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スキキライ死んデレら  作者: OBOn


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1/6

私の呪いを

あれは9才の時のことだ。

「にゃあにゃあにゃにゃにゃ♪」

「にゃあ」

私の声に呼応するように、ぽんちゃんが鳴いた。


ぽんちゃんというのは、お母さんとお父さんが、私にいつでもお話ができるお友達がいた方がいいだろうということで、私が2才の時からウチで飼っている私の愛猫であった。


「にゃんにゃにゃにゃ♪あぁ…もぅ…ぽんちゃんは可愛いにゃあ」

「にゃあ」

「なになに?『ありがとう』って?あぁ…もう…本当に可愛いにゃあぁ…」

私はぽんちゃんを抱きしめた。


「もぅ…大好きだよぽんちゃん」


次の瞬間、私は空気を抱きしめていることに気づいた。

さっきまで抱きしめていたぽんちゃんがいなくなっていたのだ。

「あれ…ぽんちゃん?どこいった?おーい…ぽんちゃーん…いるなら返事してー…」

返事は返ってこなかった。

「まったく…どこにいったんだよぉ…」

私はぽんちゃんを家中走って探し回った。

だが、ぽんちゃんは見つからなかった。

もう、ぽんちゃんはどこかにいってしまったのではないだろうか。

もう、ぽんちゃんとは会えないのではないだろうか。

頭の中でそんな考えばかりがぐるぐると巡り、私は気づくと、泣いていた。

私はお父さんとお母さんに助けを求めた。

「ねぇ、お父さんお母さんぽんちゃんがいないの…!一緒に探して!」

だが、泣き喚いて縋り付く私を見て、お父さんとお母さんは非常に困惑した顔をした。


「ぽんちゃんってだぁれ?」


「何言ってるの!?お父さん、お母さん!私たちの家族!私たちの猫ちゃんだよ!」


「咲…ウチ、猫なんか飼ってないよ?」


絶望。


それ以外にあの時の状況をピッタリと表す言葉はなかった。


ぽんちゃんはこの世界から消えた。



私、坂原咲は高校一年生となった。

ぽんちゃんが消えてから7年。

この7年間で分かったことがいくつかある。


まず一つ目、それは私は9才のあの日あの時どうやら呪いにかかったらしいということ。


二つ目、その呪いは私が好意を持っている対象を思い浮かべて、「好き」と声に出して言うと発動すること。


三つ目、呪いが発動すると、その対象を消してしまうらしいということ。


四つ目、その対象を消すということは、世界から存在が消える、つまり、世界に存在自体まるごと忘れられてしまうということ。


五つ目、この世界で私だけが消した対象のことを忘れずにずっと覚えているということ。


六つ目、ぽんちゃんを消したのは私ということ。


この世界にはメロンもショートケーキも告白したきり返事が返ってこない佐藤くんもぽんちゃんも存在しない。


全部私が消した。


私はこの事実に気づいたのは、中学2年生の夏だった。

…いいや。本当はもっと前に気づいていた。

でも、私は私が自分の好きなものを消したと言う事実を信じたくなかった。だから、「変な悪い何か勘違いをしているだけだ。世界から私の好きなものだけが偶然消えていくんだ」とそう思っていた。

