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副委員長を慰めよう……

 ▲




「チ……ッ!」


 舌打ちをした石越が、不貞腐れてまた着席した。


「…………」


(……気にすんなよ)


「…………ッ!」


 身震いさせ、押し出てくる感情を抑え込む様子の国見に、小声でそっと言うのが限界だった。

 果たしてこの一言を掛けて良かったのか悪かったのか……今は判断できない。


 とにかく今は、俺が率先して動かないと。


「石越、化粧ポーチのほうは預かるから、放課後職員室で返してもらうように。分かったか?」


「はいは~い、分かりました~」


 不機嫌な態度をこれでもかと見せ付け、頬杖を突きながら雑な返事がされる。

 それから回収ボックスを先生に預け、俺と国見はそれぞれの席に戻った。


 クラスメイトが目の前であれだけの侮辱を受けたのにも関わらず、彼女を案じて励ます者は一人もいなかった。

 せめて前後席の女子たちは話し掛けるかと期待したが、予想を裏切られた。


 国見がクラスに馴染めていないのは薄々感付いていたが、まさかこれ程までだったとは。

 真面目に取り組んでいただけなのに、それが仇となって煙たがられる……非常に理不尽極まりない。



 ツンツン



「ん?」


 右隣から紅葉が小突いてきた。


 HR中ということもあり、少しだけ視線を横に逸らす。


 〈本日も朝からお疲れ様でした。それと、さっき国見さんに掛けた言葉カッコ良かったです(ハート)〉


 タブレットには、労いと褒めの文章が打ち込まれていた。


《気にすんなよ……(低音)》


 やめろ!

 今思い返すと恥ずかしいけど、俺にとってはあれが精一杯だったんだ!


 恐らく、ふとした瞬間に揶揄されるだろうな……。

 HRが終わると、国見が教室から出て行くのを見掛けた。


 それを追い掛け、廊下に出る。


「国見!」


「ッ!? なんですか? ビックリさせないでください……」


「あ、わりぃ……。どこ行くんだ?」


「…………お手洗いですけど」


「ああ、そうだったのか。わりぃわりぃ!」


「え……っと、何か用ですか?」


「え、あ、そうそう。今日の昼休み、前半俺とだったよな? また宜しくって言おうと思って!」


「はあ……。それなら昼休みのときに言えば良いのでは……」


「あ、ああ! そうだったな。うっかりし過ぎて早めに言っちまった。ははは!」


《下手くそ》


 深く傷付いた。理由はお分かりですね?


《知らんがな》


「あの……もしかして、先ほどの件で同情してくれているのでしょうか?」


「ど、同情なんて! まさかそんな──」


 鋭いな。


 《お前が下手なだけだ》


「良いんです、気にしてませんから。それに、嫌われ者で不必要ってことも気付いてはいますから」


「なにもそこまで卑下しなくても……」


「白石くんも、ただでさえ怖がられているのに、わたしと話していたら本当に友達いなくなりますよ? 付き合う人間は、慎重に選んだほうが良いと一応アドバイスしておきます」


「そんな言い方……」


「気は済みましたか? でしたら、わたしはこれで失礼します」


 手洗い場に向かう国見を、黙って見送ることしか出来なかった。

 廊下を歩くその後姿は、なんだか寂しそうに見えた。


 怒らせちまったか……?


《単純に呆れられたんだろ。やめときゃ良いものを》


 でもあのままだったら可哀想じゃないか……。


《だからって傷付いている直後に蒸し返すような話をするのは正しい選択とは言えないぞ。乙女心を一から勉強して出直して来なさい! 踏ん付けてやる!》


 ふざけてるけど正論なんだよなぁ……。

 じゃあ今日の放課後にでも委員長に相談してみるか。


《は? 今日は科学部の日だろ?》


 あ~そうだった……。

 ロボット数体を借りる交換条件として、今日は必ず行かなきゃいけなかったんだ……。


《今日もた~っぷり破壊してやる……! ウケケケケケケケ!》


 程々にしておいてくれよ?

 損害賠償請求されたら洒落にならないぞ。


《任せとけ。銀行でお金〝借りて〟くる!》


 恐らく『ご』から始まって『う』で終わる行動を取るつもりだ。

 やべぇ、任せられねぇ。

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