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Express BRZ  作者: Elena
第一章 出会い、SUBARU BRZ
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彼の帰還

 碓氷峠を越え、三条神流は群馬に帰って来た。

 いや、逃げ帰って来た。

 長野でバス運転手をしていた三条神流。

 大学時代からの彼女である、南條美穂との交際も順調で、就職したアルピコ交通のバス運転士の仕事も順調。高速バスにも勤務するようになった上、バス運転士の中でもエース級と言われる貸切るバスへの乗務に向けた訓練が始まった矢先、事件が起きた。

 南條美穂が浮気したのである。

 浮気した挙句、その責任を三条神流に押し付けた。

 浮気相手と三条神流の勤務する路線バスに乗った際、あまりの非行に三条神流も怒りを募らせた上、走行中、南條美穂は三条神流の操るいすゞエルーガのハンドルをゆする等、一歩間違えれば大惨事になりかねない行為をしたため、三条神流は乗車拒否。これによって、南條美穂との関係は一気に破綻したで終わらず、なんと、アルピコ交通を誹謗中傷。三条神流は精神を病み、やむを得ず、アルピコ交通を退職し、生まれ故郷である群馬に戻って来たのだ。

(なんでこうなったのだろう。)

 と、三条神流は肩を落とす。

 HONDAフィットシャトルを改造したキャンピングカーは、横川駅を通過し、妙義山を横目に見ながら国道18号を走る。

 安中の町の中心部に入ると、東邦亜鉛安中製錬所が右側に見える。夜に通過すると、その灯りがまるで「宇宙戦艦ヤマト」の彗星帝国のようであることから、三条神流は「彗星帝国工場」と呼んでいた。その、彗星帝国に武器弾薬を運ぶ軍事列車のような貨物列車が、東邦亜鉛安中製錬所の最寄り駅である安中駅に入って行く様子が見える。福島県から来たいわゆる「安中貨物」が、安中駅に入線するのを尻目に、三条神流は碓氷川を渡って、高崎環状線に入って少し走り、国道17号に入ると、三条神流にとって懐かしくも思える物が見えて来た。

 日本一の高さを誇る県庁舎。前橋の群馬県庁である。

(帰って来たのだな。でも俺、この後どうすりゃいいんだろう?)

 と、三条神流は溜息を吐く。

 前橋市文京町の実家に着いた。

 だが、一応「ただいま」とは言えたものの、その後が続かなかった。


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