ピンポン!~Extreme ping pong~
卓球。それは上面は長さ2.74m、幅1.525m、地面より76cmの高さに位置する長方形のコートを舞台に、オレンジ若しくは白色の小さなボールを打ち合い戦うハイスピード球技。またの名をテーブルテニスという。テニスと名が付くように、実は卓球のルーツは紳士の嗜みテニスだ。たまに中国4000年の歴史アルと言う人がいるけど、その人は間違っているか嘘吐きかのどちらかだ。そもそもテニス自体が生まれたのは200年ほど前だから、それを踏まえても論破可能。覚えておくように。まぁ実際テニスのルーツを辿っていくとエジプト古代文明まで出てくるから、あながち4000年の歴史ってのも嘘ではないかも知れない。
なぜ温泉卓球という物が生まれたかは知らないが、湯船に使ってサッパリしても、もう一回汗をかいてまでも卓球にのめり込む人を見ると、温泉と相性が良いのか悪いのか分からなくなる。
「折角ですから、勝った方は負けた方になんでも命令できるってルールはどうでしょう? 燃えると思いますよ?」
「なんでもね……。上等じゃないの」
根暗なイメージを払拭しきれてない感は否めないが、老若男女誰でも気軽にできるスポーツであるため、今みたいに温泉に来た際には度々賭事の対象になったりもするとか。
「ゲームは11ポイント先取で行きますよ」
ジャンケンに勝利し、サーブ権を得る。
「いざ尋常に……、勝負っ!」
天下分け目の卓球対決が今火蓋をきって落とされた!!
0-0
「そうれっ!」
伝家の宝刀王子サーブを倉えっ!
「サァ!」
必殺の王子サーブをなんなくリターンされる。
「際どっ!!」
コートギリギリを攻めてくる。届くか!?
「クッ!」
何とか返すが高々とボールは天高く舞う。その力なき球をヤツは見逃さないっ!
「ハイッ!」
鷹が獲物を狙うように高くから振り下ろされたスマッシュに手も足もでず、先制点を与えてしまう。
「さぁ、続けましょう」
彼女の目は本気だ。本気で殺しにかかってる。
「ははっ、容赦ないなぁ……」
まだ僕のサービスは続く。揺さぶってみるか――
「ハイッ!」
「なっ!」 僕が打ったサービスは、小さく弾みネットギリギリに落ちる。これは予想外だったみたく、急いでネットに駆け寄り返すが、伊織の打球はネットに阻まれこちらの点数となる。
「まだゲームは始まったばかり……、勝った気になられちゃあ困るよ」
球宴はまだまだ続く……。
「させるかっ!!」
「甘いですよっ!!」
「まだまだ!」
「止まって見えますっ!!」
「ホアチャー!!」
「侵し掠めること火の如し!!」
「ゲイ、ボルグ!!」
「疾きこと風の如し!」
「ママー、あの人たち凄いー」
「シッ! 見ちゃいけません!!」
「おうおう! 映画の撮影か!?」
「あれ実写かよ……」
10-11
「ぜぇ……、ぜぇ……、やるな、おい……」
「はぁ……、はぁ……、先生こそ僕についてくるなんてやりますね……」
一進一退の戦いを繰り広げ、デュースにまでもつれ込む。ここからは先に2点先取した方が勝者になる。また、こっからは交互にサーブになる。さきほど伊織に凡ミスで点を許してしまい僕には後がない。こうなったら奥の手を使うか……。
「僕からだな、サァ!」
天井に届くぐらいに天高く投げて、高い打点から叩きつける。これを返せるかな!
「行かせない!」
台に傷が付くほどの強力なサーブを屈伸しつ全身のバネを使って、ジャンプして返す。
「クソッ!」
あまりにも高い角度で返される。届くかっ……。
「届けっ!」
ラケットを投げてピン球に当てる。運良く当たったピン球はふわふわとネットを超え、伊織が着陸する前にバウンドし、
「……マジですか」
流石にこれは予想外だったみたいだ。
11-11
「もう、さっきのは半分反則じゃないですか……、そう来るなら僕も秘技を魅せてあげましょう!」
伊織はコートの端っこに寄り、
「ハイッ!!」
斜めの線位へ平行に打ちつけ、壁にぶつける。そしてその反射でピン球がこちらに向かってくる。
「なんじゃそりゃあ!!」
物理法則やらを無視した超絶テクに呆気に取られてしまい、反応できずに点を許してしまう。
「さて、再びリーチです」
11-12
「まだゲームは終わっちゃぁないよ!!」
先ほどよりも高くピン球を上げ一点を狙い打つ。狙うは、
「そんなっ!」
さっき付けた傷だ! 小さなクレーターにピン球を当てることでイレギュラーバウンドをし、構えていた方向とは逆の方向にピン球は飛んでいく。
「届いて!」
伊織は飛びかかってピン球に食らいつく。伊織が返したピン球はふわふわと飛び上がり、絶好のスマッシュボールだ。
「これで決めるよっ!」
叩きつけるようにスマッシ……、
「やだっ、浴衣肌蹴ちゃった……」
さっきまで激しく動いていたんだ、今までそうならなかったのがおかしい――
コロンコロン……。
「あっ」
男の性に……、負けただと……。
――
「さぁ、僕の勝ちです。なに命令しようかなぁ」
敗者たる僕は正座して勝者の命令を待つ。今の僕を何かに例えるのなら、死刑を待つ死刑囚だ。そのままだけど。
「そうですね……、麻生伊織が命じます!!」
「明日一日私の恋人としてデートしましょう!!」