1年3組の仲間達 女子編~Introduction2~
今度は女子編です。こっちのほうがキャラ濃いかも。
ミスター平凡、元野球部のチャラ男、男の娘、伝説の不良、主夫学生……。今年の1年生はずいぶんと濃いキャラクターが多いですな……。こんなワンダーランドで僕は埋もれてしまわないでしょうか? でもまだ女子陣営もあるんだよなぁ。どうかこれ以上悩みの種が増えませんように……。闇属性ツン娘とブラコンマイオールドシスターでお腹いっぱいですよ。
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出席番号23番 小川優香
アホの子、以上。
へー。アホの子なんだ~。
ってちょっと待てやああああ!!! なんだこの内申はぁ!! 4文字で済ましやがったよ!? この子現代の情報社会において情報量が圧倒的に少なすぎるよ!! 先生ももっと他に書くことがあるでしょうがぁ!! 恨みでもあんのか!?
そしてうちの学校も良くこんな得体の知れない子入学させたなぁ!? 必死か!? なんやかんや言いつつ学校経営に必死なのか!?
はぁ、はぁ、はぁ……。ここまでシンプルかつ突っ込みどころ満載な内申書は始めてみたよ。何だろうね、せめて担任教師としては、ある程度事前情報を持った上で生徒と関わったほうが色々円滑に進むから名前を覚えるのを兼ねて予習しているんだけど……。この子先生にもいじめられていたのか? どうしよう……、ホントにどう接したらいいか分からないよう……。他に何かないのか……?
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出席番号27番 陣内郁恵
……こいつパスしていいかな? えっ? だめ? ったくせっかく人が犬に噛まれたことと思って忘れようとしていたのになんでまた出てきますかねぇ……。
ってうちの生徒だからか。はぁ……。
なんというかさ、この子の場合内申書とか中学時の評判見たところでファーストコンタクト時の衝撃を忘れられそうにないんだよね。仕方ないよね、うん。そりゃ出会いがしらにドロップキックされて、真昼間から厨二病発症しだすって人そうそういないと思うんだよね。よしんば片方だけはあっても両方セットでやらかしてくれる子って創作上でもなかなかいないんじゃないでしょうか? 出身は……、あらま都会っ子じゃないですか。親の都合でわざわざこんな片田舎まで来たということですか。ご苦労なことです。ってことは最近このあたりに引っ越してきたみたいだな。この前春休みというのにうちの制服を着ていたのは学校の下見でもしていたのかね? わざわざ制服に着替える必要も無い気がするけど。
でもまあ、教師として生徒には平等に接しないといけませんからね、一応内申表チェックしますか。え? 伊織は特別扱いしてないかって? やっぱりそうだよなぁ……、いくら伊織が僕になついているからって家に来るような関係はよろしくないよなぁ。少し考え直すか。
で内申書のほうはというと……?
授業中に当てられると急に「くそっ、右手がうずく」やら「奴らが来る! 皆逃げて!」といったり、授業のノートに意味の分からない方程式を書いたりと、思春期にありがちな自分は世界を変えることが出来る、この支配からの卒業というある意味今しか出来ないことを全力でしている。漫画に影響されやすいらしく、いきなりキャラが変わったりするという果てしなくとっつきにくい子。部活はZ機関とかいう意味の分からない団体を設立するが、彼女が卒業すると同時に廃部した。
尾○豊は少しばかり違う気がするけど……、ってあれか。混沌とか言うのも何かのアニメか漫画のキャラクターの一つか。そしてZ機関は……部員入んなかったんだね。合掌。てかZ機関って何すんだ!?
