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FAKE PRAY -偽りの願い-  作者: ぽちかる
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過去

俺こと、天雲 蒼は現在18歳。地球にいたころは高校3年生くらいだった。

くらいだった、ってところがミソで。

実を言うと、高校1年の16歳のときに大きな事故にあった。


大きな外傷もなく、目を覚まさないことが不思議なくらいだったと後に担当医から聞いた。

しかし、事故にあってから2年後、俺は前触れもなく目を覚ましたらしい。


事故のときの状況も、うろ覚えで参考になるようなことはなく。

目撃者もなしということで、どうしてそうなったかは未だに分かっていないらしい。

ただ1つ覚えていることはある。

それはトラックに轢かれる事故の直前。当時の俺の彼女である嚆矢こうし らんが助けてくれたということだ。

これだけはしっかりと覚えている。


ただ、現実とは残酷だった。

目を覚ましたことを聞き、駆け付けた親や友人の中に助けてくれた濫の姿はなかった。

俺は、親や友人に濫のことを聞いた。しかし、返答は期待とは大きく違った。


「濫?誰のことだ…?」

「蒼…お前に彼女なんていなかっただろう」


勘違い?夢?そんなわけない。

事故にあう前の日常でだって、一緒に過ごした教室での、家での思い出もあるというのに。


濫に会いたい一心でリハビリをこなし、自由に歩けるようになるまえでに約半年を要した。

半年後、最初に向かった先は濫の家だ。濫と面識がないわけがない。


しかし、現実とは非情だ。

俺の記憶に残る濫の家。そこには建物などなくただの空き地となっていた。

到底受け入れることのできない俺は、近所の人に聞き込みもした。

しかし、事故前の2年前どころか、ここ5年は空き地になっているようだ。

夢だったのか…。勘違いだったのか…。納得はいかないが現実が突きつけられる。


2年間も離れていた学校に行く気も正直起こらず、俺は濫との思い出にすがりつく日々が続いていた。

記憶に残る限りの思い出の場所を訪れ、あてもなく探し回る日々。

家族もだが、俺も段々と精神的に参ってきてしまっていた。


そして目を覚ましてからもうすぐ1年ってときに、突然それは起こった。

思い出の1つでもある、初詣などに来た神社に行ったときだ。

ふと、頭の中に聞きなれない声が響いた。


「願いを叶えたくはないか。」


辺りを見回すも誰もいない。姿は見えないが、声は続けて聞こえてきた。


「地球とは違う異世界。そこではどんな願いも叶えられるという。お前にはその資格があるようだ。」


普段なら不気味だしその場をすぐに去っただろう。ただその時の俺は藁にもすがる気持ちだった。


「どんな願いも叶うなら俺は行く!行くにはどうしたらいい!」

「行くにはこの世の全てを捨てなければならない。自分が存在していたという概念すらも。誰からもお前のことは思い出されることはない。それでもいいのか。」

「そんなことですむなら構わない。俺は…俺を助けてくれた人に会いたい。ただ会いたいだけなんだ!」


ふとした沈黙。神社で1人怒鳴り散らかしている人にしか見えない。周りに人がいなくてよかったと冷静になって考える。


「ふむ、即決見事。では、目をつむり、自分の願いのことだけを必死に考え続けろ…。さすれば、道は開かれん。」


俺はその場で目を瞑り、ひたすら濫のことを考えた。

また会いたい。話したい。目を瞑ると思い出される素敵な笑顔をまた見せてほしい。


目を瞑ったまま、俺は意識が遠のいていくのを感じていた。

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