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041 射撃訓練

 チンパンジーと遊び終わった4人が合流する。

 そこに志穂を含めた5人を連れて、俺は白い砂浜を歩いていく。

 海沿いに進んでチンパンジーから結構な距離をとった。

 何頭かのチンパンジーは興味深そうについてくる。


「ここなら問題ないだろう」


 俺はアサルトライフルを購入・召喚した。

 現れたのは〈AKK47〉――かつてソ連で使われていた有名な銃だ。


「本物の銃って見たことないから、なんだかおもちゃに見えるね」


 志穂が言う。


「同感だがコレは本物だぜ」


 俺は約50メートル先に射撃訓練用のターゲットを設置する。

 高さ2メートルからなる長方形の木の板だ。

 板の片面には人のシルエットが描かれている。

 シルエットには部位に応じて点数が書いていた。

 ターゲットを横並びに6体設置してから皆のもとに戻る。


「今からあの的を相手に射撃訓練を行おう」


 お金を湯水の如く使えるようになったので銃の腕を磨く。

 海に来た最大の目的がこれだった。


「それはいいけど、私、銃の扱い方とか知らないよ」


「俺も知らないさ。でも、まぁ、どうにかなるだろう」


「大丈夫でーす! 私は分かるのです!」


 珠子が手を挙げる。


「珠子先生、分かるんですか?」


「これでも学生時代、全く同じ銃を扱った経験があるのです! それほど詳しくはありませんが、構え方や撃ち方、それに弾倉(マガジン)の着脱方法なら分かりますぞ!」


「それだけ分かれば十分ですよ」


 珠子がAKK47の扱いを知っているのは嬉しい誤算だった。

 ドラマや映画の見様見真似で試行錯誤する手間が省ける。

 俺は「お手本をお願いします」と銃を珠子に渡す。


「お任せあれ!」


 珠子は滑らかな手つきで銃を構える。


「こうやって構えて、狙いはこの部分で定めるのです。安全装置はこの部分をこうすることで外れるのです」


 丁寧に説明してくれる。

 俺達は真剣な表情でそれを聞く。

 チンパンジーは後方でじーっと眺めていた。


「あとは引き金(トリガー)を引くと撃てるのです!」


 言うと同時に射撃を開始する珠子。

 その瞬間、想像を大きく上回る射撃音が響いた。

 何かが爆発したかのような音だ。


 その音が俺達に再認識させる。

 目の前にある銃は本物なのだ、と。


「「「ウキィィィィィ!?」」」


 後方で眺めていたチンパンジーたちがびっくりしている。

 森からもなんだなんだと大量のチンパンジーが現れた。


「こんな感じですな! いやぁ気持ちいい!」


 珠子は「がはは」と豪快に笑いながら銃を返してきた。


 銃を受け取った俺は、前方のターゲットを確認する。

 全ての銃弾がしっかりと人のシルエットを捉えていた。

 珠子は腕もいいようだ。


「それでは今から射撃訓練を行う。最初は扱い方とかに不安があるから、1人ずつ珠子先生に教わりながらやっていく。慣れたら全員で一緒にやろう」


「でもその前にチンパンジーに状況を説明しないとね」と志穂。


「そうだな」


 後ろにいるチンパンジーたちに近づく。


「さっきはびっくりさせて悪かったな。今からさっきのような大きい音がたくさん鳴る予定だ。これは射撃訓練というのだけど、俺達が訓練している間は危険だから近づかないようにしてほしい。他の連中にも伝えてもらえるか?」


「ウキィ!」


 チンパンジーたちが「任せろ」と言いたげに頭をコクリ。

 それから周辺にいる仲間へ向けてチンパンジー語で説明する。

 数分もすると大半のチンパンジーが森に戻っていった。


「それでは始めようか。まずは志穂から」


 いよいよクルーガー族に対抗する術を身に着けていくのだった。


 ◇


 1時間もすると全員で並んで射撃することができた。

 ただ、並んでの射撃は耳の鼓膜が破れそうになるので厳しい。

 結果、時間を決めて3人ずつ訓練をすることにした。

 実戦を想定しているので遮音用のイヤーマフは装着しない。


「よっしゃー! 連射モードでも当たるようになってきたぞー!」


 朱里が嬉しそうに左手で握りこぶしを作った。


 連射モードとはAKK47の設定のことだ。

 連射と単射を切り替えることができる。


 連射モードは扱いが難しい。

 トリガーを引いている限り連射し続けるからだ。

 じゃじゃ馬の如く銃身がブレる。


「よく耐えられるね。腕とか痛くならないの? 反動が凄いでしょ」


 そう言って朱里の右隣で射撃練習を行う志穂。

 彼女は単射モードで丁寧に的を狙っていた。


「そこは気合と根性でカバーよ!」


「素晴らしいですねぇ!」


 志穂の右隣から言ったのは珠子。

 彼女は連射モードだ。


 残りの3人は邪魔にならないよう後方から見守っている。


「珠子先生はともかく、他の人も扱いに慣れてきたな」


「だね」と安岐が同意した。


「こんなに射撃訓練をしてどうするの?」


 質問してきたのは香奈だ。


「どうするとは?」


「クルーガー族を皆殺しにしようって考え?」


「そんなことは思っていないよ。自衛の手段として訓練しているだけで」


「それだったらここまで訓練する必要なくない? 撃てたら十分でしょ」


「たしかに威嚇射撃が主目的だけど、何発かは敵に当てる必要がある。クルーガー族が銃について知らない場合、命中させなければ怖さが伝わらないから」


 そこで言葉を句切る。


「ただ、訓練をするのは敵に当てる為ではないんだ」


「どういうこと?」


「敵に当てたいからではなく、仲間に当てたくないから訓練をするんだ。こういう開けた場所で突っ立って戦うならまだしも、クルーガー族との戦闘は森の中で動きながら行うはず。そんな状況で腕が拙いと仲間に当ててしまう可能性が高い。俺はそれを防ぎたいんだ」


「そっか、海で戦うわけじゃないんだ」


 安岐が呟く。


「そこまで考えているなんて――」


 香奈は真顔でそう言ったと思いきや、急にニヤリと笑う。


「――慧君は本当に慧眼だね!」


「それ言いたかっただけでしょ」


 香奈は「ぎゃはは」と笑った。


 ◇


 それから数日間は射撃訓練に明け暮れた。

 効果は驚くほど如実に表れた。

 日が経つごとにメキメキと上達したのだ。

 射撃技術のみならず弾倉の着脱速度も向上していた。


「銃なんてできれば使わずに済むといいんだけどね」


 訓練の度にそう話した。

 それだけ銃の威力が凄まじいからだ。

 こんな物で人間を攻撃するなど想像しただけで怖い。


 だが、残念ながらその日はやってきた。

 昼過ぎ、射撃訓練をしようと拠点を出た時のことだ。


「キッキィイイイイイイ!」


「ウキィイイイイイイイ!」


 チンパンジーが血相を変えて報告にきた。

 それと同時に富岡から敵軍襲来の連絡が入る。


 クルーガー族の軍団が川を渡ってきたのだ。

 第二次迎撃戦の勃発である。

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