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ぷろろーぐそのに 俺の姉がこんなに以下略~My older sister can't be so pretty~

 突然だけど姉の話をしよう。僕には3つ上の姉がいた。こう話すと決まって似たような反応をされる。口に出さなくても分かる。顔で分かるし。

「ああ、この子のお姉さんはこの世にいないんだな」って。

 そのたび僕は苦笑いしてこう答える。

「同情している私マジ優しいわぁ。って悦に入っているところ悪いですけど姉は死んではいないと思います。というよりあの人が死ぬことは老衰以外にないです。あと同情するなら金をくれ。出来れば諭吉希望」って。可愛くねえな。僕。

 

 嘘ではない。僕の知っている姉はひたすらに迷惑なほどバイタリティにあふれた女性だった。事故ってもケロッとして治療費請求する人だし、むしろ老衰でも死ぬかどうか。ただ重要な情報を一部割愛して話してます。まあ割愛した部分を話したとたん「姉がいなくて可哀相だけど生意気な子」が「頭の可哀相かつ生意気な子」に変わってしまうだけだ。無理もないけどね。誰が信じるだって話しだし。ぶっちゃけ当事者の僕でもこれは流石に……と思えるオチだ。

 


 我が姉、南雲美桜は2001年4月1日0時ジャストに10年後の未来に行きました。

 



 ……そこ、僕を可哀相な人間みたいに見るのはやめてくれ。慣れているとはいえ良い気分じゃないぞ?後、笑うとこじゃないからね。まあ仕方ないっちゃあ仕方ないか。いきなり某青い猫型ロボットの世界みたいなことを話されても実感がわかないだろうし。でもね、残念なことにこれ、事実です。事実は小説より奇なりとはよく言ったもんだ。

 そもそも2011年時点ですらタイムマシンが出来るなんて話は聞かない。むしろタイムマシンは有り得ないとまで言われているジャンルだ。それが10年前に実現していたということを信じるほうがどうかしている。それでもまぎれもない事実なんです。姉は僕の目の前でタイムスリップした……っぽい。すまないけど言い切れないんよねこれが。

 姉が消失した。それも僕の目の前で。これに関しては自信を持って言える。ただ残念というか当然だけど信じる人は殆どいない。でもそれがちゃんとタイムスリップの成功と言えるかは微妙なことでして。タイムスリップした本人がいないからなんとも言えません。







 それは10年前の3月某日。全てはここから始まったのだろう。そう、この日、とある一軒家の物置の中で、人に知られることのなかった世紀の発明が行われた。何? 後99年もあるのに世紀の発明だと? それはそうだけど、多分これ以降これ以上のものは100年は出てこないと思う。そこまでもったいぶるならそれは何だって?まあ落ち着け。まずはとある姉弟の日常をお見せしよう。

 





 タッタッタッタ……、階段を駆け上がる音が聞こえる。我が家には階段を駆け上る人間は一人しかいない。というか二人暮らしで、うち一人が語っているのだから必然的にもう一人がその足音の主になるんだけどね。そして、彼女は僕の部屋に入るなり、興奮気味にこう言うだろう。

「こう君!ついにお姉ちゃんはとんでもないものを発明しちゃったのです!」

 自分の背の丈にちょっぴり合わない大き目の白衣を翻しながら彼女、いや、我が家の長女様は思ったとおりの台詞を言いながらドアを勢いよく開ける。ついにって何度目だろうな。でもまあ完成は祝ってあげようではないですか。

「凄いねー。お姉ちゃんはやっぱり天才だよー」

「おやおや、こう君、流石にリアクション薄すぎないかい? 心なしか棒読みに聞こえるし」

「キノセイダアルヨー」

「謎の中国人!?」

「ワタシコウクンチガウネ。ワタシチュウカカラキタアルシンドアルネ」

「友達なら当たり前!? ってずいぶん懐かしいネタね……」

 南雲航12歳、南雲美桜15歳の日常。

「で、なんなの? 今度のとんでもない発明とやらは。確か前は、犬が人類の言葉を話すことが出来る薬とか言ってそこらの野良犬に飲ませまくったけど、結局何も人語を話すどころか、野良犬たちは揃いも揃って失神しちゃったじゃん」

「ふっふっふっ、よくぞ聞いてくれました! 前回の欠陥品と今回の世紀の大発明は比べ物になりません!! 一緒にしないでください! なんと、ついにお姉ちゃんはこの宇宙始まって以来最大のタブーを犯してしまったのです!」

 ただ単に犬を失神させるだけの薬品と、宇宙始まって以来のタブーを犯す(らしい)大発明を比べるなとか言うけど、どちらも製作者一緒なんだけどね。まぁ、そこまで自信があるなら聞いてみるか。

「……死んだ人を生き返らせるの?」

「嫌よ。グロいじゃない。ゾンビとかああゆうスプラッタなの怖いし」

 即答でした。因みに姉はホラー系が苦手です。

「こう君、気になるよね? なるよね!?」

 いや、別にどうでもいいんだけど……

「それはなんと……タイムマシンなのです!! きゃ、言っちゃった!」

 僕が答える前に話す。そして照れるな。

 









 って今この人何つった?

