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もう最悪だ……

 午後のHRホームルームが終了し、清掃を終え、帰宅しようとしたそのとき。


「よお! 一年っ!!」


 昼休みの、頭髪に特徴のある先輩たちと中庭で偶然にも再開した。


「あ、先輩方」


「今帰りか?」


「はい」


「俺らも帰りなんだ」


「一緒に帰ろうぜ」


 気さくに聞いてきたリーゼント先輩に続き、モヒカン先輩、そしてボンバーヘアー先輩が下校の誘いをしてきた。

 どうせ今日は一人で帰る予定だったし、場違いではあるが……ま、いっか


「良いですよ」


「お、ノリが良いなぁ」


「そう言えばまだ名前聞いてなかったな? なんて名前だ?」


「白石です。白石白瀬って言います」


「そっか白瀬か。そんじゃあこれから『シロ坊』って呼ばせてもらうぜ」


 リーゼント先輩からアダ名をもらった。これはこれで嬉しい。


「なぁシロ坊、俺ら今からゲーセンに行くんだけどよ、おめぇも来ねえか?」


「構いませんけど、ゲーセンって確実に風紀委員見回ってたりしますよね。大丈夫なんですか?」


「なぁに、心配するな。確かに不定期で見回り来てっけど、その度に筐体きょうたいに擬態して回避できてっからよ」


 カメレオンか何かかな?


「そう言う訳だ。もし不安なら今日擬態の技術教えてやっから」


「習得できる日数はいつですか?」


「丸二か月」


「お断りさせていただきます」


「なんじゃそりゃ」


 ボンバーヘアー先輩のツッコミで全員一斉に笑い出す。

 え、なに……みんなで下校超楽しい。


「あ、でも自分金欠なんですよ……」


「心配すんな」


「今日仲良くなった祝いだ。俺らが奢ってやるぜ!」


「後輩に優しくするのが先輩だからな!」


「せ、先輩方……!」


 思わずうるっと涙が出てきた。

 あ~、嫌な事ばかりじゃないんだな……。

 憧れの先輩とも話せたし、年上の友達もできた……。

 正にこれが俺の求めてた平穏な高校生活──。



「よぉ……また会ったな……」



 終~了~。

 中庭から正門に向かう途中で、西先輩が出迎えてくれた……。

 神様……俺にまだ試練を与えると言うのですか……。


「お、おい……。あれ、三年の『西さん』じゃねえか?」


「なんで俺らの前に……なにかしたのか……?」


「知らねえよ! 三年に喧嘩売るほど自分の腕力過信してねえって!!」


 デブ先輩たちが西先輩を前に慌てだす。

 すると―。


「オメエらじゃねえデブ三人が。用があるのはそこの一年野郎だ」


 自然な罵倒を浴びせ、俺に人差し指を向けてきた。


「し、シロ坊……おめえ、この学校でもヤバい西先輩に喧嘩売ったのか……?」


「一年のくせになんて命知らずな……」


「カッコイイ……」


 一瞬の一言に悪寒がした……。

 と、そんなことより西先輩が徐々に近寄ってきた。


「ちょっとツラ貸せ……」


 高身長で上から言われると怖さ倍増だ。

 ちょっと漏れそうになっちまった……


「ちょいと待ちな」


 すると、リーゼント先輩が俺と西先輩の間に割って入ってきた。

 先輩……アナタまさか……。


「いくら先輩でも、シロ坊には手は出させないぜ」


「消えろザコ」


 リーゼント先輩のリーゼントが一瞬にしてもげた。



「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」



 凄まじい雄叫びだ。

 これなら無人島で遭難した際、船見かけて叫べば絶対助けに来るぞ。


「こ、この野郎……! よくもコイツが枕の次に大切にしている自慢のリーゼントをっ! 許せねえッッ!!!」


「お前も消えろザコ」


 モヒカン先輩が逆モヒカンにされてしまった。


「…………ひぇ?」


 何とも言えない顔をしている。


「あ……ぁ……」


 残るはボンバーヘアー先輩のみ。

 この流れならストレートにされるだろう。


 ……などと冗談は置いといて。


「先輩、心配しないでください。自分は必ず帰ってきます」


「し、シロ坊……おめえ……」



「出来れば生徒指導の先生と風紀委員の方々、あと警察を呼んできてくれると嬉しいです」



 普通に危険そうなので。


「よっしゃ任せとけ!」


 ボンバーヘアー先輩が高速回れ右をしてダッシュ、逆モヒカン先輩は体育座りをして空を見上げ、元リーゼント先輩は死んでいた。


「助けが来る前に自分が死なねぇかを先に考えといたほうが良いんじゃねえのか……? シロぼっちゃんよッ!」


 もうこうなりゃ自棄だ、覚悟を決めて堂々と行くしかない。


「ははは、かもしれませんね。ところで先輩、ここだとみんな見てますし、人気の無い場所に移動しませんか?」


「おう……校舎裏に連れていく予定だったからな。断っても連れてくけどな……!」


 血管がピキピキと音を立てて浮き出てくるのを初めて目にした。

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