足尾本山
草木ダム湖畔のワインディングロードは沢入駅まで。
ここから足尾の町までは、国道122号の一本道だ。
「はぁっ」と、三条神流の溜め息。
(いつもこれだ。まともに明るい時間にデートしようにも、日菜子や恵令奈、玲愛が入って来て、二人きりになる事は夜。それも、ラブホでレイプされている時。前の彼女、美穂の時もそうだった。なんで、俺の気持ちに横槍入れるんだよ。そして、いつも、その第三者の横槍で、積み上げた物が台無しにされる。ふざけるなよどいつもこいつも。だから目的の為なら手段を選ばないって決めたんだ。)
と、三条神流は思う。
なぜなら、松田彩香と三条神流の2台だけだったのに、今、三条神流の後にロータスが2台付いて来ているからだ。
日菜子と恵令奈。二人と松田彩香の会話を、三条神流は遮る事は出来ず、また、遮る権限も与えられておらず、結局4台体制の隊列だ。
原向駅を通過し、わたらせ渓谷鐡道の線路と立体交差して、足尾の町に入ると、旧街道である銅街道に入って足尾の町の中心部を通り、通洞駅、足尾駅を通過して、わたらせ渓谷鐡道の終点である間藤駅を通過。行きついたのは、足尾銅山の中心だった足尾本山駅。今は廃駅になり、かつての鉱山施設とともに、その残骸を今に残している。
赤倉バス停の転回所から、バックで古河橋に入ってそこで車を止める。
「こんなところに。路上駐車じゃねえか。普通に駐車違反。」
三条神流は舌打ちする。
だが、その舌打ちの意味は別にあった。そして、恵令奈と日菜子は勿論、松田彩香が一番その意味を分かっていた。
「分かっている。」
と、松田彩香は肩を落としながら言った。
「咲さんも、草木通過してこっち来るって。」
恵令奈が言う。
「そっか。」
「随伴あり。」
「ビックセブン?」
「そうらしい。」
その話を聞いた三条神流、嫌になった。
三条神流、いきなりZD8型BRZに飛び乗るとエンジンをかけて赤倉バス停から、更に山を登って足尾ダム方面へと飛び出して行ってしまった。
路肩の埃を巻き上げながら、三条神流のZD8型BRZは足尾ダムまで登って行くと、バスの転回所で盛大にスピンターンを決める。
そしてまた、赤倉バス停まで降りて来ると、そこでまた転回。
不満が爆発して、憂さ晴らしをしているのだが、ただ闇雲に走っているのではない。
(ターゲットタイムマーク!)
赤倉バス停から足尾ダムまでの往復のタイムを計って、タイムアタックをしているのだ。
龍蔵寺前バス停を飛び越えるように通過。
横目に、足尾本山のお化け煙突を見ながら駆け抜けると、前方に右コーナー。
タイヤを鳴らして通過し、橋を渡って緩い左コーナーを通過。
ストレートを一気に加速しながら駆け抜ける。
緩いS字を抜けた先が、足尾ダムのバス転回所。
そこでスピンターンをして、また戻る。
赤倉バス停で再度ターン。
「よし次!」
タイムを確認すると、もう一度アタック。
バックミラーを見ると、遠くにダークグリーンのN-ONEが見えたが無視だ。
だが、その周回を終えた所で、松田彩香に止められた。
「やるならここでやれ。」
と、松田彩香は案内を見せる。
「群馬サイクルスポーツセンター。通称「群サイ」の走行会の案内だ。行くだろう?」
と、ナガトが言う。
「霧降艦隊も行くってさ。」
「要するに、強制参加だろう?ああ。分かった。行く。行きゃいいんだろ。」
三条神流、不貞腐れる。
「話は草木でしよう。」
ロドネイが指で草木ドライブインの方向を指す。
「なら、最初から草木で集まれば良かったのでは?」
三条神流舌打ち。
「察しろ。お前らの立場-。」
ナガトが言う。
「前にも言った。」
「くだらない。」
三条神流は溜息を吐く。