「ぱーどぅん?」

「あれっ? 理解できなかった? 仕方ないなぁ。可愛い可愛いこう君のために優しくて世界一こう君を愛してやまないお姉さまがもう一度教えてあげるね。べ、別に教えたいからとかそんなんじゃないんだからね!?」

 なんかそれ、流行りそうだな。何年か後に。

「お姉ちゃんはなんと!! タイムマシンを作っちゃったのです!!!」

 聞き間違えではありませんでした。


「なっ、なんだってー!!」

「ありがと。って最近の小学生もキバヤシ知ってるのね……ってこう君、どこに電話かけようとしているの?」

「いやぁ、ここは1つ黄色い救急車を呼ぼうかと思いまして」

「そのネタはちょっとどうかと思うよ!?」

「安心してお姉ちゃん。半年に1回ぐらいはお見舞いに行ってあげるよ」

「うぅ……こう君がいぢめる……」

「というよりタイムマシンなんかどうやって作ったのさ?カンクミが言ってたけどあれ実現不可能なんじゃないの?」

 ちなみにカンクミは当時の担任の先生。たぶん今後出てこない。

「ちっ、ちっ、ちっ、こう君甘いですねえ」

 指を振りながら答える。リアルにこんなことする人いるんだなぁ、姉だけど。

「お姉ちゃんに不可能はありません!!何故なら私はこう君のお姉ちゃんだからなのです!!」

 某海賊漫画なら後ろに大きく「ドン!!」って出そうなぐらい胸を張って答える。実際は「ぷるん」って擬音が聞こえそうだけど。この人何でもかんでもこの言葉でまとめるんだよなぁ。この言葉が出たって事はタイムマシンの原理やらなんたらかんたらの説明求めてもスルーするんだろうな。まぁ、難しい専門用語とか矢継ぎ早に言われても意味が分からないだろうからスルーしましょう。

「でもどうしてまたタイムマシンなんか作ったのさ。22世紀にでも行きたくなった?」

「22世紀になってもたぶん車は空を飛んでないと思うのは私だけかな。ってそんなことに使わないわよ」

「……出来ないの?」

「……いずれ出来る!」

 要は今は出来ないのですね。

「このタイムマシンはまだ試作品なのよ。実験段階では10分後の未来にパンを送ることは出来たけど」

 あれ?普通に凄くね?

「もちっと改良すれば人間も未来に送ることが出来るはずよ。まあ今んとこは10年前後が限界だと思うよ」

 それでも凄いと思う。でもこの人は何がしたいんだろ?

「話がそれたけどお姉ちゃんがタイムマシンを作った理由、それは……」

 ジャカジャカジャジャカ……ドラムロールが聞こえてきそうなためを作って姉は口を開く。

「10年後にいって年上になったこう君に会いに行く!!!」

 はっ?今なんと?

「いやね、過去に戻って幼少期こう君を思う存分愛でまくって逆光源氏計画も捨てがたいんだけど、」

 思考が追いつかない。

「ほら、こう君前言ってたじゃん。俺は高校教師になる!ドン!って」

 ドン!は言ってねえよ。高校教師の件は事実ですが。当時やっていた学園ドラマの先生が格好良かったから憧れてたんだ。生徒を助けるために例え火の中水の中、相手が教育委員会だろうとヤクザだろうと立ち向かうその姿にさ。ホントに高校教師になってしまったのは何の因果だろうね。残念なことにあの憧れの教師増とはかけ離れた教師ですが。

「ってことはですね、なんと今未来に行くとこう君が先生で私が生徒になることが出来るわけよ!」

「うわー、このブラコンご都合主義過ぎるだろ」

「シチュエーション的には良くない?教師と生徒、年下の姉と年上の弟、なんっっっって背徳的!!やべ、鼻血出てきた……」

 グフフ、となんともまあ不気味な笑顔で鼻にティッシュをつめてらっしゃる。ホント残念な美人だよなこの人。家族の顔が見てみたいぜ。って僕か。とりあえずこれだけは言わせてください。

「スッゲェェェェェ!!クダラネェェェェェ!!」

 こう君は頭で情報を処理しきれなくなるとつい奇声を発しちゃうんだ☆














「なんともまあ……素敵なお姉さんですね。僕もこんなお姉さんが欲しいですよ。いやはや、素晴らしき姉弟愛ですよ、先生、どうしました?泣いてますよ?」



 こんなくだらない理由で姉は過去から来るそうです。そしてこんなくだらない理由で僕は独りになってしまいました。思い出したら泣けてきた……なんで律儀に高校教師になったかな……辞表出そうかな。



 2011年3月31日23時30分、姉帰還予定まで後30分




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