私にキスしてくれますか
本作は仮想で作られたフィクションの物語です。 実在する人物、事件などとは無関係です。
ヨンウはサンドイッチとコーヒーでブランチを食べながら周りを見回す。
こんな時間にのんびりした散歩だって、意外と多くの人が
街にいるとヨンウは思った。 みんな仕事はいつするんだろう。
散歩に出た子犬たちもミンジェを一度ずつ見て、
ミンジェもその子犬たちに挨拶をすれば、飼い主たちが喜んだ。
やっぱり動物もハンサムだということは知っている。
ヨンウはミンジェを見てにっこり笑った。
「あ、そうだ。 今日、本部長があなたに服を買ってあげたいって。」
ミンジェがサンドイッチをきれいに一口食べながら言った。
「本部長と電話した? いつ?」
「はっきりとした話をすると、今日の明け方。
誰かのことを考えて眠れなかったようだね~」
この状況が面白いようにミンジェがにやにやと笑う。
「私にすぐしてもいいのに..」
「それならまた君が断っただろう。 そしてそういうのは
顔を見て直接言って。 相手は言わなければ一生分からない。」
公園近くの駐車場の日差しが本当に良かった。
ミンジェが今日運転してきた車は緑色のミニ。
見るたびにミンジェの車が変わるのは
自分の勘違いかと思い、ヨンウがミンジェに尋ねた。
「兄さん、一体車は何台あるの?」
「うん…3代?あ!4代。 「Adam’s apple」 に2台、家に2台だね。」
自分の車も知らないとヨンウは口を尖らせながら助手席に乗った。
*****
デパートに着いてミンジェがシンユルに電話すると
シンユルは自分の人を紹介すると
「まずは買い物したらどうです 」と話した。
「こんにちは。アンソンジュン代理です。
アン代理と呼んでください。 」
人懐っこい男が
二人に名刺を渡しながらあいさつした。
3人は本格的な買い物を始めた。
カジュアル売場までさっと回ってから、
ヨンウが持っていくショッピングバッグは7個になった。
ミンジェの話では、今日の明け方、
洪社長とミンジェにシンユルが直接電話をして
「Adam’s apple」 で着るユニフォームを
自分が変えてあげたいと言ったという。
ヨンウ、自身の番号も教えてあげたのに、
自分だけ除いて仕事が始まって少し落ち込んだ。
これからヨンウのことだけど、 残念でもあった。
シンユルが送ったアン代理と少し間が開くのを待って、
ヨンウが小心につぶやいた。
「そのスーツも悪くなかったのに..
兄さん、僕はあの日、イマイチだったみたい。」
泣き顔のヨンウの顔を見ていたミンジェが言った。
「ヨンウ、自信を持って。
あなたはイマイチだった人に初対面からキス..やるのか?」
ミンジェがアン代理の顔色を少し伺いながら静かに話した。
「あ、そうだねぇ」
ヨンウのしょんぼりした目つきが少し蘇った。
やはりヨンウは単純でいいとミンジェは思った。
ミンジェは今日「Adam's apple」で 着る
ヨンウのスーツと残りの服を店に代わりに
持っていくと言って早くも席を立ち、
アン代理も事務室に入って案内を終えると
事務室のどこかに消えてしまった。
「ヨンウさん、ごめんなさい。 そこ、ちょっと待って
座っていてください。 すぐ終わります。」
決裁書類を開いて
サインをしながら、シンユルが続けて言った。
「今日は来てくれてありがとう、服は気に入りましたか?」
「はい。ありがとうございます。」
ミンジェが運転してデパートに来る間ずっと
誰かが買ってくれた服は ありがたく着ろって
ヨンウの耳が痛いほど言ったし、
ヨンウは「あぁ」とうなずいた。
それでヨンウは今はミンジェが買ってくれたグレー系の
カジュアルスーツはグラデーションでポイントを与え、
安定感を持ってダークグレーのローファーを履いている。
いつの間にか静かにヨンウのそばに近づいてきたシンユルが
ヨンウにちょっと起きてみろと言って
二人はお互いに少し中腰で立っている。
「ヨンウさん、右利き?」
「はい。」
「では、左手をお願いします。」
ヨンウが用心深く手を出すと、
シンユルがヨンウの手首を伸ばして
アナログ 腕時計一つをつけてやった。
「完成。よく似合いますね。かっこいい!」
ヨンウを眺めながら、シンユルはにっこり笑った。
シンユルが自然にヨンウの手首を離そうとすると
今度はヨンウがシンユルの手首を握って
彼女の体をぐっと引き寄せた。
お互いの正面を間近で向かい合うようになった二人。
ヨンウが体を傾けてシンユルの耳にささやいた。
「今日はありがとうございました。」
シンユルの耳たぶにあった小さなイヤリングが少し揺れた。
ヨンウにつかまった手ではなく、他の手でシンユルは
ヨンウの髪の毛と頬を大切に撫でた。
「今よかったら、
私にキスしてくれますか、ヨンウさん。」
ヨンウは自分の唇をシンユルの唇に重ねた。
細くふるえたシンユルの指先が
ヨンウの背中をそっとなで下ろした。
アン代理がヨンウを「Adam's apple」に連れて行ってくれ、
シンユルも今日は早く帰ることにした。
ヨンウを送って事務室の机に座ったが、
シンユルはこれ以上仕事が目にも手にも入らなかった。
浮ついた気持ちでシンユルは駐車場に降りた。
口元に笑みをたたえたまま。
私はアルバイトをしながら文を書いています、仕事がある日は夕方に、アルバイトがない日は午前に掲示するようにします。 日曜日は個人的な都合で休載します。 私が書いた話を読んでくださって本当にありがとうございます。




