美しい先輩のあとの汚い先輩たち
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同じ場所に行くと、先輩たちは笑顔で迎えてくれた。
「サンキュウ一年! お前が戻ってこなかったらどうしようかとハラハラドキドキしながら待ってたんだぜ!」
リーゼント先輩が俺の両肩に手を置き、ぐずる衝動を抑えて礼を口にした。
「お前は男の中の男だ! 俺はお前を尊敬するぜっ!」
モヒカン先輩が叫ぶ。パンを買ってきただけで豪い褒め様だ……嫌いじゃない。
「えぐッ! えぐぐっ!! えぐっぐっぐっぐぐぐぐ!!!!」
ボンバーヘアー先輩に至っては汚い。
「それじゃあ先輩、自分はこれで失礼します!」
三個のパンを手渡し、最終的に泣いてしまったリーゼント先輩からサムズアップをしてもらい、熱い眼差しを背中に受けながら俺は歩き出した。
教室に戻ると、時間を掛け過ぎたためにクラスの八割が食事を終えて駄弁っていたが、その中でも俺は堂々と自席に座ってフランスパンを食した。
予想通り硬くて噛み千切り難く、しかも長いから周囲の目線が突き刺さるが、構いやしない。
せっかく新田先輩が触れてくれたフランスパンなんだ。
残さず食べるのが男ってもんだ!
しかし時間内に食べ切ったのは良いものの、予定の仮眠は取れず、午後の授業は睡魔と顎の痛みによって真面に受けることができなかったのは言うまでもなかった。