舞台篇あねからpart1~Urban legend~
ブザー音。
『それでは、これより1年4組による演劇、「ミュージカルあねから」を上映いたします』
舞台の幕が上がる。ああ、もう逃げられない。ここからはノンストップだ。
舞台:教室、授業の終わりを告げるチャイムが鳴る。
『はい、ここテスト出るからね。そんじゃ、日直』
『起立、気をつけ、礼』
『あざーした!!』
『はぁ、ようやく授業終わった終わった。なんか食って帰ろうぜ』
『ダメだよ、掃除あるじゃん』
『うわぁ、かったりぃなぁ。掃除しなくとも綺麗だっつうの』
『まぁまぁ、ささっとやって帰ろうよ』
『それもそうだな、ちゃちゃっとやるか。箒持ってきてくれ』
『ほいほーい』
『掃除なんて飾りなんです。偉い人には分からんのです』
『どうでもいいけどさ、箒持ってたらリズム取りたくならね?』
『リズム?』
『そうそう、こんな感じにさ』
箒で床を叩いてリズムを取る古村。
『ああ、小学校の時にやったかも。テレビでもやってたしね』
古村に倣って箒でリズムを取る西邑。すると舞台にクラスメイトが集まってくる。
『せーの!』
それにつられて舞台にいる全員が箒で軽快なリズムを取り出す。さて、出番ですな……。
『あー、そうだ忘れてた……、って何しとんじゃああああ!!』
『あっ、先生。先生もしません? 結構楽しいですよ?』
『そうなの? んじゃお言葉に甘えて……、ってしないよ!! 掃除しないで暴れないでよね!!』
『まぁまぁそう言わないでさ、先生もどうぞどうぞ』
サイドから飛んできたハリセンでリズム良く叩かれる。ってガチで叩いてないかこいつら!?
『痛い! 痛い!』
『ええじゃないかええじゃないか♪』
『よいよいよいよい♪』
『ええじゃないかええじゃないか♪』
『よいよいよいよい♪』
『ええじゃないかええじゃないよ!! 掃除ぐらいちゃんとしてよ! 理事長に怒られるの僕なんだから』
『でもそんなの関係ねえ』
『あるよ! 例えば僕が傷ついて挫けそうになった時に、必ずソバに蜂がいてー、刺さってくれたよ迷惑だー♪』
:ビリーブ(替え歌、キルーユ)
『世界中の希望のせてー♪この時給を増やしーたいー♪』
『いまー、ハロワのー扉をー開けるとーきー♪』
『かなーしみーや、』
『にーくーしみーがー』
『いつぬーのひかー、殺意にーかわるだーろー♪』
『アーイキールミネーコー♪』
『ごーめんなさーい♪』
『ほう、そう思っていたのか、南雲先生よ』
突如舞台に現れる御崎原峰子(中の人、町田渚)
『り、り、理事長!?』
『ふむ、君には期待していたのだが、真にがっかりだ。ガッカリオブザイヤーだ』
『ザじゃなくてジじゃ……』
『だまれ、小僧! 少し来てもらおうか、査定が楽しみだ』
『ひぃぃぃぃぃ!!』
引きずられるように去る。観客の馬鹿にしたような笑いがなんか胸に来る。
『先生行っちゃったね』
『犠牲になったのだ、現代日本社会の犠牲にな』
『関係なくね? てか用事なんだったんだろう?』
『知るかよ。そうそう、知ってるか? 都市伝説?』
『急に話が飛んだね』
『えーとねぇ、都市伝説。概念は、フランスの社会学者であるE・モラン の著書によって登場したんだよー。1979年の初頭には、アメリカの民俗学者であるジャン・ハロルド・ブルンヴァン がアメリカ民俗学の学会誌の書評で使ったの。1980年代になると、ブルンヴァンがこの現象に対する著書を発表するようになり、対外的にもよく知られるようになったんだよー。ブルンヴァンによると、都市伝説とは「民間説話」の下位分類である「伝説」に属し、「伝説」とは「口承の歴史」あるいは「擬似的な歴史」であるとされる。都市伝説は、民間における「普通の人々」によって語られ、信じられているんだー。「都市-」という形容詞は「都市の、都会の」というような地域を示しているのではなく、「都市化した」という意味で使用されている。その意味では、伝統的文化に由来する伝説や、ある社会に古くから永く伝承されてきた伝説を指すものではなく、説話の舞台設定が地方であっても都市伝説と呼ばれる。一部には口承の他に、テレビ、ラ……』
