表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
89/196

やはりギャルは怖い……

 ▲




 三限目の数学が終わり、十分間の休息がやってきた。


 あ~もう!

 なんで『数学Ⅰ』と『数学A』って分けてあるんだよ!

 ひとつにまとめろ!


《そしたら余計点数取れねぇだろうな》


 お前は勉強しなくて良いからそんな他人事言えるんだろうな。


《なにを失敬な! 俺だって学んでるんだぞ!》


 へぇ、なにを?


《あの数学教師の残った髪の本数が0本だってことを!》


 スキンヘッドだからな。


《俺たちも将来……ああなるのかな?》


 やめて想像しないで!


 黒瀬を一度黙らせ、次の地理の教科書を用意しておく。


「ねぇ、シロっち~」


 左からダルそうに呼ばれた。


「どうした?」


「ポーチ返して~? メイク落ちて来ちゃった」


「ダメだ。放課後まで待て」


「ケチ~……。せっかくシロっちに、うちが可愛くなるところ見せたかったのに~」


「なんだ、自分のスッピンに自信無いのか?」


「ちげぇ~し~! 自信あるし~!」


「だったらそれで良いじゃんか」


「うちは化粧しないと落ち着かないの~!」


「じゃあほら、蛍光ペンと修正テープ」


「それでどうしろっつうの……?」


「奇跡的にイケるかもしれないぞ?」


「ならねぇし。マジウケ~!」


 テンションが高まったのか、後頭部で手を組み、椅子に背を預けだした。

 ただでさえデカい胸部が無防備状態になり、目のやり場に困る。


「ところでさ~、シロっちって何で風紀委員に入ったの?」


「スカウトされたから」


「エイプリルフールならもう終わったよ?」


「これマジ」


「え~、マジヤバッ!? きっかけ何なの?」


「あんまり言いたくないんだけど……」


「じゃイイや」


「あっそ……」


「ごめんごめん、冗談冗談! 話して話して」


「ああ……。あんまり大きい声では言えないんだが……」


 耳元まで近寄ると、石越も感付いて寄ってきてくれた。


(……三年の不良たち全滅させた)


「…………?」


 黙って指を差され、静かに一回頷く。



「…………。えぇーーーーーーーーーッ!?」



 大音量の驚きは、当然クラス中の注目を集めた。

 咄嗟に手で口を封じる。


 それから〝小声で話すようにする〟ジェスチャーを見せられ、手を退ける。


(え、三年の不良って……西先輩でしょ?)


(そうだ。その人たちに校舎裏呼び出されて…………倒した)


(へぇ……シロっちって、意外と強かったんだ~。格闘技とか習ってたの?)


(まぁ……そんなところ……)


《感謝してね?♪》


 ああ、ありがとよチクショー!


「ふぇ~、うちが学校サボってたときにそんなことがね~」


「寧ろお前は何で学校休んでたんだ?」


「ちょっと友達と遊びたくて……!」


「放課後じゃダメなのか?」


「ん~、放課後だとみんなデートに行っちゃうからね~。遊べるの午前中だけなんだ」


「そっか。じゃあ今日来たのは、その友達と遊べなかったからか?」


「ううん、シロっち誘おうと思って」


「は?」


「シロっち誘って~、放課後デートしようかな~って思ったんだ~」


「わりぃな。放課後は風紀委員で大忙しなんだ」



《今日は科学部だろうが!!》



 なにもそんな怒んなくても……。


「ちぇ~、なんで風紀委員なんかに入ったの? 行ってもどうせあの眼鏡女しかいないんでしょ?」


「他にもメンバーはいるぞ。朝一緒にいるの見えてなかったか?」


「うん、シロっちしか見てなかった♪」


「そりゃどうも」


 嘘なのか本当なのか、返事の真偽が掴めない。


「石越さん」


「あ? なんだよ」


 反射的なのか、国見が話し掛けてきたと同時に眉間にシワが寄った。

 室内の空気がピリ付くのを感じ取る。


「足を下ろしてください」


「は?」


 注意の内容は理解できた。

 会話に夢中で気付かなかったが、石越は机の上に足を乗っけていた。


「だから何だよ、悪いのかよ?」


「はい。まず、机の上に足を乗せること自体が常識的に間違っています」


「ま、まぁまぁ落ち着いて。気付かなかった俺が悪いし、意図的にやった訳でもないんだからさ―」


「白石くんは黙っててください。例え癖だったとしても、それを仕方ないで済ませる訳にはいきません。今の行動は減点対象にさせていただきま―」




 ダンッ




 その音は決してウルトラセ○ンの主人公の名前を表現した訳ではない。


 石越が素直に足を下ろしたあと、机を強く叩いた音だった。

 立ち上がり、また両者対面する。


「何なんだよオメェは! うちのやること全部気に入らねぇのか!?」


「そう思っていただいても構いません。ですが、節度ある行動を取っていただければ、わたしが声を掛けないことをそろそろ理解してください」


「チッ! だったら帰れば良いんだろ帰れば!」


 机の横に掛けていた鞄を取り、廊下に向かっていく。

 進行方向にいたクラスメイトたちが、次々とキレイに避けていく。


「やっぱ来るんじゃなかった……!」


 その一言を残し、石越は扉を強く閉めて教室を出て行った。


「…………」


 俺はというと、突然と一瞬のコンボをただ黙って観覧していた。


「はぁ……」


 呆れた国見が、尚も自席に戻ってファイルを取り出し、記入しだした。

 重い空気の中でも仕事をするその姿勢が素晴らしかった。


「白石くん」


「はいッ!」


「ああいう方と仲良くするのは別に構いませんが、あまり甘やかさないよう風紀委員としての自覚を持って、今後は対応をするようお願いします……」


 見下ろしているその目に、光は灯されていなかった。


「はい……。以後、気を付けます……ッ!」


 姿勢を正しくして俯くことが、精一杯の服従表現だった……。

 脂汗ですか? 出まくってます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