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姉が過去からやってきた。  作者: ゴリヴォーグ
もーれつ! 大運動会
188/263

川中島な決戦~The outbreak of war~

「ここらで逆転しなきゃまずいかな……」

 体育大会も終盤に入り、残す競技は乱戦必死の騎馬戦、そしてスウェーデンリレーを残すこととなった。

「さてさて、まずは騎馬戦だけど……」

 御崎原高校の決戦秋の陣が今静かに始まろうとしていた。


――


「取るよー! じゃんじゃん取るよ!」


「ちょっと、落ち着いて! 危ないよ!」

 恐らくうちのクラスで一番だと思うチーム二宮。馬自身は西邑が前に来るように、比較的ミニマムな馬だけど、何より上に乗る人がチート級だ。御崎原最強のファイターと呼ばれる小町ちゃんの獅子奮迅の活躍が期待できる。



「早く終わらせて。暑くて仕方ないの。この後リレーもあるんだから」


「そんじゃわざと死ぬか? リレーがあるのはこちとら同じなんだ。アンタ一人特別扱いは出来ねぇな」

 騎馬と上で険悪な空気が流れるのは、チーム高梨。そもそも高梨が協調性0という欠点があり、その下にいるのが氷上だ。見た目が怖かったり、過去の渾名からは意外かもしれないが、結構行事にも積極的に参加する。元々一本気溢れるいいオトコと言うこともあり、高梨の自分本位な態度が気に食わないのだろう。そういうやつなのだ。


「マー君! 負けたらメッ! だからね!」

「ね、ねえちゃん…」

 それとも、負けられない理由が有るのか。特に姉的な意味で。



「敵は本能寺にあり!」


『うおおおおお!』

 ノリノリのとこ悪いですが姉さん、それは違うと思います。

「私の背中は君たちに預けたよっ!」


「背中は違うと思うけど……」

「良いんじゃねえの?」

「そーだぜ度会、こういうのはノったもん勝ちだぜ」


 まあみんな楽しそうだしいっか。


――


「さあ! ゆきりん☆がお掃除しちゃうぞ!」


「あああ!! なんでこいつの下なんだよ!」


「何よ! デレデレしちゃって!」


「小鳥、どうしたの?」


「いいえ、楽しそうだなぁって」


――


「山本さんっ! 見てて下さい私の活躍!」


「いや、私も出るんだけど……」


「かっちりホールドしますよっ!」


――


「麻生伊織! どちらが多くとれるか勝負よっ!」


「身内で戦っても仕方無いと思いますが……」


「おっ! 良いわね! 私も混ぜて!」


「うう……神楽さんまで……、うう……、みないで下さい……」


「やるなら一番よっ! 良いわね、副会長君!」


「名前で呼べよっ!」


――


「あら、アナタも出ていましたか」


「所詮は馬だけどな」


「お似合いですよ。他人の下って所が特に」


「一応元生徒会長なんだけど!?」


「黒歴史でしょ」


「ここで初タメ口!? つーか出るんだ? 騎馬は?」


「後でのお楽しみですよ」



 それぞれがこの戦いに思いを馳せる。ある者は恋のため、ある者は意地のため、ある者は焼肉のため……、負けられない戦いが始まろうとしていた。


――


「いざっ、出陣!」

 高らかに鳴るホラ貝。鼓舞するかのように叩かれる和太鼓。戦いの火蓋は切って落とされた!



――



『えーと、実況は私南雲航と』

『解説の御崎原峰子でお送りする』


『さあグルグルと回っていますね。互いの距離をつかむようだ!』


『見たら分かるだろ。しかしこうやって見ると圧巻だな。川中島の戦いとは言い得て妙だな』

 男3、女1で構成される騎馬の関係上、全校生徒とはいかないけど、各クラス6、7組は出ている。それが全クラスとなると、騎馬の数は百を軽く超えるのだ。まさに合戦と呼ぶにふさわしい。


「どりゃあああ!!」

「うおおおお!!」

 太鼓が鳴り終わると同時に、地響きを起こしそうかな雄叫びがあがる。たった今この瞬間から、運動場は戦場と化したのだ。


『おおっと、早速ゲームは動き出した! あれは1ー4の二宮隊だぁ! なんと二宮選手空を飛びながらはちまきを奪っていく! まさに戦神だあああ! 流石うちのクラス!!』