『小川が答えた!? ってそう言うのを聞いてるんじゃねえよ! wikiそのまま引用したみたいな内容だしさぁ!!』
『編集したの私なのー?』
『知るかよ!! 疑問形使うとこおかしいだろ!!』
『あー、私の出番ここまでだ……すぅ……すぅ』
『ここで寝るか!? のび太君より凄いな、おい』
『そんなことよりお腹がすいたよ』
『アイレム選択肢!? って話がすすまねえよ!! 都市伝説ってのはだな、10年前にここの学校で1人の女子が消えたって奴だよ』
『それどちらかと言うと学校の七不思議じゃない?(棒) 馬鹿なの? 死ぬの?(棒)』
『最後のはスル-しよう。七不思議? そんなのあるの?』
『知らない?(棒) 無知が許されるのは小学生までだよねー(棒)』
『初耳だぞ。ってなんでそんな棒読みなわけ?』
『タスケテー、ココヨー』
『使うタイミング早いよ! アドリブって何でもかんでも適当にいれりゃあいいってもんでもないぞ!』
『それはいいとして』
『ちゃんと話せるじゃん。で、その学園七不思議とやらを教えてくれよ』
『ググレカス』
『出てくるの!?』
『えーとねぇ、ググレカス(Gugurecus 紀元一世紀頃)とは、古代ローマ帝国の元老院議員で、ウァッロ以降のローマの図書館行政に深く関与し、当時最高の知識人と称えられたとされるんだよー。彼の名前は、その残した業績から、「気になった事柄は自分の力で調べるのが良い」と言う意味の諺としての意味を持つ。詩人のテラワロスとは竹馬の友だったことでも知られている。ggrksとも表記されるんだよー。おやすみー。ぐぅぐぅ』
『雑学キャラなの!?』
『しかも出番あれで終わりって2分ぐらいで再登場した件について。流石小川汚い』
『なんでネット用語キャラになってるんだろ?』
『天の声に導かれた結果よ。それより7不思議だけど、1、誰もいないのに音楽室のピアノが贈る言葉を弾いている』
『海援隊!? それ贈るじゃなくて成仏る言葉じゃない!?』
『あっ、ちょっと今の面白かったよ』
『だれうま。その2、図書室に悪魔の聖書のコピーがある』
『悪魔の聖書? ナインスゲートか?』
『さぁ、どうかしらね。どんなものか興味はないけど、碌なもんじゃないわね、と言ってみるテスト』
『無理に言わなくて良くね? それからそれから?』
『3つ目は……』
『先代理事長の像がマツケンサンバⅡを踊るんだって』
『出番取られた!』
『なんだ度会か、ってマツケンサンバⅡってまたなんともいえないチョイスだな』
『想像したらえらくシュールだね……』
BGM:マツケンサンバⅡ
『なんか流れてきた!?』
講堂入り口から先代理事長の扮装をした伊藤が入ってくる。
『理事長キター!!』
『3つ目にして出てくるの!?』
『たたけ(jasrac』
舞台に上がると同時にマツケンサンバⅡを踊る。
『オレ!!』
観客席から生暖かい拍手。殆どの人が付いてこれてないのが舞台裏からでも見て分かる。実にシュールだ。ダッシュで帰っていく前理事長。
『こんな風にね』
『ああ! 突っ込みどころが多すぎて突っ込みきれねえよ!!』
『何の話してるんだ?』
「きゃああああああ!! マー君んんんんんん!!!」
客席うるさいよ!!
