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姉が過去からやってきた。  作者: ゴリヴォーグ
南雲先生の長い休暇
123/263

全国生徒会長研修~The Great Treasure Contest~

夏休み特別編です。RPG編のように別枠で始めていきます。

 日本一の女子高の生徒会長というカリスマお姉様明智萌と出会った僕らは、みんなが集まってるという娯楽室へと入る。

「お姉様!!」

「なっ!?」

 ドアを開けたと同時に小柄な女子がロケット頭突きをしてくる。

「ぐえっ!」

 もろにタックルを受けてしまった僕は、蛙がつぶれたような声を上げてしまう。

「萌お姉様、ひどいですわ! 私をおいてどこかへ行ってしまうなんて」

 ひどいのは君だよ……、いたっ! 踏まないで!!

「ちょっとアンタ下見なさい下!」

 見かねた理名ちゃんが怒り気味に言う。

「下?」

 タックル少女は下を見て、

「や、やあ……」


「ひぃぃぃ!! 男怖いよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

 ゲシゲシ踏みつけながら喚く。ちょ、ガチで死ぬ!

「助けヴぇ!」

 そこのコーヒー! 目があったなら助けて……。

「何をしているんだ、下らんな」

 外道だあああああああ!!

「優美! いい加減にしなさいっ!!」

 明智さんはスリッパを持って全力で叩く。

「あひぃいいいん!!」

 なぜか気持ち悪い気勢を上げながら恍惚の表情で倒れる。見た目が美少女でも、これはキモイ。

「大丈夫ですか?」

 どう見ても大丈夫じゃないけど、明智さんは心配そうに話しかける。

「大丈夫に見えるのなら眼科行ったほうがいいわよ」

 理名ちゃんはきつい物言いをする。

「ごめんなさい、私右目義眼なんです……」




 空気が死にました。




「まあ嘘ですけどね」


『嘘かいっ!!』

 室内にいる全員が突っ込みを入れる。

「まあ突っ込める余裕があるなら大丈夫でしょ! 優美には私からきつーーくお仕置きしておくわね」

 背筋が凍るような笑いをする。氷の微笑やぁ、天使のような魔王の笑顔やぁ……。

「茶番だな」

 コーヒーを飲んで無視を決め込んだ奴が偉そうに言う。こいつも生徒会長なのか?


「いいえ。彼は私の付き人のにしか過ぎません。偉そうな物言いするんじゃねえよ雑魚が」

 ニヒルコーヒーの後ろから英文をそのまま訳したような台詞が聞こえたと思うと、

 ドンッ!

『うわぁ……』

 ニヒルコーヒーは投げやりのように飛んで行き、壁に刺さってしまう。

「修理費は彼が払います」

 さきほどまでニヒコ(ニヒルコーヒーの略)がいた場所に一人の女の子が立っていた。

「私は新條ほのか(しんじょうほのか)といいます。キュリー学院の生徒会長をしています。好きな歌手はブルーハーツです」

 サイボーグみたいな無機質さを感じさせる。キュリー学院って確かノーベル化学賞受賞した柴野教授が設立したとか言う学校じゃないか。

「話に聞くとそこらの大学なんかよりも充実した研究が出来るみたいね」

「はい、私たちの使命は未来へつなぐ科学ですから」

 この子もそこで造られたんじゃないのか?

「私はサイボーグではありません。試験管ベイビーです」




 空気が死にました。




「嘘です。人の子です」


『嘘かよっ!!』

 室内にいる二名ほどを除いて突っ込みがハモル。まあ壁に埋まったりヘヴン状態の二人なので皆が突っ込んだに等しいんだけど……。


「うー、さっきから騒がしいのう、寝ている人を起こしちゃいかんって言うのは言葉が生まれる前からの不文律であるじゃろが……」

 この騒ぎの中で寝ていたらしい。

「あのー、君も会長?」

「礼儀がなっとらんのう。他人に名前を聞く前には自分から名乗るのが礼儀じゃろうが」

 おっとそれは失礼した。僕は

「ワシは加治原昴かじわらすばる大興工業高校だいこうこうぎょうこうこうの総代じゃ」

 先に自己紹介されてしまった。まあ礼儀正しいんだけど……。

「って総代?」

 今あまり聴きなれない言葉が聞こえたきがするんすけど……。

「総代は総代じゃ。早い話生徒会長と捉えてもらって構わぬ」

 っつーことはこの人も生徒会長ってことか。

「あれ? 付き人いないの?」

 理名ちゃんは周りを見渡し尋ねる。確かにそれらしき人はいないけど……。

「付き人? 不要じゃ。ワシの都合に他者を巻き込むのは気が進まんのでな」

 男らしいな、おい。てか付き人って何で要るんだ?

