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姉が過去からやってきた。  作者: ゴリヴォーグ
僕と周りの女性たち
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さぁ、主役の登場だ!~Let`s party!!~

「「「「ハッピーバースデー美桜!!!!」」」」

 パンッ!!

 御崎原邸のドアを開けた客人を迎えたのはクラッカーの祝砲と4人の笑顔。手荒くも微笑ましい歓迎を受けた客人は、

「こう君、早苗、峰子さん、それに伊織ちゃんまで……。みんな私のために?」

 心からびっくりしていたようだ。そりゃそうか。最初は僕と峰子さんと姉さんの3人だったし。残り2人は想定外だったのだろう。

「当然だ。なんたって可愛い可愛い姪っ子のためなんだからな」

 可愛い姪っ子のために高級食材を用意してくれた理事長。

「まあ10年間あんたにおめでとう言えなかったわけだし、今日ぐらいは良いかなって」

 なんだかんだ言いつつも毎年姉の誕生日を祝ってくれた親友。

「友達の誕生日を祝うのに仲良くなった期間なんて関係ありませんよ?」

 出会って5日しか経っていないのに仲良くなって今日もやって来てくれた後輩のような先輩。

「ま、そういうこった。僕も前プレゼント貰ったしね。返さないとフェアじゃないだろ?」

 過去から来た姉の担任かつその弟。

 みんながみんな姉さんのことが好きだから今日ここに集まった。まったく、姉さんは果報者だよ。

「みんな……ありがとう」

「おいおい、まだパーリーは始まってないんだぞ? 主役が泣くのは早すぎないか?」

「な、泣いてなんかないわよ!! これはオイルでアイセンサーが霞んだだけなんだから!!」

 実の姉のように泣きそうな彼女を優しく慰める峰子さんとへんてこりんな理由をつけて涙をごまかす姉。最近姉さんの涙をよく見る気がする。でもあの時とは違う。それは悲しみの涙じゃなくて喜びの涙。心が満たされたときにこぼれるものだ。

「さあそれでは主役を案内しようではないか。私も腕によりをかけて料理に挑戦したからな。見て驚くなよ?」

 はい、嘘ッぷー。思いっきりホラーゲームしてたじゃねえか。しかもよくよく見てみたら録画してたよなあれ。

「私立高校理事長と物理教師が青鬼を実況してみたよ」

 このニコ厨め!!



――



「凄い……これ本当に峰子さんが作ったの?」

「当然だ。美桜が居なくなってから料理を作ってくれる人がいなくなってな。仕方ないから自炊を覚えたんだ。おかげで今はこのような手の込んだものまで作れるようになったんだ!」

「おいしそう……、峰子さんありがとう!!」

 何も知らない姉さんは無垢な笑顔を峰子さんに向ける。

「ハッハッハ、航もこれぐらい作れるようになるんだなあ!」

 やべえ、すっげえ論破してええええ!! なに寝ぼけた子といってんだこの年増は!? 実際はこうだっただろうが!!

「美桜が未来に行ってしまったから私のご飯がなくなってしまった。このままでは私は外食ばっかで財政的にも健康的にもよろしくない。ということで航、私を満足させろ」

 っていって僕に全部丸投げしやがったくせに!! あんた実際スクランブルエッグも碌に作れないだろうが!!

「まあまあ、先生落ち着きましょうか」

「落ち着いていられるかっ!! 別に僕が作ったって名乗る気はないけどあの人に手柄奪われるのだけは癪だ!!」

 ちなみに小声で叫んでいます。

「まあ見ててくださいって」

 百人見たら九十九人が惚れてしまうようなウインクをして伊織は峰子さんのところへ向かう。ちなみに残り一人はホモだ。

「理事長先生、この料理は何って言うんですか?」

 伊織はわざとらしく質問をし、アクアパッツァを指差す。

「こ、これか? これは……、ほらあれだよ」

 当然ながら、料理は食べる方専門な峰子さんに見慣れない料理の説明が出来るはずがない。伊織はまさに今ソクラテスの皮肉を変化球で実践しているのだ!

