表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/40

殺しに来た奴は、殺していい(2)

残虐なシーンがあります。

苦手な方はリターンしてください。

免疫のある方のみ

▼▼▼▼



【舞台】

モスタ王国


【登場人物】

ザイオン(21):

国王の隠し子で、マクシミリアン第一王子は異母弟。

第一王子の側近を勤めている。

近々弟と共に共和国へ亡命予定。


マクシミリアン第一王子(17):

ザイオンの異母弟で、モスタ王国王太子。幼名はマクシー。貴族学園二年生。発達がやや遅い。

第二王子派にとっては邪魔な存在で、たびたび命を狙われている。

動体視力が規格外で、戦闘能力は高い。






 僕は怒っている。

 こんなに怒ったのは、初めてだ。


 あのでかい男を殺したら、兄上が泣いた。

 殺していいって言ったけれど、ずっと泣いてた。

 悪いのは僕じゃない。

 殺さないと、僕は殺されていたし、僕が死んだら兄上はもっと泣く。


 悪いのは僕じゃなくて、……誰なんだろう?

 あの男は、誰かに命令されていたに違いない。

 みんな、誰かに命令されて僕を殺しに来る。


 誰かって、誰だ?

 僕を邪魔な人間。

 第二王子を王様にしたい貴族達と、それから──






『あっち行ってて』

 僕が小さい頃、まるで動物を追い払うように、母様はコップを投げてきた。

 母様は僕の事を、凄く恥ずかしいと思っていたみたいだ。


『こんな子、私の子じゃないわ』

『この私が、こんな馬鹿を産むはずがない』

『消えてなくなればいいのに』


 僕は、喋れない自分が悪いのだと思っていた。

 お城には、隠れる場所がたくさんあった。

 恥ずかしい思いをさせたくなくて、僕はいつも隠れて母様を見ていた。

 母様は綺麗だ。

 さらさらの金髪に、宝石をたくさん付けている。

 緑色の瞳も、宝石みたいだ。

 キラキラ光るドレスを着て、堂々と歩く母様を見て、みんなが頭を下げた。


 赤ちゃんが生まれると、母様は優しく笑いかけていた。『お腹に赤ちゃんがいると、気持ちが不安定で怒りっぽくなるのですよ』と乳母が言っていた。赤ちゃんはお腹からいなくなったから、もう大丈夫なんだって思った。


 大丈夫じゃなかった。

 僕が近づくと、母様は花瓶を投げてきた。

 赤ちゃんに近づかないで、と怒鳴った。

 ティーカップも飛んで来たので、僕は逃げた。






 母上は、第二王子を王様にしたい貴族達とは、少し違う。

 王位継承権には関係なく、僕を産んだ、という事実そのものが許せないんだ。

 僕はそこまで嫌われている。

 だから母上は、いろんな貴族や、殺し屋に、僕を殺せって言いまくっているんだ、多分。


 証拠もなく母上を殺したら、捕まって亡命ができなくなるから手を出すな、と兄上には言われている。こっそり殺せばいいのに、絶対ばれるから駄目だって。


 殺しに来た奴は、殺していい。

 でも、そいつの後ろで操っているだけの奴は、殺せない。

 どうしたら、後ろの奴を引きずり出せるだろう? 殺しに来た奴を全員殺したら良いのかな?




 新しい側近が来たばかりのその日は、面倒な書き取りの課題がたくさんあったので、僕はバルコニーにいた。ずっと部屋の中に居るのは耐えられそうになかった。だから、一つの単語が終わったら木の様子を眺めて、次の単語が終わったら街の方を眺めて、みたいな感じで、僕は僕にご褒美をあげる事にしたのだ。

 

「おやつをお持ちしました」

 侍女のふりをした何者かが、僕の部屋に入ってきて言う。

 僕は喋るのは苦手だが、この城の使用人の顔はだいたい覚えている。

 短い茶髪にグレーの瞳の若い侍女は、いない。昨日今日雇われた新顔の侍女だとしても、単独で第一王子の私室に入って来る事なんてできないはずだ。

 僕の両側に立っている二人の護衛兼側近達は、不自然さに気づく様子がない。


「そこに置いておいて」

 と言ったのに、女は部屋のローテーブルを素通りして、クッキーの載った小皿をわざわざ僕のいるバルコニーへ運んでくる。

 そんな怪しい動きをしておいて、ばれないとでも?