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出席番号30番 高梨紗枝
この子は職員内でも話題になったなぁ。崎校始まって以来二人目の入学試験全問正解という秀才ちゃんだ。崎校は圏内でもトップクラスの進学率を持つが、入学自体はそこまで難しくは無い。試験も基本的に基礎が出来ているかを問う問題が多いため、中学での授業内容を見直し、後は赤本さえしっかり解いていけば合格するのも難しくない。しかし、うちの試験には名物とも呼べる、難問がある。各教科に1問は非常に難しい問題が用意されているのだ。しかもどう考えても中学生向きじゃない、いや大人でも正解できるかどうか分からないレベルの問題だ。勿論、そんな超難問が出来る出来ないで合格不合格としてしまうのは非常に酷な話なので、実はうちの試験は各教科101点満点の5教科505点になっているのだ。まあ出来なくても合格する人はするし、解けたら解けたで教師陣から一目置かれるようになるという話。10年前に初めて全問正解者が出て以来、教師人も張り切ったため長らく出ていなかった(伊織ですら502点だった。それでも充分凄いと思う)が、ゆとり教育による学力低下が問題視される中、満点をたたき出した彼女は相当なものだ。
しかし、何故か彼女の内申書の成績評価のほとんどが4というのが気になる。授業にも毎回出席し、テストで高得点をたたき出しているにも拘らず、どういうことか5の評価は少ない。絵心が無い、実はジャイ○ンばりの音痴、っていうのなら副教科が普通なのは分かる。しかし、5教科でこれは一体……?ミスター平凡:伊藤君と同じ学校だったか。
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出席番号32番 茅原和音
キリが言っていた噂の天才ヴァイオリン少女だっけか。数々のコンクールで賞を総なめにしてきた音楽の申し子だってさ。親御さんの茅原泰造氏も有名な音楽家だ。音楽に明るくない僕ですら知っているぐらいなんだから、この子もその界隈では知らない人はいないのだろう。確かにキリが言うとおり、何で音楽科のある宮校に行かずにうちに来たんだろうな。確かにうちの吹奏学部は名門だけど、ご存知の通り吹奏楽にヴァイオリンはない。それにこれだけ凄けりゃウィーンやらパリやらどこにでも留学でもすれば良いし、某千○先輩みたく飛行機が怖いのならさっきも思ったが音楽科のある学校に行けばいいじゃないか。どこの学校も黙っちゃいないだろうに。すげーどうでもいいけど、茅原と○秋先輩って苗字が似ているよな。
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出席番号34番 南雲美桜
データがないからって10年前の内申書見せられても困るんだけどな……。まあ紹介するまでも無く、うちの姉です。
本来なら今度の誕生日で28歳なんだけど、タイムスリップというトンでも反則技をしやがったので、未だ15歳のままという非常にアンビリバブルな状態にいます。もうこの人がうちのクラスに来ることは覆しようの無い事実みたいですので、いかに僕らの秘密がばれないように頑張るかってのを考えとかないとな。なんたって姉さんの精神は10年前と同じままだ。伊織からある程度教えてもらったらしいが、信じられないことばかりだろう。例えば……
「こう君、こう君!! ドラ○もんの声がおかしいよ!? の○代ヴォイスじゃないよ!? ジャ○アンの目がキラキラしているよ!? こんなの私の知っているド○ちゃんじゃない!! の○代を返して!!」
それはの○代世代の人なら一度は通る道です。姉さん、そんなにの○代ヴォイスがいいならダン○ンロンパ貸してあげましょうか? の○代ヴォイスのドラ○もんに似た凶悪な何かに出会えますよ?
だったり、
「こう君、こう君!! たまたまポ○モンみたらサ○シのポ○モンピ○チュウ以外見たことないやつばっかなんだけど!? 後カ○ミとタ○シはどこ!?」
姉さんは金銀までしか知らないんでしょうけど今では5作目になりましたよ。息が長いですねぇ。後どうでもいいけど、最近の小学生ってタ○シがジムリーダーだったって言ったら驚かれることもあるみたいですよ?
