042 第二次クルーガー族迎撃戦
俺達は拠点に引き返した。
「こんな時間に攻めてきたとかやばいじゃん!」
「日中だとスピーカー威嚇は使えないよね」
取り乱す朱里、冷静な志穂。
「たしかにスピーカー威嚇は使えない」
視界が優れるこの時間帯にスピーカーを使えばネタが割れる。
「だが問題ない。その為の備えは既にしてある」
クルーガー族が日中に攻めてくることは想定していた。
というより、そうなってほしいと願っていたのだ。
ようやく平和への道が開ける。
「備えってコレのこと?」
香奈がAKK47を掲げる。
「それもだが、富岡達に授けた武器もそうさ」
「あー、催涙弾か!」
「その通り」
富岡のグループにはグレネードランチャーを渡してある。
その弾丸となるのが催涙弾だ。
「催涙ガスには殺傷能力がない。だから足止めにしかならないが、針金トラップと同じで行軍速度を鈍らせるには十分な効果があるだろう。それにアサルトライフルと違って訓練に精を出す必要もない」
「そうして怯んだ敵に私達が攻撃を仕掛けるわけね」と志穂。
「そういうこと。人に銃を撃つのは怖いことだが、生き抜くにはやるしかない。その為に訓練してきたんだ。行こう」
俺達は拠点を出て北の森に向かった。
◇
草原を経由して北の森に向かう。
ちょうど富岡のグループとすれ違った。
何名かは怪我をしている。
中には膝に矢が刺さっている者もいた。
思っていたよりも酷い状況だ。
「北条、来たか!」
俺を見て声を弾ませる富岡。
「状況はどうなっていますか?」
「よくない。あいつら、催涙ガスを受けても撤退する気がないぞ」
「そうですか」
大して驚かなかった。
予想の範疇……というか想定通りの展開だ。
クルーガー族はこちらの攻撃力を試している。
殺傷能力を示さない限り退いてはくれないだろう。
「あとは任せてください」
「大丈夫なのか? 手ぶらのようだが」
富岡が俺達の装備に目を向ける。
たしかに今は手ぶらで、誰も武器を所持していない。
「大丈夫ですよ。今から購入するので」
俺達は一斉にAKK47を召喚した。
弾が詰まらないよう新品で臨ませてもらう。
「そ、それは、本物の銃か……!?」
驚く富岡。
俺達が銃を使うと知らなかったのだ。
情報漏洩を懸念して言わないでおいた。
「本物ですよ。訓練もたっぷりしました。あとは任せてください」
「わ、分かった! 俺達は“セントラル”に戻っている!」
セントラルとは草原の拠点の名称だ。
いつの間にか富岡のグループではそう呼ぶようになっていた。
「行くぞ、皆」
「「「「「おう!」」」」」
俺達は北の森に向かった。
◇
クルーガー族の軍団はすぐに見つかった。
数は数え切れないほど多くて、全員が武器を持っている。
軍団は堂々と歩きながら草原を目指していた。
明らかに目的地が定まっている動きだ。
曽我部を殺した際にセントラルの場所を聞いたのだろう。
遠目に俺達を確認すると、クルーガー族は進軍を止めた。
「おっ? 新手かぁ!」
先頭の男が舌なめずりする。
赤い髪をした大柄の男で、武器は背丈より大きな斧だ。
それを軽々と片手で持っている。
「かかってこいよ異世界人! お得意の魔法で俺達を殺してみろ!」
「そうだそうだ! かかってこい!」
「さもなくばお前達を皆殺しにしてやる!」
挑発してくるクルーガー族。
(案の定、殺されないと高を括っているな)
「異世界人? 魔法? なんのこと?」
首を傾げる朱里。
「どうだっていい。お言葉通り攻撃させてもらおう」
俺達は適度に散開して射撃を始めた。
誰一人として躊躇していない。
脳内物質が大量に分泌されて感覚が麻痺しているのだろう。
殺らなければ殺られる――そんな思いが体を突き動かしていた。
「な、なんだ!?」
「ぎゃああああああああああああ!」
「おい、どうなってんだよ!」
「なんなんだよあの武器は!」
たちまちパニックになるクルーガー族。
「撤退! 撤退だ! 族長に報告するぞ!」
赤髪の大男が撤退の指示を出す。
「逃がすか!」
赤髪は軍団の指揮官に違いない。
倒せばこちらの脅威をアピールできるだろう。
そう考えて狙い撃ちにした。
「グハッ……!」
俺の放った弾丸が赤髪の後頭部を撃ち抜く。
即死だった。
「ひぃいいいいいいいいいいいい!」
全力で逃げていくクルーガー族。
俺達は追撃することなく、連中が消えるまで立ち尽くす。
「思ったよりあっさり終わったな」
迎撃戦は拍子抜けするほど一方的な展開で終わった。
◇
人を撃つことに対するショックが訪れたのは戦闘が終わってからだ。
「これ、私達がやったんだよね……」
「人、人を、撃っちゃった……」
朱里と香奈が唖然としている。
俺を含めた他の4人にしてもそうだ。
手は震え、嫌な汗が体を伝う。
目の前には凄惨な光景が広がっていた。
地面に転がる大勢の死傷者。
無数にできた血の池、木々に付着する鮮血。
それらを生み出したのが俺達だ。
見ているだけで吐き気を催した。
「まだ終わりじゃない」
俺は倒れているクルーガー族の戦士に銃弾を撃ち込む。
「慧、何しているの!?」
志穂が声を荒らげる。
「生きているか分からないから確実に殺しているんだ」
「そんな……。換金じゃ駄目なの?」
「換金をするにはすぐ傍まで近づく必要がある。もしも生きていた場合、襲われる危険がある。不要なリスクは避けないと」
死体撃ちは嫌な気持ちになる。
それでもしないといけない行為だ。
俺は一人ずつ丁寧に撃ち抜いていく。
「珠子も手伝うのです」
珍しく真顔の珠子が協力してくれる。
それを見た他の女性陣も死体撃ちを始めた。
「ひぃいいいいいい、お、お助けぇえええ!」
案の定、死んだふりをしている者がいた。
「な、いただろ?」
俺は無慈悲の銃弾を浴びせた。
逃げようとした戦士は胴体を蜂の巣にされて死亡。
「これで全員だな」
死体の数は全部で110人。
敵軍の数は死体の10倍はあった。
つまり今回だけでも1,000人以上が参加したことになる。
しかし、それすらも全軍ではないだろう。
クルーガー族は慎重だから軍団を細かく分けているはずだ。
対するこちらの戦力は最大で19人。
チンパンジーと協力しているとはいえ真っ向勝負は厳しい。
敵の全滅はまず不可能だから、望ましい決着は停戦になるだろう。
(あとはどうやって和平交渉までもっていくかだが……)
そんなことを考えながらクルーガー族の死体を換金していく。
換金作業が終わって帰路に就いていると、富岡から通話がかかってきた。
『北条、大変だ!』
富岡は通話越しでも分かるほどに慌てていた。
「どうしたんですか?」
『足りないんだ!』
「足りないって、何がですか?」
『数だよ! 生徒の数が足りないんだ!』
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