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コメディー短編(現代社会)

ジャンルごとにペンネームを変える理由 ~ウンコを添えて~

作者: 多田 笑

多田ただ えみです。

新年早々、お下品でごめんなさい。


少しでも笑っていただけたら嬉しいです。

 俺は、とある小説投稿サイトに『大田笑おおたわら』というペンネームで作品を投稿している。


 コメディー作家として、そこそこ人気の俺。代表作は『ウンコ大爆発』だ。


 内容は、シリアスな物語の最後に、必ずウンコが爆発するという潔い作品である。



 ──ウンコ大爆発 第一話──


 薄暗い取調室。

 刑事は椅子に深く腰掛け、真正面の男をじっと見つめた。


「もう終わりにしよう。あんた一人で抱えるには、重すぎるだろ」


 男は沈黙を守る。だが刑事の声は震えていた。


「被害者の母親、まだ毎日駅のベンチで帰りを待ってるんだ。『きっと帰ってくる』って……」


 男の肩がわずかに揺れる。


「お願いだ。真実を言ってくれ。あんたのためにも、あの人のためにも」


 刑事の目に涙が浮かび、ぽたりと机に落ちた瞬間、男が堰を切ったように話し出した。


「……俺がやった。俺だ……もう、嘘はつけない」


 刑事は安堵の息を吐き、何気なく部屋の隅へ目を向けた。


 そこに――ウンコがあった。

 漫画のように見事な“とぐろ”を巻き、さらに爆竹が豪快に刺さっている。


(な、なんだあれは……!?)


 刑事は後輩に調べさせようとした――その時。


「あれ? 停電ですね。でも大丈夫です。こういう時のために、ろうそく持ち歩いてるんですよ!」


 後輩は誇らしげに火をつけ――


「アチッ!」


 見事に落とした。


(ま、まずい――!!)


 だが、すでに遅い。


 パンッ、パンッ!

 パンッ! パンッ、パンッ!!


 ウンコが、大爆発した。



 ──ウンコ大爆発 第八十二話──


 魔王の間は、静まり返っていた。

 仲間たちは倒れ、剣も盾も砕け散っている。勇者自身もまた床に膝をつき、口の端から血を滴らせていた。


「終わりだ、勇者よ」


 玉座から見下ろす魔王の声は、勝利を疑わぬ低い響きだった。


 勇者には、もはや笑う力すら残っていない。


(……ここまで、か)


 視界がかすむ中、勇者はどうでもいいものを見つける。


 魔王の間の一角。

 不自然なほど立派に“とぐろ”を巻いたウンコ。

 そして、誇らしげに突き刺さる一本のダイナマイト。


(……こんな緊迫した場面なのに、なぜ……?)


 意識が闇に沈みかけた、その時。


『勇者よ、諦めてはいけません』


 澄んだ声が、頭の奥に直接響く。


『あなたが負ければ、この世界は滅びます』


 女神の声だった。


(この世界……。家族も……今まで出会った人たちも……。俺が負ければ、みんな……みんな、消えてしまう……)


「……そうだ」


 勇者はかすれた声で呟き、胸の奥に小さな火を灯す。


「俺はどうなってもいい!! この世界を、必ず──」


 ごう、と音を立てて、生命の炎が燃え上がった。


「俺が守る!!」


 一閃。


「グギャァァァ!!」


 魔王は断末魔とともに消滅した。


 勇者は立ったまま、深く息をつく。


 ――しかし。


 勇者は、はっと気づく。


(生命の……“炎”だと……?)


 燃え盛る生命の炎が、ふらりと揺れ――

 なぜか、ダイナマイトの導火線へ。


 チリッ。


(……あ)


 勇者は逃げ出そうとしたが、もう遅い。


 ドゴォォォォン!!!!


 ウンコが、大爆発した。



 こうして、コメディー作家として人気になった俺だが、以前からずっと書いてみたいジャンルがあった。


 それは、人気ジャンル――異世界恋愛。


 だが問題がある。

 俺が『大田笑』の名前で作品を投稿すれば、読者の皆様は間違いなくウンコが大爆発することを期待してしまうだろう……。


 しかし、このサイトには作品ごとにペンネームを変えられる機能がある。


 そう、あの人気マンガ家のように、

「え? これって、あの人の作品なの?」

 と読者を驚かせたいのだ。


 フッフッフ……。


 作品はすでに完成している。

 そして、異世界恋愛ジャンル用のペンネームも決めた。


 その名は――『喜多きだ こい』。


 作品にも自信がある。

 じっくりと、心ゆくまで読むが良い!!


 俺は、静かに――『投稿』をクリックした。



 数時間後。


 俺はポイントとPVをチェックした。


 ポイントは、まあまあ。

 だが、PVは――普段の五倍くらいあった。


 さ、さすがやで~!

 さすがは人気ジャンル。

 すごすぎ~!!


 さらに、感想も五件ついている。

 俺はワクワクしながら、それを開いた。


 しかし――


『あれ? ウンコ爆発しないんですか?』

『ウンコ爆発しなかったので、☆1です』

『うーん、やっぱり期待しちゃいますよ。ウンコ大爆発』


 ……え?

 どういうこと……?


 作者名を変えてるのに、なんで分かるの?

 読者の皆さん、まさか……エスパー!?


 だが、次の感想を読んで、すべてを理解した。


『お気に入りに登録していると、ユーザー名で新着一覧に載るので、大田笑さんだって分かりました。ウンコ爆発しないと物足りないです』


 な、な、なんだって~!!


 これじゃあ、ペンネームを変えても意味がない!?


 『ウンコ大爆発』のイメージは、一生ぬぐえないのか……。


 俺は、諦めにも似た感情を抱いた。


 ……いや。

 まだだ。まだ一件、感想が残っている。


『誰かと思って過去作品を見に行ったら、大田笑さんだったんですね。僕、“ウンコ大爆発”大好きなんです』


 俺は、膝から崩れ落ちた。

誰も作品についての感想を書いてないや~ん!!


最後までお読みいただきありがとうございます。

誤字・脱字、誤用などあれば、誤字報告いただけると幸いです。

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― 新着の感想 ―
ペンネームを変える理由はそうだったんですね…いや、バレてるやないかーい\(^o^)/♪笑 あ、この作中のようなオチの話を、どこかで見たことがあるような気がしたんですよ…思い返してみると、コロコロコミ…
わかります、大田笑先生の作品はやはりウ○コ大爆発が素晴らしいですから。 先生の苦悩驚きました。 そんな先生の心の内が知れて大変嬉しいです。 ……ってエッセイじゃない……だと!? と、読者風にノってみ…
あけましておめでとうございます 作品を拝読して、常日頃から「これはコメディですか?コメディですよね?」と詰め寄るようなコメントを残してしまう自分としては、反省する必要があるかなと思う次第です 「笑…
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