月姫の白竜
こっちは姫と悪魔と魔法よりやりにくい気がします。
竜が愛美に「俺は魔法使い」宣言した次の日のことです。
愛美が風邪をひいてダウンしたので、竜も学校を休みました。
愛美のお兄さんは学校に行って、家にはリュウとマナだけです。
「大丈夫か?魔法使おうか?」
「ふにぃ。いい」
「そうか」
竜は密かに、話したからか?と思っていました。
「夢を見たよ」
「?」
愛美の言葉に、竜は首を傾げます。
「桂小太郎さまが出て来なすった」
「ヅラ様がね」
道理で嬉しそうなワケだ。
「でね、小太郎くん、何も言わないで私の後ろを指すの。振り向いたらなんと」
「なんと?」
「鏡があった」
「鏡?」
「で、映ってるのは“私”じゃなかった」
「……」
愛美は自分の天パをつまみます。
「青い目をした、サラサラストレートの長い黒髪の女の子が映ってた」
竜は眼鏡の奥の眼を細め、再び何かを決心して眼鏡(魔法具)を外しました。
「俺の眼鏡は魔法具だ」
「魔法?」
「コレをつけて、性格と目を変えてる」
愛美の見る竜の眼は、爬虫類のような薄いブルーの瞳です。
「うん。何で?」
「護るため。アリアを」
愛美にも聞き覚えのある名前でした。
竜が昔から言ってた名前です。
その時がきたら話すと言っていました。
「アリアは俺の主で、俺の護る者」
竜は愛美にアリアについて話してくれました。
「アリアの姿は、エルフみたいに綺麗な容姿。髪は黒で光をはじく。瞳は母親譲りの青」
愛美の夢に出てきたそれです。
「月の魔力を持つ。精霊に愛されたから、世界はアリアに従うし、自然界…森羅万象アリアは操り、森羅はアリアを護る。魔力じゃないからとても強い」
愛美は超能力者的な?と思いました。
「強いから綺麗なアリアには沢山友達がいる。俺もそうと言ってくれた。だからアリアは全部に恵まれてると思われてたけど…」
竜はちょっと黙って続けます。
「アリアは愛する者を死なせてあげた。アリアは優しいから、自分が殺したと言った。好きな者を殺すという闇を負っても、アリアは他の大切な者を糧に、闇の世界で月みたく輝いた」
愛美も月の美しさは知っています。
「アリアは殺しを嫌ったけど、戦争では殺さなきゃいけない。沢山アリアは殺した」
何だか飛びすぎな気がしますが、あえてツッコミません。
またいつか話してくれるやもしれません。
「アリアの戦い方は綺麗だから、皆が憧れた。戦争が終わるまで」
どうやって終わったの?と愛美に聞かれた竜は、決まってると前置きし、
「アリアが闇の王を殺したんだ」
と言いました。続けて、
「その闇の王も、アリアの大切な者の一人だった」
と言いました。
外の天気は快晴で、沖縄ですね的な空が広がっています。
俯いたままの竜は、また眠りだした愛美の横にいます。
愛美が竜に触れて、寝言を言いました。
「傍にいてくれるでしょ?竜王」
竜王と呼ばれた竜王が驚いて振り向いた時には、既に愛美は夢の世界にダイブした時でした。
私も最近桂小太郎が夢に現れました。
あの人ハンパない。
綺麗、カワイイ、カッコいい、美人、素敵。
あれ、結局小太郎さまのことしか言ってないぞ。どういうことだ。
ま、いいか。