 考え込んでいるとドアが開く。


「おー、揃ってる揃ってる! 一番乗りだったから暇で暇で仕方なかったよー!」

「お兄ちゃん、一日前に来ても誰もいないよ……」

 ホスト風の優男と、車椅子に乗った儚げな少女が入ってくる。

「あー、ひょっとしてアウェイ? 自己紹介しなきゃだめな感じ? えーと、村崎高校むらさきこうこうから来ました村崎大和むらさきやまとでーす。会長してまーす。好きな特撮はウルトラセブンでーす! デュワッ!」

「その妹で保険委員の村崎飛鳥むらさきあすかです。好きな特撮は仮面ライダーBLACKです」

 村崎高校ってマジかよ……。

「どうしたの? こう先生」

 そっか、理名ちゃんハンガリーにいたから知らないのかもな。

「村崎高校って要ったら日本で一番賢い高校といわれてるんだ。毎年東大京大進学者を大量に輩出している名門の中の名門なんだ」


「まあご丁寧な解説どーも。でも経営者の息子の僕から言わせてもらうと、MITやハーバードっていう世界的にも優れた大学に行く生徒もいるんだぜ!」

 村崎って経営者の名前なのね。で、その子供たちということですね。とんでもない化け物がきたな……。

「そういうことです……、でもお兄ちゃんは学校で一番馬鹿なんです」

 妹ちゃんがぼそりと言う。

「そういうこと今言うことかなぁ!?」

「大和が会長しているのも親の七光りってみんな言ってるよ?」

 君もその恩恵受けてるんだよ? っていうのは無粋だよな……。

「七光りも財産なんだよっ!!」

 七光り肯定しちゃったよ!! こういう人が政治家やるから今の日本はだめなんだよね、うん。


「おや、皆様おそろいになったようですね」

 ターミネーター、じゃなくて鉈峰さんが部屋に入ってくる。

「ほー、ビリヤードあんじゃん! 後でやろうぜ!!」

「財前、私たちは遊びに来たのではないのだ。日本中の生徒会長の代表として呼ばれたのだぞ?」

「でも茜ちゃん水着選び楽しんでたじゃん」

「あ、あれは別だ馬鹿者!!」

「はいはい、そーでしたね」

 その後ろから男女ペアが入ってくる。

「みんなもう来てたの? ってことは俺ら最下位じゃん! 茜ちゃんが着ていく服選ぶのに1時間かけるからだかんね!!」

「だ、だからここで言うな! 失礼、お見苦しいものを見せてしまった。私は常盤茜ときわあかね幾波高校いくなみこうこうの会長をしている」

「んで俺が副会長兼幼馴染の財前健ざいぜんたける! よろしくな!」

 峰子さんを髣髴とさせるクールな会長と、キリみたいに飄々とした副会長のコンビか。


「さて、これで全員揃いましたね。それではこれより全国生徒会長研修を行います。まず始めるに当たって、委員長から今回の研修の説明をしていただきます」

 鉈峰さんはPCを取り出しスイッチを入れる。画面には荒い砂嵐が映っているが、やがてその中から人の姿が浮かび上がってくる。

『おはよう諸君、いやこんにちわの方が正しいかな? 私はクリフト。全国生徒会研修の最終責任者だ』


『……』


『どうした、元気がないぞ? こんにちわと言ったらこんにちわと言うのがマナーだ。愉快な仲間がポポポポーンと出来るのだぞ? はい、もう一回。こんにちわ』


『なんだ? 私の顔に何かついているのか?』


「あのー、良いっすか?」


『質問は挙手をしてからしたまえ、南雲先生。生徒にいつも言っていることではないか?』

 めんどくさいなこの人……。

「じゃあはい」


『なんだ?』


「なんでパンダなんっすか?」

 ほかの全員もうなづく。パンダ、大熊猫、白と黒で構成された熊、実は尻尾が白い動物、まあどれでもいいんだけど、

「パンダのキグルミ着る必要あるんすか?」

 そう。PCに映ったのは、パンダなのだ。しかもハンドメイド感バリバリの仕上がりのわるい出来損ないだ。

『パンダ? 何を言っているかさっぱり分からないな。もう一度言う、わたしはクリフトだ』

 いっぺん鏡見てくんねえかなぁ!?

