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Express BRZ  作者: Elena
第三章 茨城・筑波
39/82

三条神流のサーキットトライアル

 一応、イメージトレーニングはしている。

 なので、三条神流の頭には筑波サーキットTc2000のコースが入っている。

 ピットロードを出てすぐに、第1コーナーを抜けると、S字。その先に、第1ヘアピン。ストレートを挟んで80Rからダンロップブリッジを潜って第2ヘアピンに飛び込むと、筑波サーキットで最も長いバックストレートをアクセル全開で駆け抜け、その勢いで、最終コーナーに飛び込んで行く。

 紺色のBRZを、松田彩香は見守りながら、タイム計測。

(順位なんか気にするな!今はとにかく、無事にサーキットトライアルを終える事を考えろ!クラッシュしたら、パーだから!)

 第1ヘアピン。

 霧降要が見守る前で、三条神流のBRZがハザードランプを点灯させてクリアする。

(ABS利かせているが、ちょっと危ない。ちょっとオーバースピード気味だ。)

 と、霧降要は思う。

 一方で、三条神流は半分パニックだった。

 頭の中に詰め込んだ筈のコース図、これまで培ってきた物、そうした物が消えてしまい、頭の中が真っ白だったのだ。

(タイム、これでは―。)

 2ヘアの飛び込み。

 イン側からAMG GT-Sが強引にオーバーテイクしていく。

「っ!」

(しまった。後ろへの警戒を―。)

 三条神流、バックストレートでコースを空けて後の車を行かせる。

(―。そうだ。)

 三条神流、隊列後部のS2000の後ろに付く。

(渡り鳥のように。アヤと、東郷三姉妹と走った時のように、後に付いて走る。そうすることで、コースを思い出せる。)

 隊列に付いた三条神流の姿を、1ヘアのスタンド席から霧降要が見る。

(それでいい。それで行け。)

 松田彩香もメインストレートを通過する三条神流の様子を見た。

(パニックになったなら、そうするのよ。変なことするな!)

 1ヘアスタンド席から様子を見る霧降要と、S2000に続いてS字を突き進み、1ヘアに突入するBRZの三条神流の目が合った。

 三条神流、ヘルメットの中で頷いた。

 アイコンタクトで、霧降要や松田彩香の言いたい事が伝わったらしい。

 S2000に引っ張って貰う格好だが、これはレースではなく、タイムトライアル。であるならば、パニックになって下手な事をして滅茶苦茶になってクラッシュする恐れのある事をするのではなく、速い車やある程度経験のある車の後に付いて、引っ張って貰い、走行ラインを乱すことなく、冷静に走る事を徹底する。まして、三条神流初の競技走行。仮に筆記試験で合格しても、この走行で失敗したら、Aライセンス取得は出来ないのだ。

 バックストレートで加速するS2000に続き、アクセルを踏み込み、加速する三条神流のBRZ。だが、何かがおかしい。

(行ける?)

 三条神流のBRZの方が、前を行くS2000より加速が良い。

 迷っている間に、身体が反応した。

(スリップストリームに入っている。行くつもりか!?)

 霧降要が、三条神流のBRZがS2000の後に付いた後、S2000との差を縮めているのに気付いた。

 だが、S2000の前に速度の遅いFK7。

(三条、気付いているのか!?今行ったら―。)

 霧降が思うが、三条神流は最終コーナー手前でS2000のアウトに出る。

 S2000のインサイドにいたFK7はアンダーステア傾向の強いFF。案の定、アンダーステアを出し、しかもオーバースピードだったのも相まって、アウトに膨らみ、S2000の走行ラインとぶつかる。

 S2000がブレーキを蹴飛ばしたが、FK7もそのタイミングでブレーキを踏むのだから、S2000はラインが乱れる。

「ギャッ」と、一瞬タイヤが鳴る音が、最終コーナーから聞こえた。

 松田彩香が何かと思うと同時に、三条神流のBRZがタイヤを鳴らしながら、S2000とFK7を同時にオーバーテイクして、メインストレートに飛び込んで来たのだから驚いた。そして、三条神流はS2000の前にいたレクサスLC500の背後に付ける。

「加賀美取れる?」

 松田彩香はダンロップブリッジのスタンド席で様子を見ている加賀美に連絡を取る。

「ええ。」

「カンナ、S2000を抜いた。今、カンナの前にはレクサスLC500。変な流行の漫画アニメじゃないんだから、BRZで抜くのは無理だと思うけど、よく見ておいて。」

「分かった。」

 1ヘアを抜けるレクサスLC500が見えた。

 どう考えても、LC500をBRZが抜くのは不可能なのだが―。

「なっ!?」

 1ヘアの立ち上がり加速で、三条神流の紺色のBRZがレクサスを抜いたのだ。

(ZC6型ではなく、ZD8型である三条君のBRZは、ZC6型より馬力がある。でも、レクサスは470馬力。その差は倍近いよ。)

 だが、レクサスはその後、後続のS2000やFK7にまで抜かれたのだから納得した。

「アヤ。あのレクサス下手。あれは抜いて良し。それより、FK7とS2000を今抜いて行った、ジャガーXK。あれが早い。後続の処理上手くやれるか―。」

 加賀美の心配をよそに、三条神流のBRZが最終コーナーを抜け、メインストレートに飛び込む。その背後、ジャガーXKが来る。こちらは速い。

(あれは速い。)

 三条神流、一瞬、ミラーに視線を飛ばすと、ウィンカーで後続に合図を送る。

 ジャガーXKが前に行くと、それに続いて、981型ポルシェ・ボクスターも前に行く。

 三条神流はポルシェの後ろに付いて、また引っ張って貰う格好を取る。

 相手がジャガーやポルシェでは、勝ち目は無いが、ジャガーやポルシェが背後から迫ると、前に居た遅い車が退いて行くのだから、遅い車に引っかかって失速することが少なくなった。

 そうした恩恵を受けながら駆け抜けるとまたも背後から速い奴が来る。

 R35GTR。

 メインストレートに戻って来たタイミングでR35を前に行かせようとしたタイミングで、チェッカーフラッグが振られた。



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