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その11 不死身の肉体

 ――人体実験を繰り返し、半年が過ぎた頃、いよいよ難関ともいえる、脳と心臓の破壊を試みてしまう。このころには精神はおかしくなっていて、無敵の自分に酔っていた、というよりもヤケクソ気味だったように思う……。


 これまで試したことは、腕や指を嚙み千切り、脚に大きな石を叩きつけて骨を砕き、蔦で作ったロープで首を吊り、目玉に枝を差し込み……これ以上はおぞましくて、口にする気も起きないが、試していないのは脳と心臓の破壊だけであった。


 もし、この体の異常の原因が脳か心臓、またはそのどちらにもあった場合に、それらを傷つけてしまったことで、二度と回復しない事態に陥れば、自分はその瞬間にこの場で死ぬことが確定している。だがこの恐ろしく奇妙な樹海で生き延びて家へ帰るには、一か八かでも、この難関を突破しなくてはならいと肌で感じていた。


 六メートルほどの崖を登り、そこで丈夫そうな枝を削って作っておいた杭の先端を、胸に押し当てたまま手で持って固定する。そして岩がむき出しになっている地面に向かって躊躇なく飛び降りた。


 見事に杭は心臓を貫き体の反対側まで貫通するが、何事もなかったかのようにすぐに立ち上がり、死んでいなかったことよりも、杭が綺麗に突き刺さったことの方が嬉しくて喜ぶ。突き刺さっていた杭は、体にめり込み過ぎて掴めず、前方へは引き出せなかったため、崖を背にしてよりかかるようにして押し戻した。


 一番手間がかかったのが脳の破壊だった……。崖から飛び降り、頭を強打しても頭蓋骨が粉々になる程度で、脳が破壊されたのかが確認できず、そのためちょっとした装置を自作することにした。


 ……今思い返せば、人体実験はこの樹海での唯一の時間つぶしの趣味になりつつあり、楽しんでいたたようにも思える……。


 太い枝がある木の下に、大きくて平らな面のある石を置き、すでに作ってあった蔦のロープを木の枝にひっかけ、片側には自分の頭よりも少し大きい石を縛り付けた。


 蔦で引っ張り上げた石を十メートルほどの高さから落とし、敷石の上に落下するように調整する。白いメロンのような果実を頭に見立てて試したところ、果実は気持ち良い破裂音を響かせ粉々に飛び散る。


 普通ならば、自分がそうなると想像して震え上がるところだが、よしと声を漏らし歓喜の表情で両手の拳を握りしめていた。


 敷石の上に頭を乗せ、握っていた蔦から手を離す。石はまたたくまに眼前にせまり視界を失う。実験は成功し、大きな破裂音が響き、一瞬だったが自分が百人くらいいるような感じがした後、頭は何事もなかったかのように元に戻っていた。


 脳も臓器も全て飾り、これを生きていると言うかは不明だが――、要は死ぬことはできない体……不死身になっていた。

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