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Express BRZ  作者: Elena
第一章 出会い、SUBARU BRZ
9/82

ご褒美デート

 バイト生活が数週間続いた。その間に、三条神流は数回、群大病院に検診のため行ったがその際にはかなりの発作を起こしていた。

 医者にかかるとうつ病の発作が頻発すると言う皮肉な状態になっているのだが、やはりこれも松田彩香の狙いだ。医者にかかるより、自分と一緒に居た方がいいと思わせ、薬物治療による副作用や薬物依存を防止させつつ、自分に惚れさせようと言う戦略だ。

 そして、今日はバイト終わりに松田彩香が遊びに行こうと、三条神流をまたGR86の助手席に乗せて出かける。

「今日は、バイトお疲れ様ってことで、デートしてあげる。」

 と、松田彩香は夕暮れの国道50号を桐生・足利方面へと向かう。

 三条神流を拘束せず、そして、いつものように赤城山を攻め込むのでもない。

 上武道路を潜って、国道50号は1車線になり、二人共にハマっていたエロゲの曲を中心にfripsideの曲を聞きながら走る。

「今日のカンナは、兎月エレナね。」

「なんで偽名?」

「なんとなく。」

「は?」

「遊びの時は、どこかの誰かに会いたいって寂しさを紛らわすため、偽名のキャラになって現実逃避していたの。」

 と言う松田彩香に(ふーん)と思いながら、三条神流は景色を見る。赤城山が夕陽に照らされていた。

(そういえば、群馬に帰って来てから、群馬の景色、全く見ていなかったな。)

 と、三条神流は思い、そして、恐る恐るだが、視線を松田彩香に向けた時、信号で止まった。

「そうだ。」

 と、松田彩香は助手席のグローブボックスに手を伸ばし、その瞬間、松田彩香と三条神流の目が合い、三条神流は反射的に視線をそらしてしまった。

 桐生の辺りで、国道50号は再び2車線になる。

 桐生の外れ。近くを渡良瀬川が流れていて、川の向こうは足利だ。

 松田彩香は栃木県との県境付近のゲーセン兼、大型ショッピングモールに入り、地下駐車場にGR86を止める。この地下駐車場の真上に小さな鉄道公園のような物があって、そこに貨車移動機とワム80000貨車が2両連結の計3両編成の貨物列車のような形で保存されていた。そのため、貨車のワムにちなみ、ワムの地下の駐車場を略して「ワム地下」と言うらしい。

「こんな地下駐車場やデッカイ駐車場は、車好きの溜まり場。マナーを守って迷惑行為をしなければいいけど、偶に駐車場の中で爆走するアホゥもいるんだよね。まっ、そんなアホゥが来るような場所には行かないけど私達。ああ、今日は懐かしいメンツに加え、車好きの仲間たちも大勢来て、みんなで焼肉よ。」

 と、松田彩香が言った時、松田彩香のGR86の隣にシビックセダンFL1。シビックタイプR FL5がやって来る。

「両毛連合の車。FL1が磯風。FL5が高波。まぁみんなハンドルネームやコードネームで呼んでいる仲。」

 と、松田彩香が言った時、霧降要のSUBARU BRZが同じBRZ同士の隊列を組んでやって来て、松田彩香のGR86の向かいに止まる。

「あれま。」

 と、霧降。

「私の舎弟にして、私の月の遣い。」

 と、松田彩香は霧降始め、旧連合艦隊時代からの付き合い以外の者に、三条神流を紹介。

「兎月って呼んであげてください。」

 と、松田彩香。

「どうせなら、鳥羽莉と胡太郎にしろ。」

 と言ったのは、G29型BMW Z4の望月光男。

 元連合艦隊副司令だったが、今は霧降同様、松田彩香率いる車好きのチームの一員に成り下がったらしい。

「ああ、まだ言ってなかったね。私たちのチーム名。っていっても、私達、チーム名も何もないから。両毛連合を間借りしているだけだから。」

 と、松田彩香。

「恵令奈も来るって。」

 と、両毛連合の大波が言う。大波の車はシビックセダンFC1だ。

「私が「エレナ」って名乗る理由になった。」

 と、松田彩香。

 やがて、ブリティッシュ・グリーンのボディを身に纏うイギリス車、ロータス・エキシージがやって来た。

「あら?今日はお連れさん?」

 と、エキシージから降りて来た女が言う。

「ええ。兎月エレナ。私の遣いよ。」

「そう。初めまして兎月。私は恵令奈。東郷恵令奈。」

(なるほど)と、三条神流は思った。エレナの名前は東郷恵令奈に由来するというのだ。

 ワム地下にはゾロゾロと、スポーツカーやヤンチャな車が集まって来る。

 他にもチームを組んでいる奴、仲良し同士つるんでいる奴。

 「今の連合艦隊は、さっきも言ったけど「両毛連合」に付随するチームのような物。規模だけなら、「両毛連合」の方が上よ。」

 と、松田彩香。

 皆で焼肉だが、その際、松田彩香と恵令奈は隣同士に座り、三条神流は松田彩香の向かい。

「日菜子も着いたって。」

 と、恵令奈。直ぐにまた一人合流。

「あら?」

 と、彼女は言う。

 恵令奈の姉である彼女、東郷日菜子は松田彩香と三条神流の同級生だった。

「なるほど。では、アヤの相手は、三条君ね。」

「そうなる見込み。恵令奈も了承している。」

「恵令奈が彼氏と別れたその寂しさに漬け込み、三条君を失った悲しさを埋めていた事に、恵令奈も少し嫌悪を感じていたけど、これでまぁ、解消されるでしょう。強制するようでアレだけど、三条君はアヤと一緒に居るべき人だったのよ。それをみんなで、面白おかしく弄ったせいで、ああなっちゃったのもあるけど。」

「傷だらけのカンナを乗せ、赤城や北面を走っていた時は余計に寂しかった。でも今のカンナは、前のカンナに戻ろうとしている。一緒に走りたい。」

「アヤの求めていた人そのものだからね。三条君は。」

 焼肉の後は、各々の車の周りでバカ話や車談義をするのだが、松田彩香は三条神流を引き連れて地下駐車場を散策する。

「私は恵令奈と百合の肉体関係があった。最近まで。私は寂しかった。寂しさ紛らわすために走り回って、日菜子の妹の恵令奈と知り合い、恵令奈もまた彼氏と別れたところで、寂しさが重なり合ってそのまま。」

 と、松田彩香が言った横を、「ごちうさ」のラッピングをしたパレットが通過。その後ろを、「ラブライブ」のラッピングをしたワゴンRの痛車が通過。

「こう、助手席に座ってこんなところへ連れられると、自分も車で来たくなる。それも、少し派手めな車でね。」

 三条神流はつぶやいたが、それを聞いた松田彩香はニヤリと笑った。

 夜遅く、お開きになった。

 三条神流はまた、松田彩香のGR86の助手席に座った。てっきり、国道50号をこのまま前橋まで帰ると思ったのだが、

「三条君の両親の許可は得ているから。」

 と、松田彩香は言いながら、みどり市内で国道50号を逸れ、銅街道を左折し、両毛線の踏切手前のラブホに入ると、三条神流の腕を掴み、ラブホへ連れ込む。

「シャワー浴びたら、いろいろやるからね。」

 と、松田彩香は言いながら、スルスルと衣服を脱ぐ。

「カンナも―。」

 と、三条神流の衣服に手をかけ脱がせ、松田彩香は自分の裸体を晒しながら、耳元で言った。

「今夜は寝かせない。」

 と。



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