赤城高原キャンプ場
アルファロメオのオーバーランの隙を突き、アルピーヌA110がBRZの背後に付く。だが、三条神流は前を走るR34GTRの後姿に集中する。
その前を見ると、恵令奈のロータス・エキシージがインテグラDC5と競り合っているのが見えた。
恵令奈は横目でインテグラが狙ってくるのを予測していた。
(峠出身で、レーシングスクールを出た点では、私達と同じ。でも、あんたらはある一点を過ぎたあたりで、とんでもない事を平気な顔してするようになった。そう。坂口拓洋。旧姓、九重拓洋を愛衣が強引に自分の中へ取り込んだ辺りから。九重拓洋。最初に聞いた時は何も感じなかった。だけど、実際に定峰峠や白石峠、松郷峠、そして、群サイやサーキットを走っているのを見た時、才能と言う物を感じると同時に、危険な香りがした。それからだ。公道レースにおいて、ホワイトレーシングプロジェクトは、サーキットのテクニックとラリーのテクニックを時と場合によって使い分ける事が、どこよりも上手くなり、追い付けなくなった。)
チラっとミラーを見た恵令奈。
「来る!」
インテグラが大沼湖面ギリギリの場所に居た。
(吠えろ!ドッカンターボ!)
坂口知恵がインテグラに搭載されたターボを活かし、一気に迫って来る。
(いきなり来るこのドッカンターボだけど、それを上手く使えば、ミサイルとなりえる。そして、フロントタイヤを湖面とコンクリート舗装の合間の溝にひっかけ、一気に迫り、赤城大沼用水頭首口の手前で行く!)
知恵の戦略を立てるスピードは早い。
そして、知恵の後に居る真穂のCRZも、ホンダツインカム製スーパーチャージャーの威力を遺憾なく発揮し、知恵の後を追う。
恵令奈も逃げる。逃げながら、三条神流を気に掛ける。
三条神流はR34GTRのスリップストリームを使っていた。
だが、キャンプ場に差し掛かった時、またも雨水が川になっていた。
三条神流、一旦引く。R34が一瞬滑った。
三条神流、ここで4速から5速に入れてR34とサイドバイサイド。R34の目の前に標識。
R34はブレーキングにより、大幅に順位を落とす。
(やはりな。ハイグリップタイヤは排水性が悪い物が多い。あのタイヤパターンだもん。一方で、こっちは、グリップ力は低いけど、雨の日強い。)
と、三条神流は頷いた。
三条神流はこれで順位を7位に上げた。
(10位以内は死守したい。)
と思う。
前方に、赤城大沼用水頭首口の橋が見えた。
「なっ!」
前方、恵令奈のロータス・エキシージが坂口知恵のインテグラに抜かれたのが見えた。
路肩と湖面の段差にフロントタイヤを引っかけたいわゆる溝走りとFF車特有のFドリを使って、一気に恵令奈のインサイドから迫り、橋の手前でサイドバイサイドになった刹那、知恵のインテグラのドッカンターボが炸裂して、恵令奈を抜き去ったのだ。




