013 査定結果の謎
査定結果が異様に高い。
何か理由があるはずだ。
「販売価格は合っているな……」
最初、丸太や針金の価格を勘違いしているのかと思った。
そう思って〈購入〉を調べたところ、間違いではなかった。
やはり250ptの丸太10本と1mにつき1ptの針金で作られている。
「総額で3,000ptもかかっていないのに、どうして査定額が5,000ptになる?」
査定結果を眺めながら考える。
「どうしたの?」
志穂が近づいてきた。
「査定結果がおかしいんだ。異様に高い」
俺は事情を説明する。
「たしかにおかしいね。何か見落としがあるんじゃない? 例えば丸太には種類があって、この丸太は高いほうが使われているとか」
「それはない。丸太の種類は1種類っぽいし、仮に数種類あったとしても高いほうを使う理由がない。ただ突き立ててバリケードにするだけだから。家を建てるなら話は別だけどさ」
「それもそうね。じゃあ、なんでだろ?」
志穂と二人で考え込む。
「何をしている! 早く換金せんか!」
富岡の怒声が飛んできた。
俺は軽く謝ってから換金を行う。
査定結果の通り、所持金に5,000ptが加算された。
「よーし、あとは俺に任せておけ」
富岡が近づいてくる。
その後ろには安岐の姿もあった。
単独で門を作ってアピールするつもりのようだ。
動機はどうであれ、献身的な行動に違いない。
「流石は富岡先生、頼りになります」
俺は思ってもいないことを言っておだてておく。
「そうだろう、そうだろう」
富岡は誇らしげな笑みを浮かべる。
そして、超高速で一瞬だけ安岐の顔をチラ見。
彼女の視線が自分に向いているのを確認する。
「富岡先生、頑張って下さいね」
「もちろんですとも保井先生!」
富岡が木の板と大工道具を買って門を作り始める。
その場にいると睨まれそうなので、俺と志穂は早足で退散した。
◇
「ちょ、急に開けるなし!」
テントを開けると、そこには下着姿の朱里がいた。
着替えている最中だったようだ。
俺は慌ててテントを閉める。
周囲を見ると、制服ではない生徒がちらほらいた。
「私も着替えるよ。慧も後で着替えたら?」
志穂が言う。
俺は「そうだな」と頷いた。
「制服が汗でベトついているしな」
服の価格帯は幅広い。
豪華なドレスやセット物は高い傾向にある。
セット物とは学生服や客室乗務員の制服などを指す。
シンプルなシャツなどは300ptで買える。
下着はもっと安くて、高価な物でも200pt程度。
服から靴下までフルセットで着替えても1,000ptで足りる。
「じゃ、お先に」
志穂がスッとテントに入る。
ほどなくして、テントの中から「冷たッ!」という声が聞こえた。
最初は志穂の声で、次に朱里が同じセリフを口にする。
漏れてくる会話から除菌シートで体を拭き合っていると分かった。
(この中で志穂と朱里が……!)
妄想が捗る。
捗りすぎて困るほどに捗る。
祖母の笑顔を想像して事なきを得た。
「お待たせー」
朱里がテントから出てくる。
服装が制服から私服へ替わっていた。
半袖の薄いピンクのシャツに、丈の短いデニムスカート。
黒のニーハイは剥き出しの太ももへ視線を誘導している。
靴も学校指定のローファーから運動靴に変わっていた。
「どうかな? 似合う? 似合う!?」
俺の顔を覗き込んでくる朱里。
「ま、まぁ……似合うかな」
「やったね!」
目のやり場に困る格好だ。
気を抜くと胸や太ももを凝視してしまう。
「遅くなってごめんね」
志穂も出てきた。
彼女の格好は……。
「殆ど制服のままじゃないか」
パッと見は制服に見える。
よく見ると、学校指定のドレスシャツからブラウスに変わっていた。
とはいえ、どちらも色は白で、形も似ている。
スカートにいたってはまんま制服と同じだ。
明確な違いと言えば、履き物が運動靴になっただけだ。
「これでも一応、全身を着替えたんだけどね」
「そうなの? スカートは制服のやつじゃないの?」
「ううん。新しく買った物だよ。私、コーデを考えるのが苦手なんだよね。だから制服に近い格好にしたの。普段から同じのを何着も買うタイプだし。制服は妙に高いから似ている物にしたの」
「なるほど」
名案だと思った。
実は俺もコーデを考えるのが苦手なのだ。
というより、服はユニグロでしか買ったことがない。
マネキンの服装をそのまま採用するタイプだ。
ここにユニグロはないし、俺も制服と同じ物を買おう。
「除菌シート、使わせてもらうよ」
「いいよー! 使っちゃって使っちゃってー!」
朱里に礼を言ってからテントに入る。
除菌シートで体を綺麗に拭いてから着替えを購入した。
半袖の白いワイシャツと黒のズボンで、合計は650pt。
あとは靴下とパンツを各100ptで買う。
ベルトとジャケットは使い回す。
「志穂の言っていた通りだな」
たしかに制服だと高いが、そっくりな単品だと安い。
俺は同じ物を二着ずつ買い、その内の一着を身に纏った。
残りは次の着替えで使う予定だ。
「制服は……金にしておくか」
新しく買った服の着心地は制服と大差ない。
見た目も完全に制服だし、こうなると本物の制服は不要だ。
シャツとズボンを売ってお金にしよう。
「あれ?」
換金しようとしたところで異変が生じた。
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【名前】衣類(上下:普通)
【価格】65pt
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査定結果が『制服』ではなかったのだ。
それに価格も随分と安い。
「ジャケットがないと制服として認識されないのかな」
試しにジャケットも査定に含めてみた。
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【名前】制服(普通)
【価格】550pt
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しっかり制服として認識された。
括弧書きの『普通』はおそらく状態を表している。
ボロボロの制服だと括弧内の文字が『すごく悪い』になったから。
「やはり制服にはジャケットが必要なんだ」
ここで俺は気になった。
ジャケット単品だとどうなるのか。
常識的に考えたら485ptになって然るべきである。
制服の査定額550ptからシャツとズボンの65ptを差し引いた額だ。
だが、結果は違っていた。
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