小さな歴史のアンコール
アリア覚醒。
愛美は夢を見ていました。
「桂よ夢に現れよ!土方でも可!」と叫んで眠ってから、一時間くらい経っていました。
暗い所に鏡がありました。
綺麗な銀細工の施された鏡は、闇の中に浮かんでいます。
映った愛美も、はっきりと見えました。
愛美はぽかんと見つめます。
鏡の中の愛美も、ぽかんと見返します。
すると、変化がありました。
鏡の中の愛美の両目が、海とか空とかのような青に変わったのです。
瞳孔まで同色なので、存在を確認できません。
「?」
天然パーマはストレートになり、腰まで髪が伸びました。
「!」
そこで気づきました。
変わっていくのは鏡の中の世界ではありません。愛美自身が変わっていくのです。
驚いて髪を掴み見て、また鏡を見ました。
愛美は完全に変身していて、鏡には“アリア”が映っていました。
変化はそれだけに留まりません。
アリアは大人になりました。
父親譲りといわれる澄み渡った青い瞳、整った顔立ち。
母親譲りといわれる体格。胸は大きく、細身。
あ、父親も細身だったな。
暗い空が揺らぎ、アリアは日本風の城の中にいました。
障子を開くと、蝶々が入って来ました。
アリアが蝶々を目で追ってまた外を見ると、沢山の屍が横たわっていました。
戦場でした。
アリアは外へ出ました。
戦場を歩いていると、見知った顔がいくつかありました。
沢山のエルフ、巨人族、ケンタウルス、人間などの種族が死んでいます。
それどもアリアは止まりません。
自分でも不思議なくらい落ち着いています。
「アリア」
呼ばれて振り向くと、そこには漆黒の瞳と黒髪の男がいました。
「グイル」
アリアは嬉しくて近寄りました。
グイルは笑顔を向けながら、刃を振り上げました。
マナミは飛び起きました。
心臓がうるさく鳴っています。
荒い呼吸音は、マナミが放っているものでした。
刃の煌めきが、瞼に焼き付いています。
震えながら携帯電話を開きました。
愛するキャラクター、桂小太郎の待ち受け画面が出迎えます。
03:49の数字がありました。
「んな~?」
ベルが眠そうに出てきました。
「マナ?どうかしたか?」
ただならぬ主の状態を察知したベルは、マナミの膝に飛び乗りました。
「マナ?」
「ん?ああ」
マナミは虚ろな目のまま返事をしました。
ベルの耳はぴくりと動きます。目がかっと見開きました。
「まさか」
マナミは優しく笑うと、そのまま枕に倒れました。
寝息をたてるマナミの枕元に、ヒトがひとり座っていました。
やや長い髪は、茶髪ですが毛先数センチだけは金髪です。
身長高めな彼は、マナミを見ていました。
「…夜明けか」
彼はそう呟くと、白猫の姿になって寝床に潜りこみました。
最終章っぽくていいんじゃないでしょうか?