天文部室にて~G@ME~
「あの後は凄かったですね。香取さんが話題を全部持って行っちゃいましたからね。その後の表彰式が空気になっちゃいましたからね」
始業式も終わり、各クラスに戻りHRを終えた生徒たちがズラズラ出てき始めた。ある生徒は部活に精を出し、またある生徒は帰宅部活動に精を出している。我が天文部も例にも漏れず活動に精を出しているわけだ。
「どちらかというとゲーム研究部の活動みたいですけどね」
何を言う。これも立派な天文部活動だよ。
「天文は天文でもボンビラス星じゃないですか。」
そう。今僕と伊織は天文部部室にて、某桃太郎が電車に乗るゲームをしているのだ。
「某桃太郎が電車に乗るだけだったら別の作品もありますよね?」
「あれ何故かバイクじゃなくて電車がメインだったよな」
「時のバイクより時の列車の方が人がたくさん乗れるんですよ。きっと」
「そういうもんか? おっ、ゴール」
「先生ってこの手のゲーム強いですね」
「夜な夜なCPU相手に鍛えたからな。けど10年前だったら姉さんの方が強かったよ」
「美桜さんもゲームするんですか? ってボ○ビー来ちゃいましたね」
「姉さんは凄いよ。64に関しては神だったからな。スマ○ラとか0○7とか勝てた記憶がないし、極めつけはマ○カーだな。非公認記録だけど、レイン○ーロードの世界記録より速いからな。ってボ○ビー押しつけんじゃねえ!」
友情破壊ゲームが牙を向ける!!
「僕よりも先生の方がボ○ビーはお似合いですよ。ほらっ、造形とか何となくにてませんか?」
「似てねえよ!!」
――
不毛な争いは中断された。このまま続けたらお互い殺し合う寸前まで行っていたと思う。ホント陰陽師カード来たときは本気で殺意が芽生えたね。このゲームは当分封印しよう。
「噂によると、加納先生は一度桃鉄が切欠で彼氏さんと別れたことがあるみたいですよ」
ホント怖いなこのゲーム!!
「先生、今度はこれをしましょう」
そう言って伊織が取り出したのは、某鼻が無いキャラクター達でお馴染みの野球ゲームだった。
「いつも思うのですけど、このシリーズっていうのは製作者の好みが露骨ですよね」
それは言わないお約束だ。
「どこのチームとは言いませんけど贔屓されすぎて逆に悪印象を与えてるんじゃないですか?」
「どこのチーム自体には罪はないんだけどな」
「まあそうですけど……。能力値だって選手ご本人が見たら怒るような内容もあると思いますよ。何でこんなに能力が低いんだって」
「いちいち怒ってもやってらんないだろ? だったら見返してやれば良いさ」
「こううのが有るから実在のプロ野球チームを使う作品は余り好きになれないんですよ。漫画のキャラにバンバン打たれるのも気分の良い話じゃないでしょうし、漫画の世界とはいえ、タイトルをキャラクターに奪われるのもファンとしては歯痒いですよ」
いつになく饒舌だ。やっぱり野球が絡んだらキャラが熱くなるんだな。
「個人的にはオリ○クスさえちゃんとしていたら良いんですけどね。パワ○ロだったら、明らかにイ○ローをモデルにしたピッチャーとかライバルキャラの弟とかいて、それなりに待遇が良いですから良しとしましょう」
プレイボール!!
僕→ヤ○ルト
伊織→オリ○クス
「いつぞやの借り…返させていただきますよ!」
「いつぞやってこの時お前まだ野球のやの字も知らないだろうに」
「こういうのはムードが大切なんです!! ほらっ! 先生もノ○さんみたいにボヤいて!!」
「うちのまーくんが……」
「真面目にして下さい! それでも日本シリーズですか!?」
「ゴメン、僕は伊織のキャラクターが分からなくなったよ……」
――
「まさか皮肉にもあの時と同じ結果になるなんて……」
僕→4勝1敗
伊織→1勝4敗
奇しくも1995年の日本シリーズと同じ結果だった。
――
「先生、そろそろ帰りましょう」
あの後もひたすらゲームをしていたが流石に飽きてきたので帰ることにした。その途中、
「先生、寄り道しませんか?」
伊織はなんと大胆にも教師に寄り道を誘ってきた。寄り道をするなって藤堂先生言ってただろ?
「生徒からしたら藤堂先生のするなっていうのは、大丈夫だ。寧ろやってしまえって意味みたいですよ?」
「ネタ振りかよ!?」
「先生は知らないかもしれませんが、一部で藤堂先生って『混ぜるな危険』だとか『上島』って呼ばれてるんですよ」
「すっげー不名誉なあだ名だな、それ!」
「だから先生、連れて行って欲しい所があるんですよ」
「一応聞こう。どこだ?」
「アントワネットですよ」
笑顔で答える。ただ、僕にとってその笑顔は天使のような悪魔の笑顔な訳で、
「まさか……、」
「何がまさかかは分からないですが多分あってますよ?」
王様エクレアだとっ!!
「約束ですからね? 先生?」
さらば二千円札……、お前も達者でな……。
「さあ、行きましょう! 善は急げです! 王様は待ってくれませんよ!?」
出来れば王様は売り切れていることを切に願いなから、一路アントワネットへ向かうのだった。