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Express BRZ  作者: Elena
第五章 群サイ
64/82

群サイバトル

「あいつら―!」

 と、日菜子。無線を取る。

「カンナ。これは走行会よ。レースでは無い。余計な事するな!」

 三条神流に呼びかける。

「許可は得ている。それに、それは十分承知。最初からレースをするつもりなら、私はタイムアタックを始める前から煽っている。カンナのタイムアタックを見て、主催としっかり話をした上で、カンナを誘った。」

 松田彩香が答えた。

「ここは群サイ。「いいじゃないかちょっとくらい!」って言うバカは、谷底へ落ちる場所。そのことは分かっている?カンナ。」

「分かっている。分からないなら、最初からいきなりタイムアタックをしていたさ。」

「骨、自分で始末するのよ。」

 日菜子は舌打ちして無線を切った。

 先行は松田彩香のGR86。後追い三条神流のBRZ。

 バトルは、先行後追い方式。先行する者が後続をある程度引き離したら先行の勝ち。それが出来なければ前後を入れ替えてもう一度。これを繰り返す。だが、この方式は時として、後追いが前に出て勝つという事もある。

 食堂・売店の裏手を通過し、前方に複合のS字コーナーが迫る。

 松田彩香がブレーキング。三条神流も続く。

 そのまま、松田彩香は慣性ドリフトに持ち込む。

 三条神流もそれに追従しようとするが、ドリフトが続かず、途中でグリップになってしまう。

 加速して、S字の先の左コーナー。からの、下り勾配が始まって下りながら右ヘアピン。三条神流は松田彩香との差を詰める。

「いい感じ!付いてきなさい!手は抜かないよ!」

 高速セクション。

 松田彩香と三条神流の差は無くなり、サイドバイサイドになる。

 橋が見えた。

 三条神流、ブレーキに足を乗せる。松田彩香が前に行くがこれは安全措置だ。

 シケイン接近の標識を見、三条神流は安全のため、敢えて松田彩香の後ろに引いたのだ。

「ナイス。」

 と、カメラカーを務めるマイノータは頷く。

 日菜子もその様子を見ていたが、

「なるほど。」

 と、頷いた。これならレースをしても良いと判断したのだ。

登り勾配が始まる。S字を抜けた先、登り勾配の直角の左コーナー。そのアウト側の崖はギャラリースポット。

 再び、サイドバイサイドで左コーナーへ突入。三条神流がアウト側だ。

(行け!)

 三条神流、ドリフト体制だ。

(何を!)

 松田彩香もドリフト。

 ドリフト対ドリフトという、D1グランプリのようなバトルが、ギャラリースポットで展開される。ここには、ラモットと加賀美、磯波、高波がいるが、三条神流はアウト側の砂塵をギャラリースポットへ巻き上げる。

「ギャーッ!」と、磯波が悲鳴を上げ、高波は逃げ出し、ラモットと加賀美は目を覆う。その間に何が起きたか分からない。だが、追従していたマイノータは目の前の信じられない光景を見て言葉を失う。

「行きやがった―。」

 マイノータの前に居るのは三条神流の紺のZD8型BRZでは無かった。そこに居るのは松田彩香の紅いGR86だ。

 続く登りの右ヘアピン。

 三条神流、ギアを3に落としたが落とし過ぎた。

(ちっ!この速度なら、4だったか!)

 と、舌打ち。その間に松田彩香が迫る。だが、コーナー立ち上がりでの加速は、3速に落としていた三条神流が早い。

(3.5速が欲しいってとこかしら!)

 と、松田彩香がニヤリと笑う。

 松田彩香のGR86が迫る。

 右コーナーを駆け抜けた先、左ヘアピンが迫る。

 三条神流、コーナーのイン側にアスファルトの段差を見付けた。

(あれ使えば―。)

 と思ったが、その時には入りそびれて、アウトへ膨らんでしまい、松田彩香がインサイドへGR86のノーズを捻じ込む。

「ちっ!」

 シフトチェンジして、加速しながら、最終の右ヘアピンに飛び込む。ここには、ナガトとネルソンが居る。

 サイドバイサイドでコーナーに飛び込んで来た三条神流と松田彩香。だが、三条神流はオーバースピードで弱アンダーステア。アウトへ膨らんだ隙に、アウト側からインサイドへ飛び込んだ松田彩香とラインが交錯した後、松田彩香がオーバーテイク。これにて勝負あり。だが、この一回の模擬レースの光景は、三条神流の走りを始めて見た者達を驚愕させた。

 レースを終えたらちょうど昼飯の時間。

 三条神流と松田彩香はクールダウンの後、食堂へ向かう。

「すげぇの見た」「GR86とBRZのバトルはやばかった」「漫画の世界だあれは」と、ギャラリースポットで見ていたらしき者達の会話を聞きながら、三条神流と松田彩香はハンバーグハヤシライスを注文。松田彩香は大盛り。

「相変わらず、大食いだな。それでも、華奢。」

「あんな事やってんだもん。そりゃ、いっぱい食べてもあっという間に空っぽ。代謝が良いと言うけどね。」

 と、松田彩香は苦笑い。

「午後はどう走る?」

「カンナがまだレースやりたいなら、付き合うよ?ここは合法峠、群サイ。」

「ルールを守っているなら、だろう?俺は、お前と寝るより、お前と走りたい。」

「オッケー。付き合う。」

 松田彩香はニヤリと笑った。


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