カンナ・覚醒
三条神流、エンジンスタート。
新タイヤを履く、加賀美と恵令奈もスタート。また、松田彩香も随伴する。
(目標タイム言われたけど、アヤの感じ、クリア出来ねえとまたレイプされるぞ。)
と、三条神流は思いながら、コースイン。
1周タイヤを温める。
(前回、タイヤも温めないで走っていた。それではダメだ。タイヤを温め、エンジンを温め、車の準備運動。それを終えてからアタック。)
コースサイドから見ている望月は、明らかに三条神流の走り方が変わっている事に気付いた。
(経験積んだ事がデカイな。)
と、望月は思う。
タイヤテスト中の加賀美と恵令奈も、走りながら三条神流の走りを見る。
(筑波や赤城のレースで良い経験が出来たね。)
加賀美、頷く。だが、
(まだムラが多い。)
恵令奈の視線、厳しい。
タイヤを温めた三条神流のZD8型BRZがアタックを始めた。松田彩香のGR86も行く。松田彩香は三条神流の前を走っていた。そうすることで、松田彩香は三条神流に目標タイムへのペースを掴ませるのだ。
(よし。着いて来い。)
(あいよ。)
松田彩香と三条神流、阿吽の呼吸で走る。
「おい―。」
共に走行するヒッパーが何かに気付いた。
ヒッパーはレースにこそ参戦する機会は少なくとも。本庄サーキットのタイムは霧降要に準ずるタイムを出す。それに、三条神流のZD8型BRZが食いついているのだ。
松田彩香に引っ張られる格好の三条神流だが、走行時間が半分過ぎた時、メインストレートでの加速の際、ヒッパーの真後ろで三条神流のZD8型BRZが松田彩香のGR86の前に出たと思ったら、1コーナーの飛び込みでヒッパーの前に出る。
「なっ―!?」
ヒッパーも驚いた。休憩中のラモット、マイノータも見に行く。
「アヤの奴、手を抜いているな。」
と、ヘアピンを抜けるケルンは鼻で笑った。
だが、
「手を抜いているのはお前だケルン!」
ラモットが叫ぶ。
ラモットやマイノータから見ると山の向こうに消えたように見えるS字手前。ここで、ZD8型BRZと、ケルンのBRZはかなり接近。
そして、S字を先に出て来たのは三条神流のZD8型BRZ。
「-。」
ケルン、言葉を失う。
更に加速するZD8型BRZに、ケルンもヒッパーも付いて行けない。
「おい。アヤのタイムとカンナのタイム―。」
ラモットが計測を開始。
そうなると、霧降艦隊サーキット部隊の皆がそれに注目する。
三条神流の存在は知っているが、やはり、両毛連合の連中が流した下品な噂が先行しているだけに、その噂の奴が、松田彩香に匹敵するタイムを出しているのだから。
「まぐれか。おい。アヤのタイム―。」
「まぐれじゃねえ!アヤも本気走りだぞ!」
三条神流の後、松田彩香のGR86も食いつき、最終コーナーでGR86が三条神流のZD8型BRZの前に出た。だが、それに、三条神流も食いつく。
「止めさせろ!レース行為禁止だぞ!」
「いや、アヤはこれを抜けと言っている。」
「しかし―。」
再び、最終コーナーを通過すると、今度はZD8型BRZがGR86の前に出た。そして、GR86は早くもクールダウン走行。だが、ZD8型BRZの三条神流
はまだ3周走れそうだ。
(タイヤ死んだ。あと2周。私無しで私と一緒に走ったタイムを出せ!)
松田彩香は三条神流のZD8型BRZに向かって視線を飛ばす。
三条神流のZD8型BRZのエンジンが唸りを上げる。
ヘアピンでタイヤが鳴る。
三条神流、横Gに歯を食いしばって耐える。タイヤテスト中の恵令奈と加賀美を一気にオーバーテイクする。
最終周回に入る。
松田彩香、パドックにGR86を止めると、コースサイドへ見に行く。
最終コーナーに、ZD8型BRZが飛び込んで来る。
スポンジバリアギリギリまでZD8型BRZが攻めて来る。チェッカーが振られた。
三条神流がパドックに戻って来る。
そして、二人並んでタイムを確認する。
「今夜は、いや、今夜だけではない。何なら今からでもいい。二人でデート、出来るね。」
と、松田彩香は微笑んだ。
三条神流のタイムは、単独で走った際、松田彩香のタイムを僅かだが上回ったのだ。これに、霧降艦隊サーキット部隊全員は驚愕を露わにした。
そして、三条神流はようやっと、認められたと思った。




