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Express BRZ  作者: Elena
第四章 赤城大沼公道レース
41/82

トレーニング

 筑波サーキットのデビュー戦を終えた後、三条神流は休みの都度、赤城山の山頂カルデラ内にある赤城大沼湖畔を走り込む。

 赤城大沼湖畔は2車線分の道幅がある部分が半分以上を占めている。

 だが、青木旅館から黒檜山までの区間は1.5車線程度の道幅。

 更に大沼側にガードレールが無い部分もあり、一つのミスで大沼に飛び込んでしまう。

 隔日勤務明けの日、自宅で僅かな時間だけ仮眠した後、夜明けの赤城道路を駆け上る、紺色のZD8型BRZ。

 スタート地点を、青木旅館に設定。

 山頂カルデラ壁を一気の乗り越え、大沼湖畔に降り、青木旅館への分岐を通過するとそのまま、反時計回りに大沼湖畔を1周する。

 湖尻厚生団地入口バス停の交差点を、タイヤを鳴らしながら右折。

ストレート区間をアクセル全開で駆け抜ける。

 赤城少年自然の家バス停を通過し、右コーナーを通過。横目に、大沼対岸の大桐赤城神社を見ながら、大桐駐車場のコーナーを駆け抜け、赤城山第1スキー場を通過。ビジターセンターのT字路を左折。ブレーキングでフロントが沈み、盛大にタイヤが鳴る。

 2速まで落とした後、3速にシフトチェンジしながら、覚満川を渡り、右コーナーを加速しながら通過。公衆便所前で4速。駒ヶ岳登山口を5速で一気に通過すると、左側におのこ駐車場。

 4速にシフトダウンして、湖畔に突入する。

 時折、タイヤを鳴らしながらコーナーを抜けていく。

 啄木鳥橋駐車場を通過して、森の中に入る。

 大桐赤城神社を通過し、黒檜山登山口のT字路を左折して大沼湖畔の狭い道幅の区間に突入する。

 道幅の狭い区間は、路肩の砂塵を舞い上げながら駆け抜け、赤城大沼用水頭首工。大沼の湖尻で沼尾川の流れ口の橋が見えた。ここはこの区間で最も道幅が狭い上、橋なのでエスケープも無く、この区間で最も危険な場所といえるだろう。

 4速で、エンジンブレーキを利かせ、左にコーナリングしながら、橋に突入する。橋を飛び越えるように渡って、再びアクセルを踏み込んで一気に加速。

 青木旅館を通過し、スタート地点に戻って来た。

 ここまでのタイムを記録する。これが、今後の練習時の参考タイムになる。今日は、この参考タイムを取る事が目的だ。本当は、このままもう1周したいのだが、日が昇って来た上、ゴール地点を通過した際、一般車の姿を確認し、一般車が動き出している事を読み取った。この状態で練習する事は危険と判断し、練習終了だ。

「カンナ取れる?」

 と、松田彩香からの通信。

「おはようサンボル。」

「赤城?」

「そ。」

「鳥居峠で待ってる。サンボル降りるでしょう?桐生でモーニングしよ?」

「了解。」

 鳥居峠へ登って行く直線の上り坂を、紺色のZD8型BRZが朝日を照返しながら登って行く。

 三条神流は鳥居峠の駐車場に、朝日を背にしたシルエットになっているGR86と、その横にたたずむツインテールの眼鏡娘を見た。

(綺麗だな。)

 と、思いながら、それを撮影。

 松田彩香は紺色のZD8型BRZを見ると、もたれ掛かっていた柵から立ち上がり、真紅のGR86に乗り込む。ZD8型BRZの三条神流とアイコンタクトを送ると、松田彩香先行で、鳥居峠から赤城サンダーボルトラインへと突入する。

 小沼駐車場までの短いヒルクライム。GR86はタイヤを鳴らしながらコーナーを抜けていくが、同じスピードで同じタイヤを履く三条神流のZD8型BRZも負けじとタイヤを鳴らす。

 だが、奇妙な事が起きる。

 同じスピードで、同じように走っているのに、三条神流のZD8型BRZが、松田彩香のGR86に吸い寄せられていくのだ。

「スリップストリームを学んだね。走行中の前走者の真後ろに発生する空気抵抗の少ないエリア。これを使用する事で、空気抵抗を減らし、持っている力以上のスピードで走ることが出来る。」

「何となく、やってみた。」

 と、答える三条神流だが、スリップストリームではなく、コーナー立ち上がりの加速時に、ZD8型BRZが、GR86に奇妙に接近するのは何故か分からない。

「MTの方が少し早いのかな。」

 と、松田彩香がぼやいたのが聞こえた。

 道幅が狭まるサンダーボルトラインに突入すると、スピードは両者落ちる。

 そして、サンダーボルトラインを抜けると、からっ風街道を一気に駆け抜けるが、ここで松田彩香と三条神流はバトルモードになる。

 三夜沢の交差点を左折し、ペースを上げる松田彩香の紅いGR86に、三条神流の紺のZD8型BRZが喰らい付く。

 登り勾配の右コーナー。

 両者共にエンジン音が高鳴る。

 左、右のS字。

 松田彩香のGR86、三条神流のZD8型BRZ共にタイヤが鳴る。

(タイヤが鳴る。それは、タイヤのグリップ力を限界まで引き出しているという事。)

 と、三条神流。

 直線区間。

 荒砥川を渡る。

 両者アクセル全開。

 緩い左コーナーを抜け、電力研究所前のストレート区間。この先は左コークスクリュー。

 三条神流がここでアウトに振る。

「アウトから?無理よ!」

 松田彩香がコークスクリュー手前のブレーキングを一瞬遅らせて前を塞ぐ。

 三条神流、サイドを引いて後を流して強引にインへ飛び込もうとする。

 だが失敗。

 三条神流は無理にインへ飛び込もうとしてABSが介入。それにより、ペースを乱した。

 松田彩香がその間に一気に加速して行く。 

 三条神流も付いて行こうとしたのだが、コークスクリューを抜けた所の、知的障害者施設の意味不明な信号に引っかかって終了である。

「死ね畜生め!」

 三条神流が怒鳴ったのは、知的障害者が渡るわけでも、他車が来るわけでもなく、知的障害者が押しボタンを押したものの、どこかへ行ったのを見たからだった。


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