でも、さすがにもう偶然が多く重なりすぎた。

私はある日消えたものの数を数えた。

それで、非科学的で非現実的なこの「呪い」を理解して、信じるにはもう十分だった。

だから、私は独りで消えることにした。

自分の部屋で、自分のことを思い浮かべて、ひたすら「好き、好き、好き」と繰り返し叫んだ。


しかし、私は消えることができなかった。


私は私がもうすでに「大嫌い」だったのだ。


私は自分の気持ちと真反対のことを繰り返し続ける自分にえも言えぬほどの気持ち悪さを感じて、胃の中のものをその場で全て吐いてしまった。


次に私は死ぬことにした。

楽に消えようとした私がおかしかったんだ。私は苦しみながら死ねばいい。

そう思って、買った大量の睡眠薬と刃渡りの長いナイフとカッター。


それでも、私は自ら命を断とうとする度に、直前になって、勇気がなくなり、怖くなって、死ぬことができなかった。

その代わり増えていくのはリスカの痕。

飲む睡眠薬の量も増え続けた。

何をしたって、私は生きている。

「こんなことするために毎日頑張って生きてるわけじゃない」と泣く日々。

消えたいけど死にたくない。

私は臆病。

もう、生きることに執着なんてないのに、痛いのが嫌、苦しいのが嫌、辛いのが嫌、何も考えられなくなって、死んで、消えるのが嫌。


私は色んなものを散々消してきたのに、いざ自分が死ぬとなると恐ろしさが他の感情を、覆い隠して、私の死を見えないようにした。

結局のところ私は決めたことも実行できない、責任感のないただのクズ。

私はそんな私のことが大嫌いだ。


私はもう誰にも、何にも「好き」と言わずに生きていくんだ。

そう決めた中学2年生の夏だった。



「好きです、僕と付き合ってください」

「無理です」


高校1年生9月

私はなぜか唐突に校舎裏に呼び出されて告白された。

誰だっけ、この人…見覚えがない…制服のネクタイの色も同じだ…だから、同学年ではあるのだろう…名前もわからない…。


「だめかぁ…じゃあ、大好きです。僕と付き合ってください。」

「無理です。ごめんなさい。さようなら。」

私は断ってその場から退散した。

私はもう何も消したくない。



次の日

「好きです。僕と付き合ってください。」

「ごめんなさい。」



その次の日

「好きです。僕と付き合ってください。」

「無理。」



そのまた次の日

「好きです。僕と付き合ってください。」

「さようなら。」



そのまたまた次の日

「好きです。僕と付き合ってください。」

「…………」

私は流石に閉口した。

「………?どうしたの?なんで何も言ってくれないの?」

なんなんだこの男は…。

「ふざけてるでしょ」

「え?いや、ふざけてなんてないよ?」

そう言い放つ男の目は疑いようもない曇りなきまなこで真剣だった。

私はその目に少したじろいでしまった。

「じゃあ、なんなの?私、付き合うのは無理って言ってるよね?」

「うん」

「それなのに、毎日毎日、懲りずに『好きです。僕と付き合ってください』って正直しつこいの。やめてくれないかな?」

「でも、僕は坂原さんが好きなんだ」

なおも食い下がるか…なら…

「ほらこれ」

私は自分の長袖の制服の袖をまくった。

見せたのは私の左手首。

あまり人には見せたくなかったし、見せるものでもないだろうが、別に見られて、周りに言いふらされたりしても、私はもうすでに孤立しているので、支障はない。

実際、自傷行為はもうとっくの前に辞めたのだが、痕はまだ残ってしまっている。

「痛そう…」

「…」

ほらね、引いた。

「保健室行こう!」

この変な男は私が見せた方と逆の右手首を掴んで、走り出した。

「違う違う!!私、重いの!ヤバイ人間なの!」

「えっ、ん?ん?」

どうやら、この男はよくわかってないようだ。

まぁ、いい。

「そー言うことだから。もし、私と付き合ったりなんかしたら、あなたのことを刺し殺すかも」

振るための材料にできるなら、私の左手首も本望だろう。

「僕も多分だいぶ重いから大丈夫!重いは好きの裏返しだし!坂原さんに好かれるほど、嬉しいことはないよ!」


「いやいや、普通に考えてヤバい女の子なんて嫌でしょ?」


「なんで?僕は、ヤバい女の子じゃなくて、坂原咲さん!君好きなんだよ?」


そう言われてしまっては、何も返す言葉が見つからない。

ダメだ。どう断っても、この男はプラス思考で考える。ネガティブ思考の私とは真逆の人間だ。

このままだと私は自分の首を自分でしめた上に地雷を踏んでしまう。


「……君…名前は…?」

「中村隆信です!」

元気よく答える中村。

仕方ない。最終兵器だ。


「あのね、中村くん。私ね、もし君のこと好きになって、君に向かって、『好き』って、言えば、君のことを存在ごと消しちゃうの。信じられないかもしれないけど、本当のことなの。」

