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第二の試練・天界のおつとめ

ちょっと唐突かもしれないが、ひとつ聞かせてくれ。


お前は最後に「ガチの失望」を味わったのは、いつだ? 魔王。


「失望したことがあるか?」なんて野暮なことは聞かない。


そんなもの、誰だってあるに決まっている。


高みに登れば登るほど、落ちた時は長く、痛い。


サイコロの目がいい方に出た時に喜ぶのなんて、誰にでもできる。


物事が順調な時に希望を語るのも、誰にでもできる。


本当の成長が顔を出すのは――


「完璧なはずだった計画」が盛大に崩れ去った、その後だ。


瓦礫だらけの中で、それでももう一度積み上げるのか。


それとも、そこで一緒に沈んで終わるのか。


俺は、前の人生では胸を張れるほどのものなんて何ひとつなかった。


でも、今は違う。


今の俺には「全部」がある。


だから、何ひとつ失いたくない。


お前が一度滅び、玉座から生まれ変わって、かつての失敗をやり直そうとしているように。


俺も、このダンジョンコアに縛りつけられたまま――


このスパに、全部を賭けるしかない身なんだ。


俺は頭さえ使えば、時間さえあれば、いくらでも金を作れる。


発明品をひねり出して、借金を返して、施設を拡張していける。


でもな。


「評判」はゴールドじゃ買えない。


「信頼」や「好意」は、金で仕入れるものじゃない。


戦って、積み上げて、守るものだ。


だからこそ、あの最初の試練――グルメ大会の失敗は、骨身に染みた。


だからこそ、お前に認めてもらうことも、人間の王グレミーに認めてもらうことも、あまりにも遠い。


だからこそ、あの自爆イケメンのブラックウェルに頼ったことが、財布以上に心に痛かった。


金はまた稼げるかもしれない。


でも、一度裏切った「客の顔」は――二度と戻らないかもしれない。


客を脅かす? 


極悪料金以外で、そんな真似、俺のポリシーに反する!!


「ご、ご主人さま、落ち着いてください!」


リンが必死に叫びながら、床に次々と聖魔法陣を展開していく。


「魔王にケンカ売らないでぇぇ!!」


シャルロッテが悲鳴を上げて、その場で気絶してカーペットに沈んだ。


気絶でしか貢献できない天使って何。


それでも俺は、ピカピカの玉座を睨み上げる。


「今の俺は宝石だけどな。


中身――“人間の芯”は、まだ折れちゃいねぇぞ、魔王」


「ふむ。どう怒りを示すつもりだった?」


玉座の上から、魔王の声が響く。


「狂気と努力だ!!


さあ、第二の試練を聞かせろ!!


内容がショボかったら俺は」


「――ロビーを自爆させる?」とリン。


「――殺されるってば!!」とシャルロッテ。


「――“人間ボディ計画”を練り直す!!」


俺はドヤ顔で締めた。


魔王はしばらく沈黙し、それから低く問う。


「失敗しておきながら、逃げずにひざまずいているわけだな?」


「そりゃそうだろ。


何も知らないだろうけどな、魔王。


人間の“しぶとさ”舐めんなよ?」


玉座の間がぐらりと震えた。


怒りではない。笑いだ。


「確かに、認めざるを得ない。


それが、この戦が終わらぬ理由でもある」


魔王の声は重いが、どこか愉快そうだった。


「この戦争は、おそらく永遠に続くだろう。


憎しみがある限り、理由がある限り――終わらん」


「だからこそ“休戦地点”が要る。


敵同士が、同じ景色を見られる場所が、だ」


「我が“魔族の魂”は、お前の“人の魂”を大いに尊重している、ダンジョンコア」


視線が、ぐっと熱を増す。


「いや――カズキ。


お前の魂を尊敬している。


失望させるな。第二の試練を告げよう」


雷鳴が轟き、天井のステンドから光が差し込む。


大聖堂みたいな光の柱の中で、魔王の宣告が響いた。


「“天界”にいる連中を、お前のスパで“魔族と一緒に”入浴させてみせろ」


「……は?」


「天の者どもが、お前の湯に浸かることを望むのなら――


その時、私も行きたくなるかもしれん。


つまり、それがお前への第二の労働だ」


「は?? え? ちょっと待て。


天界の連中を風呂に引きずり下ろせって?


要約すると、“魔族と一緒に脱ごうキャンペーン in 天界”をやれってことか!?」


「表現が最悪すぎるでしょうが」


リンが即ツッコミを入れる。


シャルロッテは、がたがた震えながら起き上がった。


「でも、カズキ……


天界は“種族混浴”禁止だよ?


教会だってずっとそう説いてる。“隔離こそ平和の鍵”って」


「隔離ぃ!? 天界でもかよ!?


次は『天使はお酒飲んじゃダメです♡清らかさが汚れます♡』って言い出すぞ、絶対!」


「えっとですね……」


リンがシャルロッテの聖典をぱらぱらとめくる。


「むしろ逆って書いてありますね、十二ページに。


あと、教会の聖職者は“宗教的に”お酒飲んでます」


「ほら見ろーーッ!!」


俺は叫んだ。


「もうあいつら、元から“酔っぱらい集団”じゃねぇか!!


だからこそ、あいつら全員に風呂が必要なんだよ!!


馬鹿を洗い流すためのな!!」


魔王はくつくつと笑う。


「ならば証明してみせろ、ダンジョンコア。


奴ら天界人をお前の湯に沈めてみせろ。


それができなければ、“隔離こそ正義”と証明することになる」


魔王はひとつの宝箱を取り出した。


蓋が開くと、中には魔王自身も触れられない“聖なる遺物”――


青金色に輝くセラフの羽根が一本、静かに横たわっていた。


「これを触れた者は、燃え尽きるまでの間――天界へ至る」


第二の試練が、こうして始まった。


「行きたくない!! 空とか無理!!」


「なんで“天界”とか“教会”って言うたびに、そんなにビクッてしてるんだよ。


サボり癖は知ってるけど、お前……まさか、“天界からの脱走兵”とかじゃないよな?」


「知らないから言えるんだよ!!


マジで知らないから言えるんだよカズキは!!


あそこはね――」


「だーいじょうぶ!」


俺はぴかっと光った。


「コスト分析コンパスがビンビン反応してる。


『ここが最後の大勝負の場です』ってな!!」


「そんなコンパス嫌だ……!」


「よし! いったんスパに戻るぞ!


そして次は空だ!! 天だ!!」


「いやあぁぁぁぁぁ!!」

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