その12 渦巻く天空
ある日、昔登ったことのあるスカイツリーほどの高さがある木を眺めているときに、フッとひらめく。
この木の天辺からなら、樹海全体を見ることが出来るのではないかと考える。上手くいけば、遠くにある街も見えるかもしれないと心を躍らせ、急いで登るための準備を始めた。
目測で幹の直径約百メートル、高さはよく分からないが、だいたい五百メートル以上はありそうな巨木を攻略したのは、登り始めてから十日が経過したころだった――。
垂直で平面にも見える木の幹には、手と足をかけられる所がなかったため、石を砕いて作ったナイフで溝を掘る。しかし木の再生能力はとても高く、深さ十センチ程度の溝が数分で元に戻ってしまった。
作戦を変更し、ロッククライミングのように手で掴める出っ張りを見つけながら登ることにすると、これが思いのほかうまくいく。
疲労がなかったため、指や腕の持久力が一切落ちず、一度掴める場所を見つければ、片手でも一日中ぶら下がれることを発見したことが大きな躍進となる。この特性と溝掘りを併用し、出っ張りがあれば掴み、なければ溝を掘り、木が再生される前に次の出っ張りまで登り進める。
登り始めた当初は、木にぶら下がった状態でバランスをとり、片手で溝を掘るのに難儀し、何度も落下したが、コツを覚えると一日もあれば登り切れるようになっていた。
――苦労して、やっとの思いで天辺まで登った結果は、何も見えなかった……。
巨木を三分の二ほど登り進めると枝が生えた部分に到達し、ここからは掴める部分が一気に増えることで、登る速度が加速する。更に進んでゆくと風が吹き出し、上に登るにつれて風の威力は増し、砂埃で視界も悪くなってゆく。天辺付近はミキサーのような状態で、木の先端が千切られては再生するということを繰り返していた。
不死身とはいえ、体の強度は普通の人間だったため、ミキサーのような暴風の中では、ワイシャツも皮膚も裂け、飛んでくる石や木の破片で目玉は潰れ、しまいには頭が千切れ飛んでいき、まともに前を見ることが出来ずに終わる。
その後も何度か木に登るが、やはり上空は常に風が吹き荒れ、視界は悪く、遠くを見ることは叶わずにいた。




