初恋のアドベンチャー~Field have eyes,and woods have ears~
『西邑っち、次はあれに行こ!』
『……シューティングハウス?』
お昼ご飯を楽しく頂いた2人は、シューティングハウスという体感シューティングゲームに行くみたいだ。
「私達も行こっ!」
「ちょっ!」
姉さんに腕を掴まれシューティングハウスに駆け抜ける。
――
「これをお付け下さい」
シューティングハウスに入った僕らは、スカウターみたいなメガネとヘッドホンと光線銃を渡される。
「3Dメガネ?」
今流行の立体映像でも出るのだろうか。
「それは行ってみてからのお楽しみです」
一体何が始まるんです?
――
「うわっ!」
メガネをかけると、色んなゲージや地図みたいなのが出てくる。まるでFPSみたいだ。
「まさかサバゲー?」
姉さんがそう洩らすと、
『お前ら、おはようございます、いや時間的にこんにちわかなぁ?』
ヘッドホンから声が聞こえる。なんか相手を不快にさせる声だな。
『これより、お前らには殺し合いをしてもらいます。手持の銃があるでしょ? それでバッタバッタと撃ちまくってください』
遊園地なのに年齢指定くらいそうな過激なアトラクションだな。小学生は親がいなきゃ出来ない内容ってか?
「私たちのほかに4組いるみたいだね」
うち1組はよく知っている二人だ。出来ればあの二人にはバレルことなく仕留めておきたい。
『それでは、殺し合いの始まり始まりぃ~』
間の抜けた合図によってバトルロワイヤルが始まる。
「御崎原のジェームズボンドと呼ばれた私の真骨頂を見せてあげるわ!!」
初めて聞いたんだけど、それ。
「って姉さん危ない!」
やる気満々のジェームズボンドだけど、ゲーム開始早々撃たれそうになる。それに気付いた僕は庇うように吹き飛ばし、影から狙ってくるヒットマンを片付ける。その間わずか3秒!!
「ぬわー!」
『ヒットだよ~! その調子で狩って行ってね~』
当てるたびにヘッドホンから流れるみたいだ。生き残るには撃ち続けなきゃいけないんだけど、何度もこの声を聞きたいとは思えない。はっきり言って不快だ。
「こう君サンキュ!」
「ジェームズボンド名乗るのはいいけど、油断しないでね」
しかも映画じゃなくてゲームの方のボンドだろうな。
――
『アジャ!』
『でぇへー』
『帰りますねー』
その後も他のチームの皆様を撃ちまくり、気付けば僕らと残り1チームになっていた。
『残るは2チームぅ、どちらが勝つかな勝つかなぁ? 楽しみ楽しみぃ』
僕もこの不快音声が無くなると思うと楽しみになってきたよ。
「ヘッドホンとればいいのに……」
「あっ」
その手があったか。
「うおっ!!」
ヘッドホンをとろうとすると、なんと上から光線が降ってくる。
「こう君、上だよ!!」
見上げるとそこには常人離れした動きで中に舞う小町ちゃんの姿があった。物理法則とかそんなもの一切無視している。これもボクシングの力なのだろうか……。って感心している場合じゃないよ!!
「悪いね、君たちに恨みは無いんだけど、命取らせて貰うよ!」
着地した小町ちゃんはムードに酔ったセリフを吐き、一瞬で距離をつめて蹴りを与えてくる。
「ちょっ!?」
バックステップでかろうじて後ろに行くが、そこで出来た隙を逃さない!
「がら空きだよ!!」
万事休す! 銃口は無常にもこちらを向いて、
バヒューン!!
「え?」
独特的な発砲音の後、光線は僕ではなく小町ちゃんを貫いていた。
「甘いね……、私を忘れてもらったら困るなぁ」
「姉さん!!」
小町ちゃんは姉さんに気付かなかったのか、そんなって顔をしている。
「僕らの勝ちだ!」
勝利を確信するが、
「それはどうかな?」
突如不敵に笑う小町ちゃん。
「な?」
バヒュンバヒュン!!
「なんじゃこりゃああああああああ!!!!」
2人まとめて背後から撃たれてしまう。まさかっ……、
「ナイス、西邑っち」
「ふぅ……」
僕らの背後から西邑が登場する。
「残念、ボクは囮でしたー!!」
あんな少林サッカーみたいな動きをして僕らをかく乱したのも、全ては西邑のスナイプのためっ……。
「えへへへ……」
完全敗北!!!
『エクストリーム!! 生き残ったのは二宮、西邑ペアだよ~』
「いい勝負だったよ、南雲っち」
「こちらこそ、次は勝手や……る……?」
今なんていった?
