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032 予期せぬ展開

 富岡は言った。


「えっ」


 俺も言った。


「えっ」


 信じられなかった。

 だから念の為に確認する。


「富岡先生や草原の拠点にいる人達と和解しないって言うのか?」


「ウォウ!」


 ボスが頷く。

 やはり和解する気がないようだ。


「どうしてだ! 話が違うじゃないか!」


 富岡が俺の胸ぐらを掴む。

 俺は「落ち着いて下さい」とそれを解いた。


「和解に前向きだったはずだが、どうして駄目なんだ?」


 ボスに尋ねる。

 するとボスは俺を指した。


「俺が理由なのか?」


「キキィ!」


 違うらしい。

 しかしボスの指は俺に向いている。


「北条、翻訳しろ」


「ちょっと待って下さい」


 俺はボスに「もう少し詳しく言ってくれ」と頼む。


「ウォウ! キキィ、キッ! ウォウ!」


 ボスは富岡を指したあと、指を畳んでグーにする。

 それから反対側の手で俺を指し、そちらはパーに。

 最後はパーでグーを包んだ。


「じゃんけんでもしているのか?」と富岡。


「いや、そうじゃない」


 俺には分かった。


「もしかして、俺が草原のリーダーじゃないと駄目だと言っているのか?」


「ウォウ! ウォウ!」


 ボスが強く頷く。


「やはりそうか」


 当然、富岡は「馬鹿げている!」と怒鳴った。


「そんな話、受け入れられるわけないだろ!」


 富岡は断固拒否の構え。

 ボスも妥協する気はないようだ。

 こうなると交渉は決裂するしかない。

 ――否、そんなことはない。


「なら和解ではなく停戦協定はどうかな?」


「停戦協定だと?」


「富岡先生のグループが敵意を示さなければ、チンパンジーも攻撃はしません。協力関係は諦めて、とりあえず停戦するということで合意するんです。先生からすればそれで問題ないでしょう?」


「たしかに……。こちらは原住民と円滑に交流できればいいだけだからな。猿共の援護なんぞ必要ない」


「チンパンジー側もその点は問題ないよな?」


「ウォウ!」


 ボスが頷く。


「ではこの時をもって停戦するということで」


 こうして、チンパンジーと富岡グループの争いは終結した。

 最高の結果とは言えないものの、最悪の事態は回避できただろう。


「富岡先生、今後、考えが変わるようなことがあれば言って下さい。俺がリーダーになってしまいますけど、それでよければ合流することが可能です」


「そんな日は来るか! 偉そうにしおってからに!」


 話を打ち切り草原に戻っていく富岡。


「そういう日が来なければ俺としてもありがたいんだけどな」


 富岡の背中に向かって呟いた。


 ◇


 翌日。

 金策を本格化させることにした。

 とにかく金が必要だ。地獄の沙汰も金次第である。


 その為に、まずは最大効率の金策方法を模索することにした。

 朱里と香奈に釣りをしてもらいつつ、残りの4人は新たな手段を探る。


「やっぱりシャベル+土嚢の換金が一番なのかなぁ」


 志穂が言った。

 俺は彼女と二人で行動している。

 朱里達のいる川の近くでシャベルを振りながら話し合っていた。


「土を掘って稼ぎ、その土を換金してさらに稼ぐ。地味だが鉄板だよなぁ」


 土嚢に必要な土の量はそれほど多くない。

 10回掘れば1袋の土嚢が完成する。

 言い換えると約1分に1袋の土嚢を作れるわけだ。


 土嚢は換金すると500ptになる。

 りっぱなシャベルで10回掘って得られるお金は約600pt。

 1分の稼ぎ1000ptを超え、1時間続けると7万ほど貯まる。


 これはかなり大きい。

 富岡のグループが土嚢に目を付けたのは正解だろう。


「俺としてはもう少し楽に稼ぎたいんだよなぁ」


 シャベルで土を掘るのは大変だ。

 1時間で約7万の稼ぎとはいえ、それを持続させるのは難しい。

 2時間3時間と時間が経てば効率が落ちてくる。

 さらに翌日は筋肉痛などで動くのが困難になるだろう。

 諸々を勘案すると、1日に稼げる額は20万が関の山だ。


「魚は換金しても大してお金にならないしねぇ」


「まぁな」


 釣りで得た魚を換金することができる。

 査定結果は魚によって異なるが、基本的に500pt前後だ。

 調理しても大して値上がりしないことは確認済みである。


「ウキィ!」


 チンパンジーの子供が近づいてきた。

 1頭が近づくと、瞬く間に他のチンパンジーも寄ってきた。

 そして、いつもの如くバナナをねだってくる。


「お前らは食いしん坊だなぁ。でも、破産するからほどほどにしてくれよ」


 俺はシャベルを地面に置き、スマホを取り出した。

 バナナを購入・召喚し、チンパンジーに与えていく。

 その間、志穂は黙々と掘り起こした土を袋に詰めている。


「ウキッキィ!」


 最初に寄ってきた子供のチンパンジーがバナナを頬張る。

 怒濤の咀嚼速度で食べ終えると、地面に転がっているシャベルを取った。


「おい、それは俺のシャベルだぞ」


「キキッキィ!」


 俺の言葉を無視して、チンパンジーがシャベルで地面を掘る。

 どうやらバナナのお礼に作業を手伝ってくれているようだ。


「ありがたいけど、自分で掘らないと金にならな――!」


 ここで予想外の事態が起きた。

 俺のお金が増えたのだ。


「待て!」


 俺は声を上げてチンパンジーを止めた。


「ウキッ!?」


 子供のチンパンジーが驚きから体をブルッとさせる。

 他のチンパンジーも驚いていた。

 志穂も手を止めてこちらを見ている。


「もう一度、土を掘ってくれ」


 シャベルを持ったチンパンジーが自身の顔を指す。

「僕に言っているの?」とでも言いたげな顔だ。

 俺は「そうだ」と頷いた。


「ウキッキィ!」


 チンパンジーが改めて地面を掘った。

 その瞬間、俺のスマホにお金がチャージされる。

 気のせいではなかった。

 やはり、チンパンジーが土を掘ってもお金が貯まるのだ。


「これだ!」


 俺は思わず叫んだ。

 チンパンジーに働いてもらえれば、お金を一気に稼げるかもしれない!


【お知らせ】

更新間隔を変更します。

これまで:毎日

これから:週1回(毎週火曜日0時)

よろしくお願いいたします。

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