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姉が過去からやってきた。  作者: ゴリヴォーグ
どたばた☆デイズ
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お約束とも言えるライトノベル的展開~Welcome to the non-daily!!~

 6月某日


「ハァ……、ハァ……、ハァ……」

 どうしてこうなった?

『キヒヒッ!! 逃げても無駄ですよ!!』

「ちくしょう! 俺が何をしたってんだ?」

『さあ、どこまで逃げ切りますかっ!?』

 これまで普通の中の普通の田中太郎と呼ばれていたのも昨日のこと、高校に入ってから災難続きだ!! 委員長にさせられるわ、担任に目を付けられるわ、不良に殴られるわ挙げ句の果てには追われるなんて……、神様お願いだから俺の日常を返してくれっ! 俺はこんな目に遭うために高校に入ったんじゃねえ!!

「ハァ……、行き止まりッ!?」

『どうやらここまでのようですねぇ。人間風情が手間をかけさせる』

 俺を追ってきた男は、背中からコウモリのようなハネをはやしこちらを睨む。口元には鋭くとがったキバ。これじゃあまるで……。

「あ、あんた吸血鬼かっ!?」

『左様。どのように聞いているかは存じませんが、まあそう言うことにしておきましょう』

「きゅ、吸血鬼なら俺の血なんか吸ってもおいしくないだろっ!!」

 吸血鬼は女性の血を好むのじゃないのか?

『キヒヒッ!! 勝手なイメージと評価しましょう。確かにそういうものが大多数ですが、』


『私は男色家ですのでぇ、キヒヒッ!!』

 さ、最悪だ……。人生の最後を男色ヴァンパイアに看取られるなんて……。

「く、来るなぁぁぁ! そうだ! 今日俺餃子食ったんだ! 臭いぞ! ニンニク苦手なんだろっ!?」

 これなら奴も……。

『キヒヒッ! そんな幻想あるわけ無いでしょうが。まさか吸血鬼がニンニクと十字架に弱いと未だに思っているのですか? キヒヒッ! 滑稽滑稽!! 今日日吸血鬼だって餃子ぐらい食べますよ。十字架だって何百年も見せられたら慣れますよ!』

 つ、詰んでもうたぁ……。終わりだ、俺の人生終わりだ……。

『それでは……、いっただっきま~すっ!』

 サヨナラ、父さん母さん妹たちよ。さらば高校生活。南雲さん、可愛かったなぁ……。



――



「こ、ここは?」

 知らない天井。清潔な一面白い世界、ははっ。天国って病室みたいだなぁ。

「あっ! 目が覚めましたね!」

 天使がナースさんったあ洒落てるなぁ。ナイチンゲールってか? 白衣の天使、悪くない。

「おはよう少年。いや、こんにちはっていった方がいいかな」

 天パの男が出てくる。頭がくりくりっとしてらぁ。

「どこっすかここ? 天国にしちゃ狭いっすけど」

「何言っとるんだ君は。頭打った?」

 真顔で返される。

「いや、大丈夫ですよっ! 名前は伊藤拓也、御崎原高校一年四組、出席番号一番八月生まれの16歳っ!」

「いや、言われても知らんがな。それと君が路地裏で気を失っとる所を彼らが見つけてくれたんだ。あんな所で寝ていても寒いだけだろうに、何をしてたんだ?」

 どうやら誰かが助けてくれたらしい。

「全く、あんな所でホイホイ寝ていたら危ないじゃないか」

 ウホッ! 良い男……、じゃなくて見るからにそっち系の兄さん達がEXILEみたいに回っている。はっきり言おう、有害だっ!!

「はっ! アイツは!?」

 いい男達のダンスを見て、あの吸血鬼を思い出す!

「すいません! あそこには俺以外誰もいませんでしたか?」

「いや、君しかいなかったぞ。それよりも、やらないか?」

「やりません!」

 いったい何が起きたんだ? あの時俺は死を意識した。しかし実際はどうだ? 白衣を身にまとった天使とお医者さん、まんま病院だ。どうやら命は助かったらしい。

「まぁ今日一日はゆっくりしなさい。学校にはこちらから伝えてある」

 よく分からないうちに学校を欠席してしまった。あまりラッキーと思えないのは、昨日のせいか?



――



「おっ、思ったより元気そうじゃん!」

「伊藤君大丈夫?」

 夕方ぐらいに、担任の先生と女子の委員長が病室にやってきた。

「先生と南雲さん?」

 あ、そういや親戚関係なんだっけ。その割には南雲さんが先生に向ける感情は親愛の情ってレベルじゃないよな。羨ましい、リア充死ねっ!



「拓也っ!」

「兄貴!」

「兄さん!」


「おっ? なんだ新キャラか?」

「こう君、メタワードだよそれ」

 病室のドアを開け、3人の女子が入ってくる。

「倒れたって聞いて心配してきたけど、拓也元気そうね。仮病でも使った?」

 ニシシと笑いながら言うコイツは、一ノ瀬亜矢いちのせあや。まあ俗に言う幼なじみだ。同じ学校だが、クラスが違うので、あまり一緒になることがなかったりする。

「仮病じゃねえよっ!」

「どうだかぁー? あっ先生もスミマセン。こんな馬鹿のためにわざわざ」

 一言二言余計なんだよ。

「うわぁ……、ラノベやぁ、ラノベ主人公がおるぞぅ……」

「だからメタワードは止めなって。こんな馬鹿でもクラスメイトだしね。こ……、先生もそんなところじゃない?」

 南雲さん、フォローしてくれても、フォローになってないよね!?

「あ、ああ。こんな大馬鹿でも僕のクラスの生徒だかんな、まあ職員会議サボれたから良いんだけど」

 この人はダメだ。しかも勝手に大つけてるし! フールがドフールになっちやった!

「親が兄貴を見てこいっていうから仕方なく来たのよ! 感謝しなさいよねっ!」

「とかいって学校行かずに病院行こうとしたの誰だっけ?」

「ばっ、ばっかじゃないのー!!」

 このツンツンしているのは俺の妹の伊藤小花いとうこはな、となりでニコニコしているのがその双子の姉の伊藤小鳥いとうことり。わざわざ病室まで来てくれたみたいだ。


「ラノベだね」

「そうだね、ラノベだね。思わず私もメタっちゃったよ」

「見方を変えたら僕らわき役だもんな」

「そうだね。一応主役なのにね」


 何を言ってるんだ?




――



「まあこの子らは僕が送るよ」

 病室というのにぎゃあぎゃあ騒がしかった。なんであんなにリンゴを切るのに争ったかが分からない。リンゴフェア? 面会の時間も終わるので、南雲先生が車で送ってくれるらしい。俺はもう一日居なきゃならんみたいだけど……。

「ははっ、スミマセンね……」

 でも昨日のことを思うと、正しい選択だろう。結局昨日のあれは何だったんだ?


「あ、そうそう。今日のHRで伝えたんだけど、明日から転校生くるんだわ。何でこんな時期に来るかは知らないけど、覚悟しといた方がいいよ?」

「どうして?」

 南雲先生は困ったように笑うと、

「季節はずれの転校生は、間違いなく何かに巻き込まれるフラグだぞ? 今日しゃべったけど、如何にも何かありますって感じだったし」


 どういうこっちゃ。

「ジョーダンだよジョーダン。じゃ、ゆっくり休めよ」

 手を振って先生は病室を出て行く。

「転校生ね、どんな子だろ?」



 でもその時の俺は、理解していなかった。その冗談がマジになるなんて。

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