「何驚いてるのさ南雲っち。それと美桜っちも、豆が鳩でっぽう食らったような顔しているよ?」
何か間違えてる気がしなくも無いけどそれよりも、
「モシカシテバレテタ?」
尾行失敗!! ミッションフェイルド! ガメオベラ!!
「うん。あと駅に親父もいたでしょ? へんてこりんなピエロのカッコしてたけど……、あれお巡りさん呼んだのボクなんだ。というかなんで制服着てるの? どちらかと言うと似合ってるけどさ」
ニヒヒッって笑う小町ちゃん。実の父親を国家の犬に引き渡したと言うのに、えらく嬉しそうだ。
「ってことは」
恐る恐る後ろを振り向くと、
「えへへへ……、ゴメンナサイ。駅に着く前に気付いたって言うか……」
西邑にも筒抜けだったらしい。ああ、あの竹馬ダッシュで追い越したときにばれたのかも……。
「まったく、あの馬鹿親父には心底うんざりだよ。南雲っち達まで巻き込んじゃって……、はぁ。親父に代わって謝るよ、ゴメン」
ぶっちゃけ言うと後半ぐらいからはノリノリだったんだけどな……。まあここはおやっさんに全ての罪を被ってもらおうか。盗聴器も持ってたから、そう直ぐには開放されないだろうし。それがたった一つのさえたやり方さ。おやっさんは犠牲になったのだ、南雲姉弟の保身のな……。
「1個質問。もしかして2人って付き合ってるの?」
開き直って姉さんはガールズトークのノリで小町ちゃんに聞く。
「……うん」
顔を少し赤らめて言う。その一言を聞いて、西邑も同じように紅潮する。
ダン! エンダアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアイヤアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!
脳内で流れてしまった。
「嘘っ! いつの間に……」
姉さんは驚きの余りポカーンってしてたけど、復活して根掘り葉掘り聞き出す。それはさながら芸能レポーターみたいだ。
「花火大会の日……かな……」
やはり夏休みの間には何かあったみたいだ。って花火大会!? 思いっきりその日ボクも一緒にいたのに……、気付かなんだ……。
「どっちから!! どっちから!?」
「ボクかな……」
「西邑君!! なんでオッケーしたの!?」
「ぼ、僕も二宮さんのこと好きだったから……」
「あああああ!! 何この可愛い生物!! キュンキュンして来たああ!! お持ち帰り決定!!」
姉さんは大きく腕を広げて二人を抱きしめる。西邑は胸に当たって少しにやけているのを僕は見逃さなかった。
――
「もしかしたらオバサン知ってたのかもね」
これ以上2人の恋路を邪魔するのも悪いと思った僕らは、二人と別行動をし尾行ミッションを終わらせる。ただそのまま帰るのも勿体無かったので、いろんなアトラクションに乗り、最後の締めとして観覧車に乗っている。姉さんは取り乱すかと思ったが、ジェットコースター等の絶叫マシーンが怖いのであって、観覧車みたいなのは大丈夫みたいだ。
「かな?」
だからこそピエロなんて職質上等な変態ファッションを与えたのだと思う。やっぱり二宮ママンには勝てそうに無いな。
「西邑君さ、強くなったよね」
最初にあいつを見たときのことを思い出す。最初に会った彼はそれはもう女の子としか思えなかったが、大好きな人、守りたい人が出来た彼に女の子なんて評価は宜しくないかな。ただ相変わらず見た目は女の子っぽいけど。
「恋は人を強くするんだよ」
何かを悟ったかのように言う。
「そうだな……」
頭の中に一人の女性が浮かんでくる。
「もう、また伊織ちゃんのこと考えてる。今は私のことだけ考えなさい、えいっ!」
「うわっ!!」
他の女のことを考えたのが気に食わなかったらしく、こちらに思いっきり飛び掛ってくる。
「って揺れる!! 落ちるって!」
「ダイジョーブ! そんな欠陥設計じゃないって! あっ、西邑君たちだ」
他の車両? に2人がいることに気付く。こちらには当然気付いていないみたいだけど、2人は自然と寄り添っていき、
唇を重ねた。
「大胆だねあの2人」
「僕だってしたこと無いぞこんなベタなこと」
恋は盲目と言うのは本当らしい。
「まっ、節度を守ってくれたら何でも良いや」
僕は携帯を取り出し、打ち込む。
『壁に耳あり障子に目あり、不純異性交遊は度が過ぎると校則違反だからな。あと結婚は卒業してからな!!』
ピロリンっ! と写メを撮り、それを添付して送信する。2人が慌ててあたりをキョロキョロしだしたのが面白かった。
「ま、おやっさんには黙っといてやんよ」
その代わり、ちゃんと自分で説明しろよな?