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来たぞ我らのバカ部長

『はい……なんでしょうか?』



 よっしゃ出てくれた!

 明らかに眠そうな声だ。


「紅葉、おはよう。そこにバカ兄貴いる?」


『誰がバカだって……?』


「あ、部長だったんですか? おはようございます」


『挨拶より先に言うべきことがあるんじゃないのか……?』


「今日は良い天気なので太陽の光浴びたほうが良いですよ」


『キミの優先順位は謝罪じゃなく日光浴のオススメなのか……』


「そんなことより、さっき紅葉の声が聞こえてきたのですが、あれ部長の声真似だったんですか?」


『いんや、部屋全体で通話できるようにしてあるだけ』


「え、つまり……。部長は紅葉と、実の妹と一緒に寝たんですか……?」


『語弊が生まれてるぞ……。昨日キミが俺様の発明品を全部壊してくれたから、紅葉と一緒にプライベートルームで修理してて寝落ちしちまっただけだ』


「その発明品なんですが、お借りする事って出来ますか?」


『事と次第によってだな』


「校舎内を掃除したいんです」


『ふざけんな……。俺様の発明品は誰かの役に立たせたいために作っているんじゃない。人類を困惑させたいために作っているんだッ!』


「その思考一日だけチェンジできませんか?」


『できない。そもそも、昨日壊されて夜中に全部直したんだぞ。こちとら賢者タイム我慢してまで頑張ったんだぞッ!』


「妹さんの前で賢者タイム言うの止めましょうよ」


『大丈夫。賢者タイムをなにか知ってな──紅葉、調べるのやめようか?』


「ダメじゃないですか……」


『とにかくだッ! キミのことだから、ただでは帰ってこないだろう』


《…………正解》


 無理して答えなくていい。


『そんな危険な奴に我が子たちを貸すなんて出来ないッ!』




「明日の放課後、喜んで実験受けることを条件にしたらどうしますか?」

「どれを借りたいんだ?」




 隣にピンク色のドアが突如表れると、中から部長が登場した。


 通話の内容通り、本当に寝落ちするまで直していたのだろう──服装は昨日と同じ白衣を着込んだまま、髪はボサボサで目が血走っている。


 風紀委員メンバーは以前の遅刻時で見慣れたが、生徒会メンバーは数秒で起こった現象に戸惑いを隠せないでいる。


「取り敢えず、【ブラシ回転】【掃除機】【人類報復人型兵器】……あ、あと【灼熱火炎地獄】と【多人数殴打】をお願いします」


「ほいよ。【シンジくん十三号】【タクミくん五号】【カズマくん二号】【ヒトシくん三十号】【ソウジくん一号】だな?」


「名前忘れましたが、宜しくお願いします」


「はいよ。その代わり、明日キチンと来るんだぞ?」


「了~解しました……」


 ついその場の勢いで発言してしまったが、正直今から気乗りしない。


《…………大丈夫だ。受けるのも壊すのも全部俺なんだから》


 そうだね~。というか大丈夫なのか? まだコハ姉近くにいるぞ?


《吐きそう……》


 じゃあ大人しくしとけ。

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