親友
教会の鐘が鳴る。
週に一度、お祈りの時間が終わってから開かれる、教会学校の時間も終わりが近づいていた。高窓のステンドグラスからは夕間暮れの光が落ちて、堂内のほこりをキラキラと輝かせている。
礼拝堂の席には子供たちがちらほら座っていて、真剣に聞いている子もいれば、こそこそ喋っている子もいる。
今日はここまで、と講壇の前に立つ司祭が手を叩く。
他の生徒たちが嬉しそうに話しながら立ち上がるなか、ペチカは最前列の席を少し悲しそうな顔でじっと見ていた。
「おい、肺活量」
「だれが肺活量だ!」
かかった声に思わず振り向いて反応するペチカ。
そこにはペチカをいじめていた天敵の少年とその一味がいる。少年は意地悪な笑みを浮かべながら
「じゃあ、やっぱ「泥棒」か」
「…………」
ペチカは少年の言葉を無視し、汚れたバックに本を仕舞って席を立とうとする。
「お前、あいつがいないと大人しいし、な~んもできないのな!」
「……」
「ほら、なんか言ってみろよ」
少年の言葉に他の少年たちも同調して、「言ってみろ!」と煽る。ペチカはそれを無視して立ち上がり出口に向かって歩き出す。
しかし、少年はペチカに足を引っ掻けて、ペチカはその場に転ぶ。
痛ッ、とペチカは漏らす。バックから本やペンがこぼれる。
少年たちはペチカのその姿に笑う。ペチカは震える手を床について立ち上がると、少年を睨む。
「な、なんだよお前」
「……アーちゃんに言われたの。あんたたちなんて「ウゾウムゾウ」だって。だからあたしに話しかけるなバーーーーーーーーーーーーカ!」
少年たちは「うるせっ……」と耳を抑える。
ペチカは足早に去ろうとする。
「待てよ!」
少年は言うが、ペチカは振り返らない。
「あいつなら、アイレットならもう来ないぜ」
えっ、とペチカは立ち止まって振り返る。
「何? アーちゃんのこと知ってんの?」
少年は偉そうに両手をわき腹に当てて話す。病欠だと聞かされ、アイレットを心配していた子供たちは皆少年の声に耳を傾ける。
「母さんに教えてもらったんだよ。お前、昨日、眼鏡をかけたキザっぽい男にあっただろ?あいつは記録師って言ってな……」
少年の話を聞くアイレットの顔はだんだんと青ざめていった。
そしてその話の途中でペチカは礼拝堂を飛び出した。