だったり、
「こう君、こう君!! 歌番組見たらA○B48ってのと嵐が上位にいるけどモ○娘は!? Whit○berryは!?」
たしかに嵐が日本の音楽業界のトップになったのはここ最近だからなぁ。姉さんはバレーの歌ぐらいしか知らないっぽいし。後姉さん、whit○berryは解散しちゃったんだ。姉さん好きだったから酷な話かもしれないけど……。A○Bはモ○娘の進化版と思ってくれたらいいよ。つ○くが秋○康に変わった的な感じで捉えといて。
仕方が無いことだが、10年間でこれだけのギャップが生まれているんだ。政治だって総理がバンバン変わるし、ノストラダムスで浮ついていたのが今度はマヤ文明と来た。姉さんにとっての1瞬は僕たちにとっての10年間の歩みなんだから。どうか姉さんには今を受け入れて欲しい。わざわざ10年後に高校生活を後回しにしたんだ。楽しんでもらえないと僕も悲しいからな。
あ、過去に帰れるってのなら帰っていただいて結構です。てか帰れ! 屋上で一人寂しい思いをしている僕の手を引っ張ってやれ!!
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出席番号36番 二宮小町
二宮小町? 二宮産のお米か? でもこれまたどっかで聞いたことある名前だな……。何々、実家がボクシングクラブということが関係しているのか、性格は非常に男勝りで気が強く、なにより負けず嫌いである。小町という名前ながら大和撫子という言葉に程遠くどちらかというと大和魂という言葉のほうがしっくり来る漢女。
ボクシングジム!? ひょっとしてこの子二宮のおやっさんの子供か!? 二宮のおやっさんはこの町では知らない人はいないローカルスターであり、巷では現代版丹下○平ともいわれている鬼コーチだ。しかも小学校の学童保育の園長という肩書きもあり、ご町内の鍵っ子たちのお父さんという脅威のハイスペックおやっさんである。僕も姉も小さいころは二宮のおやっさんに色々遊んでもらった記憶がある。そっかそっか、小町ちゃんもうそんな歳なんだな。最初に会ったときはすっごい内気でずっとおやっさんの後ろに隠れてたからなかなか仲良くなれなかったなぁ。中学、高校、大学と歳を重ねるにつれて疎遠になっちゃたけど、まさか教師と生徒の関係で再会するとはなぁ。縁というのは面白いものだ。小町ちゃん僕のこと覚えているかな。
しかしまあお母さんに似てよかったな。中身はどうやらまんまおやっさん(♀)みたいだけど漢女っていうなら、男の娘代表の西邑君とは真逆の子だな。
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出席番号39番 町田渚
……、この子は何で証明写真に、
お人形さん持参なんでしょうか!?
何この子!? いっ○く堂!? シャッター越しに腹話術でもすんのか!? しかも腹話術人形どっかで見たことあるようなデザインなんですけどぉぉぉ!! N○K教育放送を思い出すそのデザインは、どっからどうみても……
エチケ○ト爺さんです。本当にありがとうございました。
ってなんでそこでエチケ○ト爺さん出すんだよ!? 普通は車掌出すだろ!! なんで敢えて爺さん出すのさ!!
なんか混沌さん以上に突っ込みどころ満載な子が来たな……。そしてよくこんな謎キャラを面接で通したなぁ! 一芸か!? 一芸入試なのか!?
何々、普段は非常に内気でおとなしく、授業に当てられても恥ずかしさの余り発言できなかったことも多々ある。その人見知りすぎる性格ゆえに友達は腹話術人形(何故か関西弁に似た何かを話す。口癖は「これ、エチケットやで」)だけであり、周囲からはマッチボッチステーションと呼ばれていた。人形を解して意思の疎通を取るが……。
やっぱりそうだったぁぁぁぁぁ!!!! エチケ○ト爺さんに似た何かを着けているとは思っていたけど、こいつはもう確信犯じゃねえか!! しかもなんだよ!! マッチボッチステーションって!!誰がうまいこと言えといったよ!! これ考えたやつ誰かしらねえけどぜってードヤ顔してるわ!! それと先生も止めたげてよ!! 後止めと言わんばかりの最後の文面!! 何引っ張ってんだよ!? そんな裏のありそうなゲームの登場人物の紹介みたいな説明は要らないよ!!ググレってか!? この子のこと知りたきゃネットの海に飛び込めってか!?
