潜入!一座の天幕
戦がなんぼのもんじゃい。
こちとら人生という名の戦場を駆け抜けとんのじゃい。
と、いうカンジで・・・
竜王は雷と一緒の部屋にぶち込まれているので、気を使いまくっていました。
でも。いつ知らない人が入って来るともわからないので、べったりとひっついています。雷に。
「竜」
「ナニ?」
「お前にも魔力、あったんだな」
「・・・・・」
雷と竜は、魔力をもつ“無族”として誘拐されたのでした。
「竜」
「ナニ?」
「お前、ちょっと離れてくれない?」
「やだよ」
「離れてくれない?髪が触れるんだよ首に。くすぐったいんだよ」
「ん」
竜王は髪が当たらないようにしました。
「・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・」
「竜」
「ナニ?」
「確かに、髪は当たらない」
「うん」
「でも離れろ。
てかお前、性格変わってね?そんなキャラだったっけ?」
「うん。素は」
マナミとベルは、ガマを抜けようやく侵入しました。
「さて、俺たちの竜王はどこだ?」
「あ~。いるいる。お兄ちゃ…お兄さんもいる」
「マジでか」
呑気ともとれる会話をしながら、ふたりは回廊を進んでいきます。
マナミは唐突に、腰にひっかけていた幣を取り出しました。
幣とは、アリアの神器です。
桜の木を使った棒に、紙や麻ではなく、いくつも長く連なった水晶が下がっています。
白い“龍のひげ”が水晶の連よりも長くのびています。
頂点には月長石の三日月があります。
付け根には、金色の小さな鈴がついています。
マナミは、鈴を可愛らしく鳴らしながら一振りしました。
ちりん♪
「白狐 召喚」
ポム!
「お喚びですか。美しい主、月夜様」
白く輝く美しい狐が現れました。
声の響きや高さから、女の子だなと分かります。
まつ毛が長く、ふさふさの尻尾が三つ生えています。
「神器に」
マナミが言いました。
「はっ。形状は?」
「棒型で。刃にはならないで。流血沙汰にはしない方が良い」
「かしこまりました」
白狐は幣に取り付きました。
幣はたちまち純白の、水晶が飾りになって先端に鈴のついた棒になりました。
白狐は変幻自在の能力を持った式神です。
幣に取り付き武器化するのも能力の一つです。
ちなみに、白狐曰く「剣に付けば…憑けば?もっとすごい」らしいです。
それ言ったらアリアに「フィアン(魔剣)に任せるから」と断られましたが。
「マナ。武器なんてその身体で使ったことあるのか?」
「なぎなたの授業があるから」
「そんなマナの戦闘力は?」
「・・・・・」
マナミは棒を眺めて聞きました。
「大丈夫だよね?」
返事はスグに帰って来ました。
「はい。筋力ならいくらでもカバーできます。形だけ作ってくだされば良いですよ」
「って♡」
「……。ハァ。変わらないな」
ベルが呆れたような、でもどこか嬉しそうな呟きを発した時でした。
「ん?」「あ」
正面に人が来ました。
「おっ。マナ、行く?」
「勿論」
マナミは武器を構えました。
瞳には、今までになかった輝きがあります。
戦場に降りたかの姫のような―――――――――
次はレッツパーリー。