表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
姉が過去からやってきた。  作者: ゴリヴォーグ
時には昔の話を~伊織編~
103/263

予期せぬ再会~Bartender~

 それは職員会議にて発表された。

「急な話だが、養護教諭の菅野先生が産休に入ることになってな」

 産休? 初耳だぞ。

「まあそうだろうな。なんせ言うのを忘れていた」

 漫画とか吉本みたいにずっこける。

「まあ過ぎたことをああこう言わないでくれ。でだ、産休の間保健室を空けるわけにもいかんのでな、臨時で入っていただく先生を紹介しよう。この学校のOGだから知っているかもしれないが……、入ってくれたまえ」

 理事長は高級レストランみたいに手を叩いて呼ぶ。叩く必要ないよな?

「紹介しよう。この度菅野先生の代わりに保健室の番人となって貰う、」

「碓氷杏子です。よろしくお願いします!」

「碓氷さん!?」

『ただもう少し南雲君とは付き合うことになりそうだな……って』

 ……、あーそういうことね。この前の彼女の言葉の意味をようやく理解する。

「在学中は確か南雲先生同じクラスだったな。旧友の方が聞きやすいだろう。何かあれば南雲先生に聞いてくれ。私からは以上だが、先生がたから他に何かあるか?」

 特にあがらない。まあ彼氏がいるとか聞くのはお馬鹿さんは高校生ぐらいまでだろう。

「なあ南雲、碓氷先生って彼氏いるのかな?」

 訂正、隣にもいたわ。満24歳のお馬鹿さんが。



――



「南雲君、びっくりした?」


「まあね。でも養護教諭になっていたなんて初耳だよ」 確か看護師になるって言ってた気がするけど……。

「あ、ああそれね。看護師の資格を取るため看護学科のある大学に入ったんだけど、養護教諭の免許もついでに取ったんだ。まあ一年ぐらい病院で働いてたんだけど、理事長先生に臨時教諭として連れてこられたんだ」

 峰子さん、それはアウトじゃないか?

「強引にされなかった? 判子無理矢理押されたとか、家族を人質にとられたとか……」

「もう、そんなんじゃないよ! 色々あって病院を辞めたの。だから理事長先生の誘いは有り難かったなぁ。再就職があっさり決まったんだもの」

 前に家事手伝いと言っていたは、そういう事情だったのか。

「そういうわけだから、南雲君よろしくね」「ああ、こっちこそ。けど何か変な感じだな、クラスの友人と同じ職場なんて」

 世の中は狭いというか何というか。



――



「橘先生の時みたいに人が殺到するかと思ったけどそうでもなかったね。あーあ、私魅力ないからなぁ……」

 幸せが逃げちゃうような溜め息をつきながら言う。いやいや、ネガティブになりなさんな。むしろあれが異常だったんだよ。

「橘先生はある意味特別だったからね。そもそも対象がおかしいよ?」

 仮病が来すぎたせいで、本当に保健室で休みたい人が休めないというある種の悪循環を生み出した魔性の女(本人無自覚)だったんだからさ。

「モスコミュールとジンジャーエールをお持ちしました」

 僕達は今バー飲んでいる。前回は別の女性と来たので、マスターがこちらを面白そうに見ている。

「ジンジャーエールって……」

 白い目で僕を見る。いやいや、ここバーだしさ、生中とか言えないでしょ? 飲めないけど……。

「仕方ないだろ。僕は酒に弱いんだ。周りに迷惑をかけないために敢えてジンジャーエールを飲んでるんだ。」

 ドヤッ。

「自慢気に言うことかな、それ……。ま、良いけどね。ねえ乾杯しようよ、乾杯」

「良いけど、え~と、」

「再会と再就職を祝って、」

「「「乾杯!」」」


「はぁ! 仕事終わりにキンキンに冷えたジンジャーエール、たまりませんっ!」

「ビールじゃないんだから、もう」

「そうだぞ南雲。それに、仕事終わりはこうやって優雅にカクテルに酔うのが良いんだよ」

「お前自分に酔ってるよ」


「「「ハッハッハッハ」」」




「って冷静に考えたらお前何で混じってるの!? しかも至極自然に!」

 今思えば、僕は碓氷さんと違う人間と話していた。貴様はまさかっ!

「俺は別にやましいものはないぞ。それに、ここは俺の行きつけの店でもあるんだよ。ねえマスター!」

「誰だ?」

 行きつけ(笑)。

「俺っすよ、俺っ! ここでバイトしてた桐村ですっ! 音大の桐村です!」

「のきりむら? 知らないな」

 行きつけ(爆)。でもバイトは別に行きつけでもなんでも無くね?

「きーりーむーら!!」

「あー、煩い! 一回言われたら分かるっての。ケンジだろ? 覚えているよ、トムクルーズに憧れて面接に来た桐村賢治」

 動機が映画っていうのもなんつうかあれだよな……。

「そうですよ、そう! マスター、いつもの!!」

 バーにあまり行かないから知らないけど、あんな居酒屋みたいなノリで大丈夫なのかな?



――



「碓氷先生、南雲の高校時代ってどんなのでした?」

「余計なこと聞くなよ! 碓氷さんも無視して良いから、スルー推奨だよ」

 強引に僕と碓氷さんの間を陣取り、根ほり葉ほり聞いてくる。キリって地味目の清楚な子が好みなのか?

「えっと、南雲君は良くも悪くも普通でしたよ。ただ調子に乗りやすい性格で、ちょくちょく痛い目に遭ってたかな? それと結構女の子に人気あったかな。童顔だから特にお姉さん受けがよかったんじゃないかな」

 お姉さん受け、ねぇ……。半分以上正しいな、うん。

「んだよそん時からモテやがってたか。死ね、今すぐお手軽に豆腐の角で死ね」

 お手軽に見えて、全然手軽じゃないよな。まず豆腐の角って時点で不可能じゃんか。

「でも弟みたいな感じだったかも。だから桐村先生が荒ぶるほどでもないです、ドゥドゥ……」

 碓氷さんが今にもナイフを投げそうな気迫を持つキリを犬を宥めるようにフォローしてくれる。キリは結局なにしにきたんだ?


「いや、俺も混ぜて欲しかった」


「悪いな桐村。この飲み会二人用なんだ」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