はぁ、はぁ、はぁ……今まさに僕のSUN値はマイナス方向に止まらないよぅ……。
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出席番号41番 善本幸子
ようやく最後の生徒だな……。なんというか、生徒の顔と名前を覚えるのも大変だね。去年はこんなこと無かったんだけどな……。それだけ強烈な生徒達がこの学び舎に集ったわけか、しかもうちのクラスに集中的に……。
えーと、この子は……、って暗ッ!! なんでかねえ、この子もだけど、
どうして証明写真に黒フードで写るかなぁぁぁぁぁぁ!!
何? 写真とる前まで誰か呪ってたの!? しかも写真を良く見ると……
変なの写ってるゥゥゥゥゥゥ!!
しかもピースしちゃってるし!? どんだけミーハーなの!? そしてよくもまあこんな狭い写真の中にやってきたなおい!! 写真の半分が謎の存在じゃん!!
最後の最後でとんでもないのが来ちまったな……。僕まで呪われんじゃねえのか?
えーと、性格は常に世紀末を迎えているレベルのネガティブ少女であり、常に黒いフードを被っており、制服の上からも漆黒のマントを着用。夏はとてもしんどそうだ。成績は良いのだが、恐ろしいほど後ろ向きな考えを持っており、なにかとこの世の全ての事象は全て自らのせいだと思い込んでいる。阪○が優勝を逃したのも自分のせい、総理大臣が毎年代わるのも自分のせい、先生の浮気が妻にばれたのも彼女のせいらしい。1週間に1回自殺を考えるが、自殺に関しても後ろ向きらしく今のところそんな気配はまったく無い。挙句の果てにネガティブオーラはこの世の者ではない者を呼び出してしまうらしく、先日は社会の授業中に、明智光秀が信長に土下座していたという目撃情報まである。内申書を書いた私もなんだか嫌な気分に……。浮気ばれたから教師辞めようかな……。
少なくとも浮気がばれたのは先生の自業自得です。生徒に罪を擦り付けないで下さい。一人ぐらいは霊感の強い子がいるとは思っていたけど、この子強いってレベルじゃないよね!! なんつうか絶○先生にいそうな子だな……。てか幽霊引き寄せるって凄くね? 是非とも世界史担当からするとカエサルとブルータスのやり取りを見てみたいかも。ジャパニーズ土下座してくれたらなおヨロシ。
ふぅ……、ようやく終わった。まさかここまで時間のかかる作業とは思わなかった。そして僕は不安になる。
こんなクラスで大丈夫か? 今から逃げ出したいぐらいに生徒達のキャラが濃すぎるんですけど……。だってさ、姉さんと混沌……、じゃなくて陣内だけでも一騎当千レベルの破壊力を持っていたのに、こんなのが41人もいたら僕は闇の世界に堕ちてしまいそうだ。翼をもがれた堕天使になっちゃうよ? 何? 駄天使の間違いだって? 知るか馬鹿。
姉さんにもらった時計を見る。6時47分、もう夕食の時間か。いつもはこんなに早く帰ってくることも無く、基本的に外食かカップ麺が主食だったりするのだが一応自炊は出来る。一人暮らし暦が長いのと、どっかの理事長がてんで料理が出来なかったこともあり、それなりに本格的なものも作れるようになった。しかしまあ、今日は姉さんがいることもあるし、もう料理する気力も無いから適当に外食で済ましてもらおうと思い、部屋を出た。するとなにやら美味しそうな匂いがしてくる。匂いの元を辿っていくと、
「あっ、こう君お疲れ様。そろそろ呼びに行こうかと思ってたところだったんだ」
見慣れないエプロンを着て、料理をテーブルの上におく姉さんがそこにいた。