を買わされる方の善本はエア視線と戦っているようだ。お前じゃねえよ、こっちを睨むな。

「で、用件はなんだよ? 来てもらったとこ悪いけど、もうすぐチャイム鳴っぞ。遅刻したら担任の先生に怒られるだろ?」

「あっ、加納先生ならまだ二日酔いでダウンしてるから大丈夫でしょ。昨日も夜遅くまで飲んでたみたいだよ」 やっぱりあの後飲んでたか。

「それに今多分うちのクラス香取さんが一方的に麻生さんに仁義なき戦いを仕掛けているから戻っても飛び火食らうだけよ。入野ちゃんが何とかしてくれるから大丈夫!」

 そのクラスワンダーランド過ぎっぞ!! 確かにこのメンツじゃ加納先生も飲まないとやっていけないみたいだ。

「先輩はそうでもこのクラスは違うわ、早く用件とやらを言ってください」

 茅原さんはなかなか本件に入らないためイライラしているようだ。

「もう先輩で我慢するわ……。コホン、今日茅原さんを呼んだのは他ではない」

 わざとらしく咳をし、秘密結社のボスみたいな口調で話す。

「勿体振らずに早く言って下さい。待たされるのは嫌いですので」

 また一刀両断されました。容赦ねえな……

「う~、可愛くないなあ……」「それは失礼しました先輩。生れつきこういう性分なもので」

「はいはい、さよですか。茅原さん、あなたクラシック同好会に入会しない?」

 クラシック同好会? んな同好会あったか?

「ふふん、今はまだないけど私が作るのよ。ちなみに桐村先生にはもう話しているわ。確か同好会って三人からできるのよね? 三人集めたら桐村先生が顧問をしてくれることになったわ。尤も、桐村先生は吹奏楽が忙しいからそっちがメインになるけど。その同好会立ち上げにあたって世界的に有名な天才ヴァイオリニストを入会させたいのよ! どう茅原さん? 今なら和菓子と抹茶がついてるけど?」

「嫌です」 見事なまでの即答だった。迷うそぶりを一切見せずにバッサリと切り捨てる。

「ま、一刀両断されることぐらい予想はしていたわ。ここまで綺麗にやられるとは思ってなかったけど」

 残念そうに溜息をつく。幸福が逃げちゃうぞ。

「でもこれぐらいで諦めると思ったら大間違いよ! あなたはクラシック同好会に入るべきなのよ、いや運命の赤い糸で繋がっているわ!」

 無機質に赤い糸が繋がるってなんかやだな……。

「気が変わったら何時でもクラスに来てちょうだい。歓迎するわ。それじゃあまた!| Arrivederciアリヴェデールチ!」

 ブチャ○ティかあんたは。

Addio(アッディーオ)」 イタリア語? で別れを告げる。どう違うんだ?

「アリヴェデールチはまた会いましょう。アッディーオはもう会うことはないでしょう。と捕らえていればいいです」

 クールに毒を吐く。しかしクラシック同好会ね。キリの専門って確かヴァイオリンだよな。それなら吹奏楽が忙しくても顧問を引き受けるか。

「先生は私に入会しろって言うんですか?」

「いやっ、誰もんな事言ってないだろ」

「それは失礼しました。尤も、先生に入会しろと言われたところで私が折れるわけがありませんが。それに私は……」

 何かを言おうとした矢先、2時間目の始まりを告げるチャイムが鳴ってしまったため最後の部分を聞き取ることが出来なかった。

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