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夏、俺は魔法使いに恋をした  作者: クスノキ
第3章 初夏、俺は魔法使いを失った。
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第25話 手のひらの上の幸福論①

「えっ! 陽作の探し人見つかったのか!?」

「あぁ。会えたよ」


 ご主人様であるあきらの言いつけ通り、陽作は次の日学校に来ていた。席に座って、静かに教師の話を聞く時間が続く。一日しか休んでいないはずなのに、懐かしさを覚えた。

 連休間近ということもあって、学校全体が浮ついているようだった。

 教室の机をくっつけて祐介と二人で向かい合って食べる。シチュエーションは昨夜と同じだが、まったくどきどきしない。


 いつもの、という安心感があるだけだ。

 そういえば、あきらはちゃんと食事をとっているだろうか。今日一日分の作り置きくらいはまだ残っているはずだけど。


「俺の師匠が、見たことあるかもって言っててさ。実はそれで昨日学校休んでた」

 祐介は陽作のためにたくさんの情報を集めてくれた。感謝を伝える意味でも、言えることは言っておきたかった。


「そうだったのか!」

「それで師匠に聞いた場所にいって」

「おう」


「あきらがいたから話しかけて」

「おう」


「いろいろあって、あきらと自己紹介して」

「おう」


「んで、あきらの家に行って」

「おう?」


「ひどい汚部屋だったから、掃除と料理をした」

「お、おう」


「で、最後に連絡先交換して家に帰った」

「……陽作よ」

 ポン、と祐介は陽作の肩に手を置いた。


「どうした?」

「お前とそのあきらちゃん? って、会うのは二度目だったんだよな」

「そうだな」

 ぎりぎりと、肩に乗せられた手に力が込められていく。

 が、残念なことに祐介は非力だ。全く痛くない。


「それで? 家に行って、料理して、連絡先を交換したと」

「……そうなるな。俺も、おかしな話だとは思うんだが」

「え、お前、そのあきらちゃんと付き合ってんの?」

「いや付き合ってはいないが」

 ご主人様と従者の関係である、とは口が裂けても言えない。


「付き合ってはいないが、なんというかもっとこう、逆らえない関係というか」

「どういうことだよ! もう俺わけわかんないよ! あきらかに付き合ってる距離感だろうが! あきらだけに!」

 バン! と祐介は、陽作をつかんでいた手で机を思い切りたたいた。教室にいた生徒たちの視線が、一斉に陽作たちの方へ向く。


「こんなん、こんなん付き合ってる二人の距離感やん。俺が由乃とその距離感になるまでに、どれだけ苦労したのか知らないだろ……」

「祐介が教えてくれないからだろ」

「わかっとるわい!」

 机につっぷして、ぎゃいぎゃい叫ぶ。


「でもよかったよ。陽作がその人に出会えて」

 頭は机にくっつけたまま。目線だけ上げる。


「結局、俺は役立たずかぁ……陽作の師匠さんの情報が決定打になったんだろ」

「いや、祐介の情報のおかげでしぼりこめたわけでだし、役立たずってわけじゃないぞ」

「悔しい」

「悔しいって」

「情報屋の名折れだ」

 がばっと、祐介は顔を上げる。


「次はもっといい情報集められるように、俺頑張るから」

 冗談めかしているが、祐介は本気でショックを受けているようだった。祐介は、陽作のためとなると暴走しがちなくせがある。


「無理すんなよ」

「無理はしてないさ。半分は趣味みたいなもんだし」

 あ、そうだと祐介は話を変える。


「情報屋トーク!」

「いきなりなんだよ」

「もしかすると今は聞きたくないかもしれないけどさ、最近、上沼の様子がおかしいんだって」


「……光瑠が、か」

「そうそう。昨日も珍しく休んでいたし、ぼーっとしていること増えたって。話しかけても反応が返ってくるまで時間がかかったりとかさ」

 昨日、光瑠は陽作の家の前まで来ていた。あのあと、結局休んだのか。


「陽作と別れてから、人前では気丈にふるまってたけど、やっぱりこたえてるみたいだな。本人はばれないようにしているみたいだけど、由乃も心配してた」

「そっか」

「しばらくは上沼と出会わないようにした方がいいだろうな。お互いのために」

「そうする」


 もとより、今の陽作は光瑠と積極的に関わりにいくつもりはない。

 あの日、陽作は光瑠にきっぱりと別れを告げたはずだ。


「おう。それでさ、こっからは、俺のわがままなんだけど、俺さ、そのあきらちゃんに会ってみたい」

「あきらに?」

 祐介はうなずく。


「あの上沼と付き合っていても、心が動かなかった陽作の心を一発で動かしたっていう女の子に会ってみたい。もちろん、陽作やあきらちゃんが会いたくないっていうのなら、無理にとは言わないけど」

「俺は別に構わないけど」


 あきらが果たしてうなずくだろうか。魔法使いとしての責務に真剣なあのあきらが。

「あんまり期待しないでくれ。結構気難しいところもあるみたいだし」

「もちろん、もちろん。ところで陽作、お前気付いているか?」

「何にだよ」


 祐介はにやりと笑って言った。

「あきらちゃんのこと話しているとき、陽作ずっとにやけてるぞ」


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