予選
おのこ駐車場から、反時計回りに赤城大沼湖畔を周回するコース。
だが、予選タイムアタックはその一部の区間で行い、そのタイムが早い者が前からスタートする。
決勝レースは2周。
(このレースは地方戦。カテゴリーでは下位のカテゴリー。でも、油断していたら決勝にすら出られない。)
と、三条神流は思いながら、タイヤを温めて行く。
全参加台数中、決勝に出られるのは上位35台だ。そして、決勝で上位10位に入れば、シード権獲得として、自動的に次戦の参加権が得られ、決勝に出られただけでも次戦の優先参加権が得られるのだが、それが出来なければ、次戦の参加申し込みが始まると同時に申し込みしなければならない。だが、最大参加車両数が限られる物も多々あり、そうした場合、早い者勝ちや抽選という形で予選にすら出られないことだってある。
そして、この赤城大沼湖畔を含む全5戦のレースは、実を言うと公道レースの下位カテゴリーで、この上にはJRCAやWRCが協賛するレースがあり、ここに坂口拓洋や坂口愛衣が出場している。
三条神流も出場資格はあるが、日程が合わなかったことに加え、これに参戦するにはそれなりの競技車両を用意しなければ、予選にすら出場させてもらえないのだ。
大桐赤城神社を横目に、降り始めた雨の為、滑りやすい路面でタイヤを鳴らしながら通過し、黒檜山登山口を通過して大沼湖畔の道幅の狭い区間に突入する。
県立赤城公園キャンプ場を風のように駆け抜ける。大沼湖畔ギリギリの場所を走るため、走行風で大沼の湖面にさざ波が起きている。
(決勝レース、ここで抜くのは不可能だ。という事は、ここ以外が激しい戦闘になるだろう。)
と、三条神流は思う。
大沼の湖尻。赤城大沼用水頭首工の橋が見えた。
この時、三条神流は5速まで一瞬上げていたが、4速にまで落とし、橋を飛び越えるとアクセルを踏み込む。
ストレート区間を鉄砲玉のように走り抜け、青木旅館前のコーナーで初めてドリフト走行。そして、湖尻厚生団地入口バス停で赤城道路に合流すると、高速セクション。
そこで、シビックtypeR FL5を抜く。
(おい!お前シビックのクセしてなんでこんなところノタノタ走ってんだ!レーススピード出せねえなら家でエロビデオでも見てウハウハしてろ猿!)
三条神流のZD8型BRZがシビックを追い越す。
大桐駐車場を通過し、赤城公園ビジターセンターのT字路を左折。
三条神流、ここでもドリフト。
派手にタイヤが鳴る音が、おのこ駐車場にまで轟いた。
そして、ここで計測終了。
三条神流のZD8型BRZがおのこ駐車場の仮設パドックに戻って来た。
タイムが直ぐに発表される。
恵令奈はトップだ。
来シーズン、恵令奈はこの上のカテゴリーへ進出する事になっているが、その前に、恵令奈はこのカテゴリーで誰にも破られないレコードを残すつもりだ。
しかし、その恵令奈が驚いている。
ライバル坂口真穂、坂口知恵のタイムを見たのではない。
「嘘でしょ、カンナ―。」
恵令奈が見たのは三条神流のタイム。
10位の位置に、三条神流が居たのだ。




