必殺!鼻スライディング!!
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黒瀬、ここはどうだ?
《う~ん……未成年の気配はあるが、そういったもんじゃない。ただ宿泊しに来てる様子のようだな》
サンクス。
これで三棟目、未だに遭遇することはなかった。
まぁ、遭遇しないことが良い流れなのだろうけども。
委員長たちからも連絡は来ないし、心配になって電話を掛けると二人とも直ぐに出てくれたから、変な集団に連れ去られてないことも黒瀬が確認してくれた。
今回は見当違いか、石越はここに来てないんじゃないのだろうか……。
もしかしたら他の場所にいるのかもしれない。
時間は十七時四十分、タイムリミットまで残り二十分どこを探そうか。
因みに黒瀬。
《なんだ?》
俺らが去った後に、石越らしき気配はあったか?
未成年が入ったっていう情報でも構わない。
《無い》
オッケー、じゃあ戻らなくて良さそうだ。
取り合えず今は人通りの多い場所に出よう。ホテル一棟一棟の中を調べてくれた黒瀬が、気分を害してきている。
やっぱラブホテルがキツかったか。
《う……吐きそう……》
もうちょっと待ってくれ。吐かれると意識無いのに俺が吐く形になる。
都心部での吐瀉物生産は避けたいと必死になり、ホテルから距離を置いて人通りの多い賑やかな歩道に飛び出る。
《はぁー……はぁー……》
大丈夫か?
《ああ……だが今回のは正直キツい。ただでさえ嫌いな下劣極まりない様子を感じなきゃならないからな……》
本当にありがとうな……。
《構わねぇよ。それでお前が納得するなら協力するまでだ……》
黒瀬……。
《なんだ……?》
以前欲しがってたゲームソフト、帰りに買っていこうか。
《マジで? 頑張るわ》
さっきまでの具合悪さは何だったのかと言わんばかりの恐ろしい回復力だ。
《じゃあ残り時間はどうすんだ? この辺を適当に見て回るか?》
ちょっと待ってくれ。確か調べた際にあと一棟ぐらいあった気が……。
《げぇ~またホテル行くのかよ。どうせいないだろうし、ここら辺で良いだろ?》
憶測を誤るな。これでもしその場所に石越がいたらどうする?
事後が成立する前に止めるんだ。
《はぁ……なんでそんな一生懸命な訳?》
友達だからに決まってるだろ。
《あっそ……》
さてと、まだ行ってないホテルは……と。
あった。ここから徒歩約八分、走れば余裕だ。
黒瀬、接近する毎に未成年がいないか先に確かめておいてくれ。
《へいへい……》
じゃ、ちょっくら全力疾走するか……!
人混みを避けるため、歩道と車道の僅かな間の道に出て走る。
自然と腕を振る動作の中、こんなにブレザーが窮屈で邪魔になるとは思わなかった。
脱いで鞄に仕舞いたかったが、それをしている時間が勿体ない。
いるとは確実に言えないが、一分一秒でも早く辿り着いて石越の過ちを止めることができるならブレザーの窮屈なんて全力で無視すれば良い。
いなければそのまま帰るだけだ。というかそれが望ましい。
黒瀬、どうだ?
《う~ん……》
なんだよ、いたのか?
《…………いた》
マジか!?
マズい、急がないと。
《ほらそこ》
ズザアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア
黒瀬に言われ、石越凛を見掛けた瞬間にバランスを崩して顔面から多いっきりコケた。
スライディングで鼻の先端が熱くなった。
もう少し早く言ってくれよ……。
《ごめん。普通に近くにいたから気付いてるとばっかり……》
まぁとにかく、見付けれたは見付けれた……。