「で、クリフトさんとやら。私たちをこんな島に集めて何をしようというのだ?」

 常盤さんが皆が気になってること第2位を聞いてくれた。ちなみに、第1位はさっき僕が聞きました。

『研修だ』

 いや、その内容を知りたいんですけど……。

「それは皆分かっとるんじゃがのう?」

「はい、私たちは研修という名目でこの島に来ました」

 そんな答えで納得するわけがなく、口々に文句を言う。

『まあ急いでも何もでない。しかしそんなに知りたいのなら教えてやろう。君、黒板を持ってきてくれ』

 パンダは誰かに指示を飛ばす。すると黒子のカッコをした人が黒板を持ってくる。そしてパンダは黒板に……、

『……チョーク持てない』

「だろうと思ったよ!!」

 ベタなネタを見せたパンダは、

『ちょっと失礼』

 そう言って、左手を取り外し、

「って取るんかいっ!!」

 キグルミからニョキっと出ている人間の手が非常にシュールだ。これ、笑ってはいけない研修旅行なの?


『えー、これより皆さんには殺し合いをしてもらいます』


「やると思ったよ!!」

 一度は黒板にやりたくなるネタ1位(南雲航個人的ランキング)のBRごっこをしだす。

『冗談だと思うのか? ターミネーター、例のものを彼らへ』

 公式でターミネーターになってるよ!! てか例のものってなんだ? まさか……、ねぇ。僕立場的にビートたけしなんだけどな。

「お持ちしました、皆様これを……」

 ターミネーターは皆に拳銃を……、何てことはなく、紙を配りだす。これは……、地図?

『そう、これはこの島の地図だ。これから一週間君たちには宝探しをしてもらう。この島に隠された財宝を探すのだ、どうだ? わくわくしてこないか?』


『……』


 開いた、口が、塞がらないっ!!


『なんでやねええええええええええええええええええええええん!!』



「研修どこ行ったのよ!?」

「理解できません、馬鹿ですか? 死にますか?」

「ちょーと理解に苦しむのう……」

「宝探しって……ええ!?」

「説明してもらおうか、私たちが納得いく説明をな」

 五人の生徒会長はアンビリバブルって感じだ。まあ普通そうだよな、普通は。

 ああ、トンでも現象に慣れてしまってこの程度ではいまいち驚けない自分が嫌だ……。

「財宝ってさ、いくらぐらいになるの?」

 そしてここにもう一人、その程度の展開じゃ驚けなくなった人が一人。

『そうだな……、金塊が眠っていると聞くからな……』

「じゃあ貰っちゃって良いわけね」


『ああ、もし手に入れることが出来るのであれば、だがな』

 理名ちゃんはそれを聞くと、

「面白い!! やってやろうじゃない……、金塊を持って帰って生徒会の会計の足しにするわよ!!」

 宝探し研修に参加する旨を宣言した。

『香取会長はやる気なようだが、皆様はどうなさるおつもりで?』


「どーせ帰っても暇だしね、バカンスってのも悪かないわね」

「私はお姉さまが要れば何でも構わないです!!」


「ふっ、下らん。好きにしろ」

「あなたはいい加減立場というものを理解してください、天辺ハゲが」


「まあいいじゃろう。金が入るってのなら話は別じゃい」


「財宝もって帰ったら、僕ってヒーロー!?」

「どこからその自信が出てくるのよ……」


「ま、研修なんてかったるいもん無いんなら何でも良いけどさ!」

「む、財前が言うのなら付き合ってやろう。何かあったら親御さんに合わせる顔が無いからな」

 どうやら全員参加するようだ。てかこれなら最初から研修じゃなくて宝探しツアーにすりゃあ良かったんじゃなかろうか?

『ほう、全員参加ということですな? それでは細かいルールを説明します。まず時間ですが、明日の午前10時から六日目の正午までとします。流石に今日は船旅で疲れたでしょう、各自部屋にてゆっくり休んでください。次に第二のルールですが、起床と朝食と夕食と消灯の時間は守っていただきたい。生徒会長たるもの規律正しい暮らしを保っていただきたいですからね。詳しくは各部屋にタイムスケジュールを張っておきます。そして最後に、当然ですが犯罪行為をしないでいただきたい。無人島に閉じ込められたからといって殺人事件が起きられるのも迷惑な話ですので……、さて何か質問はありますかな?』

 特に手が挙がらない。

『まあいいでしょう。質問があるときはこのPCに打っていただくようお願いしたい。最後にだが、このPCは最後まで再生すると自動的に……』

 どっかで見たことある流れだぞ……。

『爆発する……わけが無い。当然だが、これはリアルタイムで配信しているのだからな。それでは皆のけんと「たかしー、ご飯よー」あー、今行きまーす!! 健闘を祈っている』

 そういってPCは動きを止めた。

「たかし何やってんだよ……」

 本当に財宝あんのか? 一気に信憑性が薄れてきた。

姉が過去からやってきたけど生徒会長とお宝探ししちゃった。に続きます。

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