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カントリーロード 9

 一日の授業が終わって絹代は鉄子を案内して回った。古木と西野も一緒について来てくれた。教室のある本館から、バレーボールコートの横を通り、理科室や図書館のある北校舎をまわり、体育館を通ってテニスコートから野球部グラウンドへ抜け、音楽室の前を通ってプールから柔道場、南門から花壇の横を通って校舎に戻ってきた。そこで、父の直之に会った。

「何だ、校内の案内をしてくれたのか」

「うん、ひと通り」

「遅くまでありがとうよ。どうだ、テッちゃん。あんまり大きな学校じゃないから、面白くないだろう」

「んにゃ、グラウンドが広いんでびっくらしただ。おらの村で、あんただ広い平地なんてないんだ。せいぜいこの校庭の半分くらいかな」

「全部で十三人だって?」

「ん、小中あわせて」

「中学生は何人なの」

西野の問いに鉄子は手で四と示した。

「三年が一人、二年がおら入れて二人、一年は一人」

「でもテッちゃんがいなくなって、減っちゃったね」

「ん、仕方なんねえ。おらが小学校入ったときは、同級生は四人いただ。んだども、家の都合で出て行っちまって、結局二人になっちまった。おらも出ていくことになっただども」

「淋しいわね」

「ん、でも、おら中学卒業したら郷里に帰るだ。そこで働く」

「高校行かないの?」

西野と古木が驚いたように訊いた。絹代は、自分と同じだと思いながら、黙って様子を見ていた。

「んだ。義務教育済んだら、もういいんだ。高橋先生も面倒見てやってもいいって、言ってくれたんだども、爺ちゃんだし、おらが面倒見てやれるように、義務教育終わったら帰るだ」

西野と古木の二人は感心したようではあったが、それでも不思議そうな顔をしていた。直之は、そんな二人を見ながら、微笑みながら言った。

「今日は、もう帰るのか?」

「うん。パパは?」

「まだ、採点があるんだ」

「じゃあ、先に帰るね」

「ああ。じゃあ、テッちゃん、絹代と一緒に帰ってくれ。迷子にならないように」

「うん。さいなら」

 直之は職員室の方へ歩いて行った。

「キヌちゃんの父さんは、何年生の担当だ?」

「三年生の国語」

「そっか、残念だな、父ちゃんに教えてもらえなくて」

「そんなのやだよ。学校でも家でも怒られるなんて」

「そんただもんか?」

同意を求めた西野と古木は頷いて応えた。鉄子は不思議そうな顔をして言った。

「そんなもんか?んだども、その方が得な気がしんねえか?」

三人が首を振るのを見て、鉄子は圧倒されて、ハハハと作り笑いをするだけだった。


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