 と思っていたら、背後で風を切るような音が聞こえた。


 振り返って確かめる前に、地面へと身体を躱す。

 椅子に、矢が当たって落ちたのでびっくりした。

 侍女が注意を引いている間に、僕を射殺すつもりだったのか、矢の先に毒でも塗ってあるのかな。


 バルコニーに立っていた側近二人が叫び、矢の飛んできた方向へ向き直った。

 その隙にお菓子を運んできた侍女が、隠し持っていた暗器を僕に向ける。

 これ、何段構えって言うのかな。

 意外に策を練ってるが。


 その時にはもう、僕の剣が彼女に刺さっていた。

 低い位置からなので、お腹になった。

 お腹で即死は難しいよね。

 失敗した。

 僕は、苦しんでいる彼女の身体を、足で上向けると、正確に心臓を突き刺してあげた。


 側近の一人は、まだこの仕事を始めて間もないので、多分死体を見るのは初めてなんだろう。目を見開いて、恐怖の表情で僕を見ている。


 バルコニーの手すりの向こう側では、近衛兵達が走り回っていた。どこから矢が飛んできたか、調べているらしいが、僕の居るバルコニーは三階だ。低い場所からは、そう簡単には射かけられない。地面を走り回って探したって、わかるわけが無い。

 僕は血濡れた剣を、バルコニーのテーブルにかかっているクロスで拭く。

 やりかけの課題に血が垂れた。


 剣を腰に下げている鞘に収めると、僕はバルコニーの手すりに足を掛ける。

 新人の側近が、驚愕した顔で言う。

「で……殿下……? いったい何をなさるおつもりで……?」

 飛び降り自殺をするようにでも見えたのだろうか。

 僕は、壁を伝って下りる。


 それから、矢が飛んで来た方へ向かった。

 のんびりと歩いていると近衛隊に見つかるから、久しぶりに木に登って、繁っている枝葉に隠れながら移動する。昔からよく利用するルートを使うが、子どもの頃は軽々と枝から枝へ飛び移れたのに、身体が大きくなったからか、時々枝が折れて、落ちそうになった。

 これが年を取るって事なのか。


 靴も服も邪魔だけれど、脱ぎ捨てたら兄上がとても怒るし、すぐ近くだから、我慢する。


 僕は一番近くて一番高い、オークの木に近づく。

 枝も葉もたくさんあって、隠れやすい。

 僕も時々隠れ家的に利用している。

 僕の部屋のバルコニーを狙うなら、腕前?技術力?さえあれば、ここが一番適している。


 こちらの動きを察知したのか、男が一人、急いでオークの木から下りた。

「いたぞ!」

 近衛隊が近くで警戒中だったらしく、誰かが叫んでいる。


 予め逃走ルートを決めていたようで、男は近衛隊の手薄な方へと向かう。

 侍従の服を着ていた。

 迂回して城に戻り、使用人達の中に紛れるつもりだ。


 僕も木から下りて、走って後を追った。

 小柄な男で、足が速い。

 このままだと逃げられる、もしくは近衛隊の手に落ちる。

 僕は立ち止まって剣を抜くと、足を踏み込み、投げた。

 真っ直ぐな重い刀身が、綺麗に弧を描いて、男の背に当たる。悲鳴を上げる事もなく男は倒れた。
















⋈ ・・・・・・ ⋈ ・・・・・・ ⋈

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