…どうせ、こんな話、誰も信じない。

お父さんもお母さんも信じなかった。

これで、中村も電波な嘘をつくほど私が拒絶していると悟って、私のことを諦めてくれるだろう。というか、諦めてくれ。

しかし、中村くんは、電波な私よりも信じられないことを言った。

「じゃあ、大丈夫だ。僕、この世に存在していないもん」

「は?」

いや、しかしなるほど。電波なことを言う奴には、電波なことを言って対抗するとは。

そうくるか…。

「あー!信じてないような顔つきだね?えーっとね…ほらっ」

そう言って、中村くんは、校庭に生えている木に手を伸ばした…………………………………………………が、その木に中村くんの手が触れることはなかった。

中村くんの手は木をすり抜けて貫通していたのだ。

「えっ?はっ?えっ?」

私はもう何もかもおかしくなって幻覚が見えるタイプのホンモノのヤバイ人間になってしまったのかもしれない。夢を見ているのかもしれない。

「僕、幽霊なんだ。去年死んだ」

「え?いやいやいやいやいや」

「坂原さん、僕、存在していないよ」

私は腰を抜かしてその場にその場にへたり込んでしまった。



まぁ、そうか呪いが存在するのなら、幽霊が存在したとしてもおかしくない…のだろうか。

中原くんは去年死んだ幽霊だから、ネクタイの色が同じなのに、見覚えもなかったってことで…あぁ!だめだ!頭がおかしくなってきた!

「だから、僕と付き合ってください!」

私は、呼吸を整えて、心を落ち着かせ、頭の中で考えをまとめる。

「…ぁ…ゃ…ぇ」

しかし、これ以上、告白を断ることに拘る理由が思いつけない。

何より恐怖で声が出ない。

必死に深呼吸して、心を落ち着かせて、言葉を繋げる。

「え…いや…さっき…私の手首掴んでたじゃん…」

「あぁ…確かに!なんでつかめたんだろ…坂原さんが僕のこと見えているからかな?僕のこと見えてる人は僕に触れられる…的な…?」

もうわけがわからない。

考えても理解できないことは考えても無駄なのだから、これ以上頭を使うことはもうやめよう。

私はもう何もかもを受け入れることにした。

私は深呼吸をして、心を鎮め、頭に思い浮かんだ単語をどうにか必死に繋げて言葉にした。

「……まず…あのねぇ……はぁ……そうだなあ……うーんと………私の言ったこと嘘だと思わないの?」

もし、私が中原くんだったら、私の言うことなんて1ミリも信じないだろう。

「幽霊の僕のことを理解して、僕とこうやって話してくれる坂原さんの話が嘘だったとしても、その嘘を僕は信じるよ。それくらい、坂原さんのことが好きなんだ」

「お父さんも、お母さんも信じなかったよ?こんな話」

「じゃあ、僕だけが坂原さんの秘密を知ってることになるってこと!?」

中村は目をキラキラ輝かせた。

ゔ…苦手だ…こーゆータイプ…

「いや…まぁ…そうなるけど…」

「やったぁ!ありがとう!坂原さん!」

変な幽霊だ…。

「私のどういうところで好きになったの?」


「顔!」


「サイテーがすぎる…」

「好きです。僕と付き合ってください!坂原さんっ!」


「ゔ…いや…まずは友達からで…」


私は友達が1人できた。

お読みいただきありがとうございます…✨

『スキキライ死んデレら』はOBOnが高校3年生の時に受験のストレスを昇華させて生み出された作品です…✨

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