34.12:木製テーブル[おまけ]
下ネタです。
夕食の後、マクシーは装備の手入れをしに行き、クロエはザイオンが洗った食器の後片付けを手伝った。
いつもなら食後の後片付けの全てをルファンジアが担当するが、彼女は里帰りでしばらく留守の予定だ。
当分はザイオンとクロエの二人で片付ける事になった。
食器を割るかも知れないマクシーには、絶対に任せられない。
仲が良いとは言えない二人なので終始無言で作業を行ったが、最後の食器を棚に入れ終えたクロエは、意を決したように言った。
「ねえ、ザイオン。アレ持ってない?」
指で輪っかを作っているが、何のことかザイオンにはわからない。
「は? 金か?」
ザイオンは、流しから彼女へと向き直り、苛ついた声で言った。
「違う」
クロエは、距離を詰めて囁く。
「アレよ。子どもができないやつ」
「ああ。アレか」
と、ザイオンは冷静に返す。
「薬屋に行けば売ってるから、自分で買え」
「無理」
クロエは、ややつり気味の目を大きく開けて、潤んだ瞳で見返してきた。
「どんな顔して買えばいいのかわかんないし、たくさん欲しい訳じゃなくて、念のために一つか二つ、持っておきたいだけだから」
マクシーに買わせろ、とザイオンは言いかけて、やめた。
必ずしも相手は、マクシーではないかも知れない。マクシーはすっかりその気だが、ザイオンは女性の気持ちが変わりやすい事を身をもって知っている。
そもそもクロエがここに住んでいるのも、半ば強制的にそうさせたからで、彼女自身の意思ではない。
正直なところ、人として欠けたところの多いマクシーをクロエに押しつけたような形になってしまった事に、ザイオンは多少の罪悪感を覚えていた。彼女が他の男を選んだとしても、文句を言うつもりはない。
(だが、マクシー以外の男に使うつもりのアレを、俺に頼んでくるだろうか?)
それに、相手がマクシーだったとしても、だ。
店頭で『コレ何? どうやって使うの?』などと質問し始める弟の姿が、ザイオンには容易に想像できた。
溜め息を吐いて彼は、ポケットに入っていた小さな包みを二つ取り出す。
「ありがとう! ザイオンなら絶対持ってると思ってた」
ニコニコしながら、クロエは受け取った。
「どういう意味だ?」
ザイオンは聞きとがめる。
「あ、女たらしとかそういう悪い意味じゃなくて」
クロエは真面目な顔を作る。
「ザイオンは女の子にもてるから、そういう機会も多いだろうし、用意周到な性格だから相手の事を考えて、絶対持ち歩いているはずだって、褒めてるつもりだったの」
「本当にもてるのなら、とっくにパートナーを見つけてる。人の傷を抉るな」
聞き流せばいいのに、こんな風につい余計な事を言うから、俺は駄目なんだな、とザイオンは自覚する。もう少し自分を抑えないと、嫌われるばかりだ。
「うん、ゴメンね」
クロエが、面倒臭いなぁ、という表情になった。
それから、受け取ったモノをズボンのポケットにしまおうとして、マジマジと見つめる。
「これ、サイズってあるのかなぁ。入るか……」
「なんだと?」
聞き流せなかった。
「ごめんなさいなんでもないです私も装備の手入れしてこようっと」
クロエは慌てて逃げていった。
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