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姉が過去からやってきた。  作者: ゴリヴォーグ
理事長と幼女とペンギンと
199/263

THE.リア充~High school musical~

 考えても見ると、私南雲航の周りは妙に女性が集まる。自分で言うのもなんだが、それなりにモテル方だとは思うけど、血縁関係のない妹までやってくるとは思わんだ。整理してみると、我が家には年下の姉とフィリピン人とのハーフ妹が寝食を共にしており、時々サブカル趣味の理事長に酔いどれ元カノが晩御飯をたかりに来る。この時点でハーレムを形成してしまっていることぐらい自分でも分かる。しかし主人公がむやみやたらモテル話と違って、こちらに好意を向けるのは一番アウトな姉だけ。それも最近は僕に向ける好意は1人の女としてか、それとも姉としてのものか分からなくなる始末だ。まあ僕もなんだかんだいっても満更ではないけど、弟としては是非とも後者であってほしい。ただでさえ10年前からやって来た姉だなんて妙ちくりんな設定があるのに、本国の民法に反するようなマネは御遠慮願いたいね。

 んでもって学校に行けば全校で一番可愛いものぞろいと揶揄されるクラスの担任であり、生徒たちからもそれなりに懐かれているとは思う。顧問をしている天文部も最近変なのが入部したけど、まぁ男性諸君がうらやむようなクラブだ。特に部長の人気は異常で、隠れきれないファンクラブがあるという始末。さらに生徒会長にも懐かれており……、うん僕リア充だ。

『それを言うためだけにわざわざ電話かけてきたんですか』

 電話越しでも聞こえる呆れた溜息。それが妙に色っぽく思えた僕は大丈夫でしょうか?

「まさか。声が聞きたくなっただけだよ」

 寒い台詞その1。というかこんな台詞今時吐く人間がいるのだろうか? 鏡を見ろって言うな。

『それはどうも。で、ホントの用件は何でしょうか?』

 軽くスルーされる。声色も変わらないところをみると、言うタイミングを誤ったのだろうな、うん。

「ああ、古都ちゃんのこと。感謝すべきなのかどうか分からないけど、彼女保護してくれたでしょ?」

 その代償として我が家にまた1人仲間が増えたわけだが。まぁマスコット的なキャラだし、可愛いから何でもいっか。ノットロリコン、アイムコトコン。

『うーん、正確には僕ではないんですけど……、まぁそうなりますかね……』


「なんでもいいや。いや、よくはないか? ともかく古都ちゃんが日本に入れるよう工面してくれたことは感謝するよ。ありがとう、家にも癒しをくれて」

 学校では天文部、家では古都ちゃん。いやぁ、幸せだなぁ。

『い、癒しですか……。御疲れ様ですね……』

 あれ? ちょっと引かれてね?


――


 その後は色々と取り留めの無い話をして電話を切る。

「なんつうか、リア充だよな、僕」

 自分のおかれている環境を思い返すと、それ以外言いようが無かった。

「だけどまぁ、もういらないかな……」

 これは贅沢な悩みだろうか? ……はい、贅沢ですね。すんません。

「お兄ちゃんなにいってるの?」

「ませている年頃なんだよ。」


「ブツブツ……」



――



「ゴメン、どゆこと?」

 さてさて、学園祭の出し物にノータッチだったのがマズかったか。なんかとんでもない方向に話が進んでいた。

「えっ、えっと……、ミュージカル……、です……」

 ミュージカル。音楽、歌、台詞およびダンスを結合させた演劇形式。ユーモア、ペーソス、愛、怒りといったさまざまな感動要素と物語を組み合わせ、全体として言葉、音楽、動き、その他エンターテイメントの各種技術を統合したものである。ミュージカルとはミュージカル・シアターの略語で、ミュージカル・プレイ、ミュージカル・コメディ、ミュージカル・レビューの総称である。byウィキペディア

「テニスでもするの?」


「テニス?」

 ああ、分からなかったか。

「ちなみに、脚本は私!! 見て見て~」

 意気揚々と手を挙げた姉さんがやたら分厚い台本を見せてくる。つーかこの台本電話帳ぐらいないか? ギャルゲの収録かよ……。

「いやさぁ、パワフルガイに触発されちゃいましてね……。自分で言うのもなんだけどクオリティには自信があるよ!!」

 やけに自信満々だな。

「どれどれ……、ふむふむ……、でもって……。って無理だろうが!! どんだけ尺取るのさ!! ニーベルングンの指輪でも上映するの!?」

「先生、それを言うならニーベルングの指輪よ」

 冷淡に突っ込みを入れる茅原。

「揚げ足取らないでよ! もう! しかもこれに加えてミュージカルでしょ? 一週間有っても終わらないよ!! 観客も帰りたーいとか言い出すよ! クオリティの良し悪しに関わらずもはや拷問だよ!?」

 一応教師としての良心でニーベンルグミュージカルをやめてもらうよう説得しよう。

「だからニーベルング」

 言いにくいんだよ!!

「えー、全米が泣いたってキャッチコピーつけようと思ったのに」

「いや、そもそも色んな映画混じってたからね」

 ターミネーターがウエストサイドでムーンウォークって……、全米が泣いた作品つなげりゃいいってもんでもないぞ。

「じゃあこれはどう? 第二候補なんだけど。あっ、こっちもミュージカルだから」

 さっきの4分の1ぐらいの薄さの台本を渡される。最初からこれしたらいいのに……。

「どれどれ……」

 ん? おっかしいなぁ。僕の眼が疲れてるのかな……。

「どうかなどうかな?」

 にじり寄って聞いてくる。肩に首を置かれたので、少しばかり彼女の重みを感じた。

「あのさぁ、これって20歳未満しかみれないネバーランド的な台本なのかな……」

「へ? こう君なに言ってんの?」

「いや、だってさ。僕の眼が正しければこの台本には一文字たりとも書いてないんだけど」

 白紙、白紙、白紙の連続。コピー用紙をホッチキスで留めただけだ。

「ああ、これはねぇ。みんなのアドリブに任すってことでっへぇ!!」

 ゲンコツ!!

「ちょっとこう君!! 体罰はダメだよ!!」

「五月蝿いやい!! なんでそんなハードルの高いことすんのさ!! ウォルトさんだってちゃんと台本の上でやってるよ!! 即興劇とか素人高校生に出来るわけないでしょうがああ!! はぁ、はぁ、はぁ」

 この時、僕の中でなにかが切れた。

「てめーら、よく聞け」

 自分でも出したことの無いような低い声。

「全員、台本考えて来い。いいか、全員だ!!」

 もう姉さんはだめだ。ならば手当たり次第するしかないじゃない!!

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