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第5回小説家になろうラジオ大賞byごはん

玉子料理専門店「聖女のたまご食堂」にようこそ!





「上手に『浄化』出来ていますよ」


「ありがとうございます。大聖女様」



 新人聖女が毒抜きしたコカトリスの大きな卵を置いて、私はミノと金槌カナヅチを手に取る。


「チェックは終わったので、私も調理に入りますね」


「はい! 今日は特に混雑しているので助かります!」



 ここは聖女達が営む食堂。

 所属する教会で人体に治癒や浄化魔法をためす前に、新人研修をほどこすのに大変効率が良い。

 

 聖女育成の場としてだけではなく、売り上げの一部は孤児院に還元され、奉仕活動の役割りもになっていた。


 毒素が含まれている可能性がある魔物の卵。前は薬や錬金術の素材としてしか用途がなく、一般には見向きもされず。

 特に、魔物を使役するテイマーの間で無精卵の卵が持てあまされていたのだ。


 しかし、毒抜きした卵は味もさる事ながら、滋養に良いと評判になり、食堂は早朝にも関わらず大変(にぎ)わっていた。


 コカトリスの濃厚な味わいの卵に負けない、よく炒めた玉ねぎと細切れにしたコカトリスの肉に、バター風味の炊かれたライスを混ぜ合わせて皿に盛り付ける。


 その上に半熟とろっとろの卵を乗せ、(ほど)よい酸味と赤い彩りが(あざ)やかなトマトソースを加えれば、この店一番人気の「コカトリスライス」の出来上がり。



「卵サンド2人前お願いします!」


「はーい」


 作り置きしてあるサンドイッチには、ゆで卵にすると白身が多く、プリプリの食感が楽しめるバジリスクのモノを。

 コカトリスより淡白な味わいのバジリスクの卵に合わせるのは、菜種油でコクを効かせたマヨネーズ。


 耳まで美味しいもっちり食パンに多めのバターと(うま)みが凝縮したスライスハム。

 そこにぎっしり卵ペーストを挟んでも、ペロッと食べられる()きのこない優しい味わい。


 冒険者ギルドの横に店を構えるこの食堂では、朝は冒険者達が手軽に食べられる卵サンドがよく売れる。


 新人聖女が小さな怪我を治させてもらったりと、お互いに持ちつ持たれつの関係でもあった。


 お店がひと段落したところで朝食を取る。


 異世界転移して早5年。

 どーーしても卵かけご飯が食べたくて試行錯誤の上に気合いと根性で魔法を覚え、食中毒の原因菌を撃退。


 副産物として魔物の卵の無毒化に成功し、今では「大聖女」の称号を(たまわ)るほどに。


「いただきます」


 私は炊き立ての湯気が上がるご飯に生卵を乗せ、まぜまぜしてから(はし)で豪快にかき込む。


 卵と大盛りご飯をお代わりし、ひと粒残らず幸せを噛み締め、全て胃に(おさ)めた。


「ふぁ〜……ごちそうさまでした♪」


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― 新着の感想 ―
[良い点] 昼食前に、何て飯テロなお話! 美味しそうな描写、堪能させていただきました。 も、もう少し空腹に耐えねば(^.^;
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