『お、おう、氷上。御崎原の七不思議を話してたんだ』
『七不思議? そういやねえちゃんから聞いたことあるな。確か深夜4:44に調理実習室で、』
『調理実習室で?』
『キッチンロワイヤルをやってるんだと』
『誰がだよ!?』
『知るかよ。悪霊かなんかだろ』
『マツケンサンバといいキッチンロワイヤルといい随分俗物的な七不思議だな』
『ただ傍から見たら勝手に野菜が切れたり包丁が浮いたりしてるらしいぞ』
『それはホラーだね……』
『歩ー、帰ろうよ』
『リア充氏ね』
『小町ちゃん。待たしちゃった?』
『別にそう言うわけじゃないけど。なになに、ボクを差し置いてなに話してるの?』
『学園七不思議だよ』
『七不思議? あー、ボクも知ってるよ。何年か前に体育館を改装したんだって。なんでも床が妙に古くなったからって聞いたけど』
『それからそれから?』
『えっと、なんだっけ?』
『聞かれても知らないぞ』
『そうそう! 改装工事のときに、その古くなった床があったんだけど、その下から……』
『下から?』
『首のないネズミの腐乱死体が見つかったんだって。それも100匹以上も』
『うっ、それは精神的にきついものがあるな……』
『人伝えから聞いたからあまり知らないんだけどね。そうそう、』
小町ちゃんは客席に向き、
『その下にね!!』
指差して叫ぶ。
「ひっ?」
いきなり指されたお客さんはビックリしているようだ。そりゃそうか。
『なーんてね。何年も前の話だから今もネズミがいるなんてことは無いよ、多分ね』
「ふぅ……」
観客はほっとしたように一息つく。すると、
『チューチュー』
「わぁ!?」
椅子の下からネズミの声が聞こえてくる。(ネタばらしすると録音したネズミの声を椅子の下から流しただけ)
『これで5つか。後2つか、ここまで来たら全部知りたいな』
『おーっほっほっほ!! 6つ目は夢を見続ける破壊の神を5ターン以内に倒すと仲間になるのよ!! 魔眼を持つ者しかできないから貴方たちには無縁よ!!』
『ぜってー違うだろ!! エスタークの時点でおかしいと気づけ! 学園関係ないっ!』
『む、6つ目は鏡よ! な、なによその眼は! わ、私のこと馬鹿にしてるんでしょ!?』
『誰もそこまで言ってないだろ。でも鏡ってそれっぽいな、どんなのだ?』
『午前4:44にか、鏡を見るとは、反転世界に引きずりこまれるのよ! な、なによ! これだから言いたくなかったのよ! 変な顔されちゃうし……』
『いやいや、別に頭ごなしに否定する気はないぞ。むしろ今までの中ではまだそれっぽいからな』
『と、当然よ!!』
『これで6つ。後1つは……』
『さっき古村君言ってたよ』
『オレ? なんか言ったっけ?』
『ユッキリーン☆ 10年前に人が消えたって奴ですよ☆』
『あれも怪談なのか?』
『はい! でも学校の怪談なんて七不思議なのに六しかないってのが七つ目にカウントされるぐらいですから気にしちゃ負けですよ☆』
『って、それもそうか』
『それと知ってます? 実はタイムスリップしただなんて噂もあるんですよ☆』
『タイムスリップ!?』
『そうです☆ それも、10年前にですよ』
『ってことはいつか戻ってくるって事だよな?』
『そうですねー。いつかは知りませんけど』
『案外もう帰ってきてたりして』
『それじゃあラノベよろしくこのクラスに来るんじゃないですか? イッツファンタジックなのです!』
:舞台暗転