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024 拠点の仕様

 珠子に呼ばれて他のメンバーも梯子を下りてきた。

 そして、一様に中の様子を見て感嘆する。

 分かってはいたが、しばらくは興奮冷めやらぬ様子だった。


「そろそろ落ち着いたかな?」


 頃合いを見計らって、俺は全員をリビングに集めた。

 リビングとは革張りのL型ソファがある空間のことだ。

 便宜上そう呼ぶことにした。


「俺のスマホのメニューに第8のボタンが追加されたのだが、皆はどうだ?」


 スマホの画面を皆に見せる。

 左下の〈譲渡〉の横に〈拠点〉が追加されていた。


「この〈拠点〉ってどういう項目なんだろ? もう開いた?」


「一応、開きはしたよ」


 俺に尋ねつつ、志穂は自分のスマホを確認した。

 それから「私のスマホにもあったよ」と報告する。

 志穂だけでなく、全員のスマホに〈拠点〉が追加されていた。


「皆も俺と同じ項目が表示されているのか?」


 拠点ボタンを押してみる。

 ゲームのステータス画面みたいなものが表示された。


======================

【ルームマスター】北条 慧(暫定)

【メンバー数】1人

【入場制限】誰でも

【維持費】1,000pt/日

======================


「私も同じだね」


 志穂がスマホをこちらに向ける。

 朱里も「私もー!」と見せてくれた。

 全員のスマホで同じ表示になっている。


「ルームマスターってなんぞや? それにメンバー数が1人ってどゆこと!? 私達6人いるじゃん!」


 すぐ隣で吠える朱里。


「おそらくだが、この場所のことを指しているんじゃないか。俺が最初に入ったからルームマスターは俺なんだ。入場制限は変更できそうなボタンがあるし。維持費は見ての通りだろう」


「じゃあメンバー数は?」


「皆の画面では押せないみたいだけど、俺のほうは『メンバーの設定』というボタンを押すことができる。それを押すとチャットや通話と同じ生存者のリストが表示されるんだ。そこで追加したいメンバーを選択して、画面の下にある『追加』を押せば増えそうな気がする」


 説明しながら実行してみた。

 朱里、志穂、珠子、安岐、香奈を追加する。

 すると、【メンバー数】が1人から6人に変更された。

 それと同時に、【維持費】が1,000ptから6,000ptに増える。


「ほらな?」


「本当だー! でも維持費まで高くなっちゃったよ!」


「人数に比例しているようだ。とりあえず契約するか」


 画面に表示されている項目の下に、『契約』という大きなボタンがある。

 ボタンの下には小さい文字でつらつらと説明が書かれていた。

 それによると、拠点を利用するには契約する必要があるとのこと。


 契約には維持費とは別に1万ptの契約料が求められている。

 こちらはメンバー数に関係なく1万ptのようだ。

 速やかに支払わないと拠点から追い出されてしまうらしい。


「お金、大丈夫なの? いくらか渡そうか?」


 志穂が心配そうに俺を見る。


「大丈夫だよ。知らぬ間に5万ptがチャージされていてな」


「5万も? 誰かがくれたとかじゃなく?」


「違うよ。ここに入ったから増えたんだと思う。入る前は増えていなかったし、誰かから譲渡されたわけでもないから。志穂や他の人は増えていないみたいだから、最初に入った人間だけがボーナスとして貰えるのかもな」


 俺は迷うことなく『契約』をタップ。

 すると【ルームマスター】に表示されている名前から括弧書きが消えた。

 暫定ではなく正式なルームマスターとして認められたようだ。


「入場制限も変更しておこうと思うけど、『メンバーのみ』でいいかな?」


「いいともー!」


 珠子が即答で言う一方、志穂は違う反応を見せた。


「他の選択肢は?」


「『マスターのみ』というのもある。『誰でも』『メンバーのみ』『マスターのみ』の3つだな」


「試しに『マスターのみ』にしてみない? そうしたら、慧以外のメンバーはどうなってしまうのか気になる」


「危なくないですか?」と香奈。


「たしかにどうなるか分からないので、朱里や先生達は外で待っていてください」


「いーや、私は一緒にいるよ!」


「いいですねぇ! 友情! では私もお供しましょう!」


 朱里と珠子は残るようだ。


「ここで私達だけ無事になってもあとが大変ですし……」


 そう言って安岐も残ることを選択。

 香奈も周りに流される形で残った。


「じゃあ入場制限を『マスターのみ』に変えるぞ」


 全員がゴクリと唾を飲み込む。

 俺は深呼吸してから入場制限を変えた。


「なっ!?」


 その瞬間、志穂達の姿が消えた。

 隣に座っていたはずの朱里と志穂、それに大人の女性陣がいない。

 彼女らの残り香がその場に漂っている。


「まさか死んだのか? ――いや、生きてる!」


 メンバー数が6人のままであることに気づいた。

 慌てて入場制限を『メンバーのみ』に変更する。

 だが、変更しても志穂達は現れない。


「どういうことだ……」


 と、そこへ。


「ただいま戻りましたぞー!」


 珠子が梯子を下りてきた。

 他の4人も続々と地上からやってくる。


「いやぁ、びっくりしたー!」


 朱里が何食わぬ顔で横に座る。


「なんで外に?」


 俺が尋ねると、朱里は笑いながら言った。


「それはこっちのセリフだよ!」


「えっ」


「まさに一瞬! 急に瞬間移動したよ! 地上に! いきなり視界が変わったから吐きそうになったし! それに慧だけいないから驚いたし!」


「まさか生きている間に瞬間移動を体験できるとは思わなかったよ」


 志穂が朱里とは反対側の隣に腰を下ろす。

 皆の位置が先ほどと同じに戻った。


「貴重な体験になりましたねぇ!」


 珠子は嬉しそうにニヤニヤしている。


「なにはともあれ無事でよかった」


 こうして〈拠点〉の項目がこの場所を指していると分かった。

 維持費を払えばここを所有していられるということも。


「チンパンジーのボスは私達にこの拠点を教えたかったのかな?」


 志穂が俺を見る。


「どうだろうな。梯子の上は円形に木が生えていなかった。水辺となる川も近いし、単純に適していると判断しただけという可能性もある。実際のところは分からないが、とにかくボスには感謝だな。やっぱりチンパンジーとは仲良くするに限る」


 約1時間前はどこにテントを張ろうかと悩んでいた。

 それが今ではどの個室で寝ようかと考えている。

 不思議なものだ。


「よーし、そろそろテレビをつけよー! 私達のニュースがやってるかも!」


 朱里がガラステーブルに置いてあるリモコンに手を伸ばす。

 その時だった。


「待ってほしいのです!」


 珠子が立ち上がり、テーブルとテレビの間に立つ。

 皆の視線が珠子に集まった。


「私から大きな提案があるのです!」


 そう言って右の人差し指をピンと立たせる珠子。


「提案?」


「はい! 重大な提案なのです!」


「重大な提案!?」


「そうなのです!」


 珠子は大きく頷き、妙な溜めを作ってから言った。


「その提案とは……!」


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