 もちろんホントに空を飛んでいるわけではなく、敵の牙を乗り継いではちまきを取っていく。身のこなしに自信のある彼女だから出来る技だ。


「いいぞお! 小町! お前こそ一番になるんだぁ!!」

 おやっさんもご満悦だ。

「反則ではないかという声があるから言っておくが、騎馬戦は騎馬から落ちなければどうってことはないからな。しかし先程川中島と言ったが、彼女だけは壇ノ浦だな」


「また分かりにくい例えを。言わんとしてることは分かりますけどね」

 例えるなら、義経の八艘跳びだ。船から船に飛び移ったように、小町ちゃんは人から人を飛び渡る。

『このまま彼女の独壇場になるかぁ!? いや、あれは何だ! バッタバッタと騎馬をなぎ倒していくぞ!』


「邪魔だ邪魔だ!」


「ちょっと! 止まりなさい!」


「止まったら負けだ! おらぁ!」


「きゃあああ!!」


『高梨隊、騎馬の氷上が止まらない! まさに重戦車だあ! 誰か止めることは出来ないのかぁ!?』

 クールビューティー高梨も、騎馬の暴走に戸惑っている。まさに暴れ馬だ。

『騎馬を崩すのも立派な戦術なんだが、彼は騎手を傷付けないように配慮しているな。その代わり男性陣には容赦ないな』

 本当に強い人間は、傷つかない程度というのを分かっていると聞く。全力でタックルしているようで、幾分か加減をしているのだろう。

「止めれるもんなら止めてみろっ!」


「それじゃあお言葉に甘えて、」


「なにぃ!!」


「馬がオグリキャップでも乗ってる騎手がヘボヘボじゃ締まらないわよね!」

 また例えが古いよ。

『なんとっ! 香取選手果敢にも幾つもの騎馬を葬った暴走戦車に挑む!』


『ふむ、勝機があるのか? 興味深いな』


「面白いっ! アンタを崩せば後々楽になる! 今ここで終わってもらう!」

 あーあ、ありゃ雰囲気に酔ってるわ。しかし担任の言う台詞じゃないけどさ、台詞の一つ一つが死亡フラグじゃね?

「おらぁ!」


「甘いわよ! 絵梨佳!」


「う、うん!」

 それは一瞬の出来事だった。無敵とも思われた高梨隊があっけなく終わりを告げたのだ。

「わっ!」


「な、なんだと!?」


「でかしたわっ!」


「えへへ……、初めて取っちゃった……」

 高梨の巻いていたはちまきは、音もなく忍び寄った入野隊にいとも容易く奪われてしまった。前に気が行くあまり、後ろにまで気が行かなかったのだ。

「きゃっ!」

 しかしそれもホンの束の間、油断したところを奪われてしまう。

「へっへっへ、ゲームが終わるまで安心したらいけないんだよ!」


「ッ! 南雲美桜!」


『ここで南雲選手が颯爽登場!』


『銀河美少年! タウバーン!』


『……なに言ってんのさ』


『……何でもない』

 今のは僕が悪かった。わざわざネタ振りしたようなもんじゃんか。

「はぁ……、またフルネーム……。普通に美桜とかで良いのになぁ。まぁいっか。さてさて、うちの騎馬の敵とらせてもらうよ! いっけー! 伝家の宝刀古村フラッシュ!」


「俺禿げてねーし!」


「きゃっ! 眩しっ!!」


「ええええ!?」


『古村フラッシュ炸裂だああ!!』


『目隠しは卑怯だと? 見てみろ。古村君は……、ハゲだ!!』


「俺禿げてねーよ!!」

 いや、ポケモンフラッシュ並みだったぞ。

「き、汚いわね! 前の麻酔銃といいあんたはやることなすこと卑怯なのよ!!」

「勝てば官軍ってこう君が言ってた!!」

『言ってねえよ!!』

『マイク入ってるぞ』

『うおっちょ!!』

 もうしっちゃかめっちゃか……。

「往生際が悪いのよ!!」

「あらs、それは私の台詞だけど?」

 互いに掴みあい、鍔迫り合いをおっぱじめる。

「ぐぐぐぐ……」

「負けるもんかぁ!!」

 騎馬の上で演じられる死闘。

「俺らいらなくね?」

「奇遇だな。俺もそう思う」

 騎馬のほうは勝負そっちのけで雑談している。


「やっぱみっちょんだろ」

「てめーはえはりん厨の俺を怒らせた」

「おい、こじなつディスってんのか?」

「やっぱ丹下桜だろ」

「「「「それも一理ある」」」」

 何の話してんだ?

『丹下桜は私のオアシスだ。後凛子は私の嫁、異論はないな?』


『もどってこーい』

 ってな間にも上2人はというと、

「邪魔するな!」

「空気読みなよ!!」

 膠着状態の二人なら狩れるだろうと来た騎馬たちを蹴散らしながらも、

「ホンッとしぶといわね!! しぶとさのノーベル賞をあげたいわ!」

「それはこっちの台詞! そろそろ腕疲れたんじゃない?」

 いつ来るか分からない決着の時を待っているのだった。

『あそこは放っておきましょう。となんだあれはぁ!?』

 その時、戦場に衝撃走る!!

「戦国時代最強とも言われた男、本田忠勝。そのあまりの硬さや武勇伝ゆえに現代では機動戦士ホンダムと言われるぐらいです」

 それはとても大きく、

「掠り傷ひとつなかったやら、信長や秀吉という名だたる大名も彼に感嘆したといわれていますが、どこまでが真実でしょうか?」

 圧倒的な威圧感を持っていて、

「前置きはこの辺にしましょう。――やっちゃえ、バーサーカー」

「■■■■■ー!!」

 狂戦士と呼ばれたそれは、大きく咆哮を上げ、戦場に降り立つ。

「ここからは、絶望ですよ?」

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