「理事長せんせーい、教えてくださいよ~」

 普段使わないような馴れ馴れしすぎる口調で迫る。峰子さんの顔には焦りの色しか見えない。

「これは、そうだあれだ!! アクアパケラッツォ! ついつい度忘れしちゃったよ。ハハハ……」

 何ですか、そのラップみたいなネーミングは。

「これアクアパッツァって言うんですけど……」

 残念不正解!! ざまあ味噌漬け。

「何……だと……。いやあ、噛んでしまった。ハハハ……、なんだその冷ややかな目は」

「いや、ほんとに峰子さんが作ったの?」

「ば、馬鹿いってんじゃないよ!! 訴訟も辞さないぞ!?」

 あくまで自分が作ったことにしたいらしい。醜くもしがみつく姿は哀れを通り越して滑稽に見えてきた。

「じゃあ理事長さん、以前このローストビーフに隠し味があるって言ってたじゃないですか? その隠し味ってなんでしたっけ?」

 さらに追撃をする伊織。隠し味なんて容赦ねえな……。

「か、隠し味だって?」

「そうですよ。このソースには秘伝の技があるって」

「そ、そうだ有るぞお。秘伝過ぎて8つ目のジムバッジゲットしないと使えない仕様になっているんだ」

 隠し味って秘伝マシンから手に入れるものじゃないと思いますよ。1,2、ポカン。カ○ゴンはねごとをきれいさっぱり忘れた! そして……、カ○ゴンは新しく秘伝技隠し味を覚えた!! どんな技だよ。

「麻生さん、隠し味ってのは口にしてみて始めて存在に気づくから隠し味って言うんだよ。それを今聞いちゃうのは無粋ではないか?」

「えー、でも知りたいです~。そうだ、シェフに聞いてみようかな?」

「そうだ、それがいい。何事もプロの意見が一番だからな」

 ホッと安堵の顔を見せる峰子さん。

「そーだ、思い出した!! 醤油ですよ醤油!! 先生は醤油が隠し味って言ってたんですよ!」

「そうだ、よく思い出したな。醤油というのはなんにでも合うからな。料理のさしすせそって重要だな。大豆は素晴らしいしな」

 安心しきったのか不思議な日本語を使う。でもね、それ……

 罠ですよ?

「あ~、なぜかこんなところに秘伝のソースが!! ちょっと舐めてみよ!」

 伊織は唐突にソースを少し指につけその指をなめる。……、なんつうか、扇情的だな……。

「こう君……、にやけてるよ」

 おっと、妄想と現実がごっちゃになりかけたではないか。危ない危ない……。

「美味しいですね……流石理事長さんです」

「そうだろう? 流石だろう?」

「流石すぎですよ。醤油の味が隠れすぎて全くしませんもの!」

「はっ?」

「でもなんだろ……。醤油の味の変わりに何か別の味が……。これって何ですか?」

「な、何ですかって?」

「そうでう。醤油じゃない味がしますもの。いやむしろこれしょうゆ入ってませんよね?」

「は、入ってないいい!?」

 なんですかね……、この矛盾を突くやり方にデジャヴ感じんだけど。

「早苗、異議あり!! って言いたくなってこない?」

「奇遇ね。あたしもなんとなく法廷が頭の中をよぎったわ」

 二人とも同じ考えをしてましたか。いや、僕も合わせて三人ですね。

「なんか麻生さん活き活きしてんな……、あの子隠れS?」

「僕に聞かないで下さい」

「いや、いつもアンタら部室で二人っきりじゃん。もしかしたらそういう関係なんじゃないかって」

 生徒と教師でそんなことしねえよ!!

「そうよ早苗! こう君の嫁は私なんだからね!!」

 姉さん、主役にこういうこと言うのも気が引けるんですが……、黙っててください。

「姉さん、お口チャック」

「ほふひひゃっふ」

「何やってんのよアンタら……」

 外野三人が漫才をしている間に法廷のほうはというと決着がついたらしい。どこから取り出したのか、弁護士側は「勝訴」と書かれた半紙を持っている。


「見栄張ってすんませんでした。私は料理は一切出来ません。航と麻生さんが作りました」

「まあなんとなくそんな気はしていたけどね」

「ちくしょー!!」

 今日の教訓。人の手柄取ったっていい事ないよ?



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